いつもとは違う感触に私は戸惑わずにはいられない。
指とも、彼の大きなそれとも違うものが、私の中に入ってくる。
それは熱くて、柔らかくて、ざらざらして‥‥
くちゅ、
「ひぁっ」
そんないやらしい音を立てる。
きゅうっと身体の奥が勝手に締まると、土方さんは熱い吐息を漏らして訊ねてきた。
「ここ‥‥舐められると気持ちいいのか?」
「わ‥‥かんな‥‥」
ここ、というのを知らしめるように土方さんは濡れた入り口を舌先でつっつく。
じんっとお臍の下から疼きが広がって、私は身体を震わせた。
「あとからあとから溢れてくる。」
とろりと中から何かが溢れてくるのが分かった。
そんな所舐めるなんていつもは汚いから嫌だって言うけど‥‥今日は聞いてくれない。
「あぅ‥‥っ」
漸く解放されたかと思う間もなくしなやかな指が私の中に入ってきた。
唾液と私自身の蜜で濡れたそこは簡単に指一本を飲み込んで、更にもっとと物欲しげに震えている。
「やっ‥‥ぁあ――」
ぐちゅぐちゅと指が蜜を掻き出すように動く。
その指はすぐに増やされ、ばらばらに私の中を暴れ回った。
私の中を‥‥まるでその指で確かめるみたいに。
そうしながら、足の付け根にキスを落とす。
もう私の身体で彼が触れていない所はない‥‥というくらいあちこちにキスをされた。
「あ‥‥ぁ‥‥」
また新たに感じる場所を見つけられてしまった。
ゆるゆると足の付け根を噛まれると、泣きたくなるくらいに気持ちがいい。
きゅうと身体の奥が窄まって、感じているのだと彼に知らせる。
「もうおまえ‥‥俺なしじゃ駄目だな。」
なんて嬉しそうな顔で言うもんだから睨み付けてやる。
誰が‥‥そんな風にしたんだ。
「俺、だな。」
くつ、と喉を鳴らして笑いながら大きな掌を滑らせた。
そうしてガーターベルトの上から腰骨をゆったりと撫でる。
そこも噛まれた、弱い、ところ。
「なんか‥‥やらし‥‥」
ストッキングのゴムが僅かに食い込むそこへとキスされ、大きな掌で膝裏から足首までゆったりと撫でられた。
ブラもショーツも脱がされてるのに、ストッキングとガーターベルトだけしてるって裸でいる時よりもすごくえっちな感
じがする。
いっそ脱がしてくれればいいのに‥‥
「ああ、エロイな。」
彼は身体を起こし、ストッキングを止めているベルトを指でくいと持ち上げる。
「いやらしいけど、そそる。」
身体を起こして私を見下ろすその瞳は、隠しもせず欲情しきった色を湛えている。
いつもは涼しげな仮面の下に隠れたありのままの男の欲に、私の心は震えた。
「っつ‥‥」
同時にきゅっと中に入ったままの指を締め付け、それにまた感じて、どうしようもない。
「もう、いいよな。」
問いかけとも独り言とも取れる言葉を漏らして、ごくりと息を飲みながら彼はポケットに手を伸ばした。
見慣れたビニールに入った四角いそれが出てくる。
どこか焦ったような手つきでびぃっと封を開けて、熱く天を指したそれに装着しようとするのを、
「‥‥?」
そっと手を伸ばして、それを奪った。
初めて触る避妊具は‥‥思ったよりも伸びるらしい。
「?」
いつも、私と彼の間にある‥‥その数ミリという膜。
あるのかないのか分からない。
ほんの些細な、壁。
「‥‥これ、つけないで‥‥って言ったら怒りますか?」
私は訊ねてみた。
自分が馬鹿なことを言っているのは分かった。
案の定、土方さんは思いきり目を見開いて、
「おまえ‥‥自分が何を言ってるのか分かってるのか?」
窘められた。
「分かってます。」
分かってる。
彼が私を守るためにつけてくれてるんだって。
でも、
「私、別に好奇心とかそういうのでしたいって言ってるんじゃないんです。」
ただ知らないから知りたいとかいうんじゃなく、
もっと気持ちよくなりたいからとかそういうんじゃなく、
「私、土方さんのことを‥‥もっと、身体全部で‥‥ちゃんと感じたい。」
例えばその薄い膜の隔たりもなく、
彼を感じたい。
何からも阻まれず、彼の全部を、この身体で感じたい。
そう、本気で思った。
「‥‥」
土方さんは真剣な眼差しで私を見てる。
だから私も真剣に見つめ返した。
「子供が出来たら、産む。」
無責任な事はしない。
高校生が何が出来るか分からないけど、ちゃんと自分で責任を取るから。
「だから‥‥」
「‥‥」
「土方さんの全部を私にください。」
私に与えてくれる全てを。
ありのままの形で私に欲しい。
「‥‥」
彼は暫く考え込むように眉を寄せて視線を落とした。
きちんと‥‥考えてくれているんだと思う。
私の事も。
私の気持ちも。
全部。
考えて、
「ああくそ!」
やがてがしがしと頭を掻くと、
「腹を括ってねえのは俺の方か‥‥」
と呟き、えいっと私の持っていたそれを奪ったかと思うと、ぽいっとベッドの向こう側に放り投げた。
若干やけっぱちに言うと、どさっと私をもう一度ベッドに押し倒して言った。
「分かった。
避妊具はつけねえ。」
「‥‥」
だけどなと彼は続ける。
「もし子供が出来たら、俺が絶対に責任を取る。」
堕ろせなんて絶対に言わないし、金で解決もしない。
「責任持って、おまえも、子供も‥‥俺が面倒を見る。」
彼は怒ったような顔で、真剣にそんな事を言った。
「だから変な遠慮は絶対するなよ。
子供が出来て、俺に迷惑が掛かるからと言って姿をくらますのもナシだ。」
わかったな?と念を押され、私はその言葉が嬉しくて、はい、と頷いて笑った。

|