さて誰を紹介しようかと沖田は携帯のメモリを見ながら悩む。
  の事を言ったら誰もが食いついてきそうな顔ぶればかりだ。
  元々彼女は校内でも人気のある生徒である。
  しかし、傍に沖田がいる‥‥と言うことで誰も迂闊に近づけなかったのである。
  前に一度、にうっかり告白をしたが為に、沖田にひどい嫌がらせをされた‥‥という事もあって、に告白したい人間は
  彼を通すという暗黙のルールが出来上がっていた。
  何人からも、頼むと言われてほったらかしにしていたが‥‥

  「うーん、どれもいまいち。」

  彼女を任せられるだけの器ではない。

  容姿の面でも性格の面でも、無理だな‥‥と彼は辛辣にも斬って捨てる。

  「あとは‥‥ええと‥‥」

  カチカチとページを切り替え、名前を上から下まで見て、また、切り替えてとを繰り返す。

  そういえば、この間千鶴とと行った時に出会ったイタリアンレストランのオーナーはマシだったかもしれない。
  年齢はちょっといってはいるが、大人だし、顔もまあまあだし、財力もあるし‥‥
  彼もちょっとのことを気にしていたというのを思い出して、ちょっと聞いてみようかと、思いたった。

  カツ‥‥ン

  そんな彼の耳に、静かに音が聞こえた。

  カツンと、固い何かが床を叩く、音。

  「‥‥」

  沖田は、にやりと口元を歪めてそちらを見ると、姿を現した人物を見てこう告げた。

  「やっと‥‥来た――」

  ぱちん、と携帯の画面を閉じてポケットにねじ込み、真っ直ぐにその目を挑発するように見て、

  「ご用件は?」

  慇懃無礼に訊ねる。

  その人は迷わずに言った。

  「――頼みがある――」



  「、会って欲しい人がいるんだ。」

  沖田からそう持ちかけられたとき、どきりと胸が震えた。
  それを慌てて振り払うと、勿論とは答えた。

  自分から紹介してと言っておいて、今更尻込みするなんて最低だ。

  それに、
  もう決めたじゃないか。

  新しく前を見て‥‥歩くと――