「何事?」
 広間に入った途端、は目の前に広がる光景についそんな言葉を漏らしてしまった。
 彼女がそう口にするのも無理からぬ事である。
 広間には巡察予定のない幹部連中が集っている事が多い。暇を持て余して世間話に花を咲かせていたり、時には酒を飲んで騒いでいたり。時々深酒が過ぎてとんでもない光景が広がっていたりするが……今日は違う。彼らは素面であった。
 だが、
「なんで、みんな浴衣なんて着てるの?」
 その恰好は異様であった。
 いつもの着物姿ではなく、彼らは浴衣に身を包んでいたのだから。
「おう、。丁度良いところに」
 こちらに気付いた原田が手を挙げてこっちに来いと手招きしている。彼もいつもの赤と白の着物ではない。やはり彼らしく気崩してはいるが、渋い色合いの浴衣姿であった。
 その腰には無粋にも刀が差してあるが、それが彼女の驚く所ではない。
 何故浴衣姿に、というのが、だ。
「左之さん、これは一体?」
「なんだ。おまえ聞いてなかったのか?」
 どういう事かと訊ねると彼は苦笑を浮かべて教えてくれた。
 この近くで祭が開催されている神社の周りで、不審な人影を見たという話が寄せられたのは今朝の話だ。その警護に新選組があたっていたというのだが、見事その不審者を追い払ったご褒美として、交代で祭見物に出掛けてもよい、と近藤から達しがあったというのだ。
 それでただ祭に繰り出すのも情緒がないというので、わざわざ浴衣まで用意してくれたらしい。
「そりゃまた、近藤さんらしい」
「だろ? で、斎藤達が戻ってきたから俺たちは今から祭に繰り出すところだ」
 原田は言って、藤堂や永倉を見る。彼らも揃って浴衣姿。
 少し胸元を開きすぎじゃないだろうかと永倉の恰好を見て思うが、言うのは止めておこう。どうせ「俺の肉体美が」などと言い始めるのだろうから。
「じゃあ、左之さん達は楽しんできてくださいね」
 はそう言って踵を返そうとする。
 が、原田に何を言ってるんだと苦笑で引き留められてしまった。
「おまえも、一緒に出掛けるんだよ」
「ええ!?」
 は驚きの声を上げた。
 そんな話は聞いていないし、だいいち、これから土方の所へ行って報告しなければならない事がある。それが終わったらまた島原へと戻らなければいけないしで祭に繰り出す暇などあるわけもない。
「残念ながら、これは局長命令だ」
「で、でも」
 局長の命令は絶対である。
 それは分かってはいるけれどでも、とは躊躇うように視線を左右に泳がせれば、意地悪な顔をした原田はそれからと付け加えて笑った。
「おまえも浴衣に着替えろってのも、命令だ」
「えええ!?」

 気がつくと、遠くから祭囃子の音が聞こえた。



「ったく、今は祭見物なんてしてる場合じゃねえって言ってんだろうが」
 鬼の副長は苛立たしげに言い、とんとんと地面を踏みならす。
 その眉間には皺が寄り、とても祭を楽しむという様子ではない。実際頭の中はやらなければいけない仕事の事ばかりが回っていて、恐らく近藤の命でなければ今すぐに屯所に引き返していた事だろう。
 山南にまで、暫く帰ってくるなと言われてしまった。
 忙しい彼の事を思ってくれているのだろうが、二人とも気を回しすぎである。
 別に祭見物などに興味はないし、忙しくても構わないと言うのに。
 あれこれ考えてもどうしようもない。今戻った所でまた追い出されるのは目に見えている。
「それにしても……あいつら遅えな」
 一つ舌打ちをして、いつまで経っても来ない待ち人にこの苛立ちの八つ当たりでもするように低く呻いた。
 原田達三人も一緒に行く事になっていたというので門の前で待っているのだが、一向に彼らが出てくる様子がない。先に着替えているという話だったが、まだ姿を現さない。放って置いても構わないが、あの三人が馬鹿をやらかしても困るので仕方なく待つ事にしているのだが、
「土方さん!」
 後もう少しだけ待って、それでも出てこなければ戻ってやるか。
 そんな事を考えていると声が掛かった。
 振り返るとぞろぞろと三人が出てくるのが見える。
「てめえら、いつまで待たせるつもりだ」
 男を待つ趣味なんぞないぞと、まず八つ当たりに一つ、言葉をぶつけた。
 へらへらと三人は笑って「悪い悪い」とまるで悪びれもせずに謝るのがまた、腹立たしいというものだ。しかもどういう事か、三人とも人を見てにやにやといやらしい笑いを浮かべている。
 なんだこの恰好がそんなにおかしいというのだろうか。
 彼らと同じ浴衣姿だというのに。それとも何か、あれだけ祭に興味がないと言っていた自分が浴衣なんぞを着て気合い十分なのがおかしいのか。違うこれは近藤が用意したもので、出来れば土方だってこんなもの着るつもりなど……
「土方さん。その細い目ぇ開いてよぉく見ろよ」
「あ?」
 そう言い訳する間も与えられず、突然藤堂がそう言ってにやりと笑う。
 どういう事かと眉間に皺を寄せれば永倉、原田の大きな身体がそれぞれ左右に一歩踏み出し、二人の間にはぽっかりと大きな空間が出来る。が、その二人がどいた間に、
「――!?」
 小さな影があった。
 それはいつもならば小さいとは思えないが、この時ばかりは小さく見えた。何故なら彼女は恥ずかしそうにその身体を萎縮させていたのだから。
 思わず、
……?」
 と問うてしまったのは無理からぬ事である。
 その柔らかな飴色は他にないと分かっているのに、それでも彼女だと思えなかったのは、あまりにもいつもの出で立ちと違ったから。
 淡い紫色の浴衣に身を包み、髪を結い上げて恥ずかしそうに下を見ている彼女は……とてもあの副長助勤とは思えなかったのだ。
 ぱちくりと目を瞬かせ、言葉を失う彼の姿に、に原田達はにやーといやらしい笑みを深めていく。
 いかに鬼の副長と雖も……彼女の姿には目を奪われるらしい。
 そりゃそうだ。彼らも一瞬、言葉が出なかった。
 いつもは可愛くなんてカケラもないと思っていた藤堂も、女である事を忘れてしまった永倉も、流石に恥ずかしそうに俯いてしまうにどきりとしたものである。
「おいおい、土方さん。黙ってねえで何か言ってやってくれよ」
 彼が何も言わないものだからは顔を上げられないままじゃないか。
 何か言う言葉があるだろうと原田が苦笑混じりに促せば、漸く我に返ったらしい彼はあからさまにぎくりと肩を震わせて、それから慌てたように背を向けてしまった。
「よ、用意が出来たんなら、さっさと行くぞ!!」
「……ぁ」
 見惚れてしまった事への照れ隠しなのか、それとも三人がからかうのに腹を立てたのか。どちらか分からないがとにかく、肩を怒らせてずんずんと歩き出してしまう彼に、が小さく落胆の声を上げた。
 しまった。二人きりにしてやるべきだったと今更のように気付くけれど、既に遅い。
 振り返りもせず遠く離れてしまうその背中を永倉と藤堂が慌てて追いかけるのを見ながら、原田は落ちてしまうの視線に気付いてその小さな頭にぽんと手を触れた。
「悪かったな」
 優しい声にはふるりと頭を振る。
 慌てて落ちた視線を上げて笑いながら、
「左之さんのせいじゃ、ないです」
 そう言ったが、優しい兄貴分は心の内を見透かしたかのように痛々しげに笑うのだった。


 夜祭りは昼のそれとは雰囲気が違う。
 立ち並ぶ出店から掛かるおやじの声も、行き交う人々の声も喧しい程に賑やかではあるが、そこかしこに落ちる闇のせいなのだろうか。どことなく幻想的に見えた。
「よーし! 端から纏めて食い尽くしてやるぜぇえ!」
「新八っつぁん! 勝負だ!!」
 その雰囲気をぶち壊すように、永倉と藤堂が騒いでいる。 
 屋台を端から制覇してやると宣った彼らではあるが、恐らくその半分で銭が尽きるだろう。とりあえず騒ぎにだけはならないようにせねばなるまい。
「ちょ! 新八っつぁん! その水菓子、オレが買ったんだぞ! 勝手に食うなよ!」
「なんだよ、一口くれって言っただろ?」
「言ってねえよ!! 今言ったんじゃねえか!」
「けちけちすんなよ。器のちっせぇ奴だなー……って、てめえ俺の団子を!!」
「へっへーん。さっきのお返し、だ」
 なにを、やるのか、と二人が道のど真ん中でにらみ合いを始める。
 まだ酒も入ってないというのにこれでは先が思いやられる。
「おい、おまえら。道塞いでねえでそういうのは端っこでやれよ」
 原田も止める気があるのかないのか、そういって二人の襟首を掴んで道の端へと引きずっていく。
 二人を端に連れて行って戻ってくるのかと思いきや、彼は戻ってくる様子はなかった。
 それを土方も分かっているのか、我関せずということか、ずんずんと奥の方へと突き進んでいくようではどちらについていくべきかときょろきょろと見回す。
 そうこうしている間に土方の背中は遠ざかってしまう。は決めた。
 ぱたぱたと小走りに駆けて、不機嫌な背中を追う事に。
「……」
 振り返ってはいないが、駆けてきた足音が彼女である事は分かった。
 いつもの草履の音ではなく、からころという下駄の音だが、彼女のものであるとすぐに分かる。
 彼女が自分と共に行く事を選んでくれた事が、何というか、少しこそばゆい思いだ。いや、は自分の助役なのだから当然だしそれに多分あちらについていった所で面倒になると思ったのだろう。特別な意味などない。そう決めつけて土方はざっざっと足音を態と立てて神社の奥を目指した。
 別に目的があったわけではない。ただ、本殿にたどり着けばそこが終わりだと分かっていたからだ。
「……」
 黙々と進むその背中を、は盗み見た。
 別に後ろに目があるわけではないので見ても構わないだろうが、なんとなく、見てはいけないような気がしてこそこそと見てしまう。
 先程からずっと背中を向けられているから、最初に見たあの時だけしかまともに見られなかったけれど……彼の浴衣姿というのはとても色っぽかった。
 いつもきちんと着物を着ているせいだろう。少し着崩して、胸元を緩めているその隙が……なんとも無防備に見えた。その隙間から見えた引き締まった胸元からとてつもない色気を感じて、どうにも暴きたくなってしまう自分に驚きを隠せない。
 もう一度見たらまじまじと見てしまいそうだ。こんないやらしい事を考えているなどと悟られたくはないが、もう一度、彼の事をきちんと見たい。彼の浴衣姿をもう一度。
 そんな余所事を考えていたせいだ。
「うわっ!?」
 人にぶつかって派手に押しのけられてしまった。
 突然背後で声が上がり、どっと背中に何かがぶつかってくる。何かというのが何か分かっていても、つい背中に触れてしまった温もりやいつもと違う柔らかさに「何か」と誤魔化してしまいたくなった。
 肩越しに振り返ると、はいたたと呻きながら後ろを見ている。ぶつかった相手を恨めしそうに見ているようだ。
 人が多いせいもあるが、いつもと違って足裁きが悪いせいで上手く人を避けられない。
「わっ」
 そう思っていると今度は右からぶつかられてがよろける。よろけた所を左から。
 どん、どんと左右後ろからぶつかられては可哀想によたよたしている。そうしながらも彼に置いていかれないようにと慌てて小走りに駆けて、はつんのめって転びそうになった。
「大丈夫かい?」
 危ないと土方が駆け寄るよりも前に、手を差し出してきた男の姿がある。
 見慣れぬ男だ。
「あ、えっと、すみません」
 偶然とはいえ抱き留めるような形になり密着する二人に、いらっとしてしまう。
 が申し訳なく謝って、困ったように笑うのにすら、だ。
 浴衣姿の彼女はどこからどう見ても普通の町娘。新選組の鬼副長の助勤とは誰も思うまい。その細い手で刀を取り、躊躇いもなく人を殺すような人間には見えまい。人混みの中でまともに歩く事も出来ないか弱い女、だ。
 しかも、そんじょそこらにいないような別嬪。
 となれば祭で浮かれている男が放っておくわけもない。
「一人で回っているのかい? 良かったら一緒に見て回らないか?」
「あ、えと」
「美味しい出店を知っているんだ」
 そう言って男はの手を握っている。
 気安く触るなと眼光ではね除けようとしたが、出来るわけもない。
「ああ、もし疲れているのならばとても静かな所があるんだよ」
「い、いえ、私その」
 ほらこっちだと強引に連れて行こうとする男に、は困ったような顔をしているものの強く断らない。
 いつもならば笑顔で一蹴する癖に、一体どうしたというのだろう。
 もしや祭で彼女も浮かれているのだろうか?
 いつもとは違う女物に身を包んで、男にちやほやなんかされているから、浮かれているのか。まんざらでもないということなのか。
 くそ。と土方は苛立つあまりに吐き出した。
「おい」
 苛立ちのまま低く声を掛けて、男の肩をがしりと掴む。
「ひっ!?」
 掴まれた男は煩そうに振り返り、しかしすぐにこちらを恐ろしい形相で睨む土方の姿に怯えたような声を漏らした。
「そいつは、俺の連れだ」
 悪鬼も裸足で逃げ出すほど凶悪な面で、失せろと言われれば普通の人間は脱兎の如く逃げ出すだろう。
 ひぇと情けない声を上げたその男も例に漏れず一目散に逃げ出す男を、土方は忌々しげに見送る。そうしてへと向き直ると、
「行くぞ」
 遅れるんじゃねえと言って、男が掴んでいた手を、取る。
 細くて、滑らかな肌触り。
 つい強く掴んでしまって、慌てて緩める。
 力一杯握ってしまうにはあまりに無粋であると彼は思ったのだ。
「あ、ありがとうございます」
 思わず緩めた瞬間、掛かったのは彼女のいつもの声。
 助勤である時と同じ、凛とした声。
 でも振り返れば彼女はいつもとは違って、触れる手だっていつもの彼女と違う気がして……土方は混乱してしまう。
 彼女であって彼女ではないその姿に、どう接すれば良いのか、迷ってしまう。
 だからではないが、つい口を吐いて意地悪な言葉が出てしまった。
「ったく、何声を掛けられてその気になってやがるんだ」
 いつもならあんなの簡単に振り切っていただろうが。
 鉄壁の防御で触れさせる事もせずに撃退していただろうが。
 それなのにさっきのあのざまはなんだ。
「祭で浮かれる気持ちは分からなくもねえが、おまえは副長助勤だぞ」
 しっかりしろと言いたいのだろう。彼の言いたい事は分かる。
 分かるけれど、は思わずカチンと来てしまった。
「わ、私別に浮かれてるわけじゃ、」
 普段ならばそんな言葉でカチンとも来ないし、反論もしない。でもそう思って、行動してしまったのは恐らく図星であったからに違いなかった。
 自分では自覚はないが、浮かれていたのだと思う。
 普段と違う恰好をして、彼も普段と違う恰好で、二人で祭見物なんてしていたから。
 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ……は錯覚してしまったのだ。自分たちはただの男と女だと。副長とその助勤ではなく、ただの人間であると。
 それも、互いに意識をしている相手だ。
 錯覚くらい、するだろう。この時だけは、ただの男女でいたいと。
 そう思ったのを見透かされた気がして思わず恥ずかしいという気持ちが生まれた。それが反論となって口から飛び出したのだ。
 そしてその反論がほんのちょっとだけ、強くなってしまったのだ。
 勿論それに男がかちんと来たのも言うまでもない。
「浮かれてるんじゃなきゃ、なんだ? さっきのは」
 思わず反論に追撃する口調は、咎めるものとなってしまう。
「まんざらでもねえって顔してやがったくせに」
「してないです!」
「してた!」
「見てもいないくせに!」
 こっちの事なんて碌に見てもくれていないくせにとはつい、声を尖らせてしまう。
 じくりと胸を刺すような声音に、何故だろう。男の苛立ちは募っていく。こんな事普段ならあり得ない。
 なんでこうなった? どうしてこうなる?
 ああそうだ。全て祭が悪い。
 祭なんてものに駆り出されたのが悪いのだ。
 そう、何より彼女がいつもと違う恰好をしているのが悪いのだ。彼女が、彼女が、いつもと違って見えるから。

「だいたい、副長助勤がそんなちゃらちゃらした恰好してんじゃねえよ!」

 彼女が、酷く女らしく見えるから。
 それが、悪い。

 そう思った時には口から飛び出していた。
 思ったよりも激しい怒声に、一瞬辺りがしんとなる。
 は目を丸くしていた。
 それよりも目を丸くしていたのは土方の方だ。
 信じられなかった。そんな言葉を自分が吐き出すだなんて。
 確かに彼女は副長助勤として彼を支える役目に就いている。男と偽って。だが、誰よりも彼女が女である事を知っているのは土方だ。
 が女であるから、だから、彼は……彼女に……

 そう思い直しても既に遅い。
 驚きに見開かれた瞳が次の瞬間、きっと睨め付けるように細められる。だが、泣き出すみたいに歪んだせいで、胸の奥がぎゅうと締めつけられる思いに駆られた。
「そうですね! そうでしたね! 私は、鬼副長の助勤でしたね! こんな恰好は不似合いでしたね!」
「いや、今のは、」
「すいませんね、お見苦しい恰好をお見せしまして!」
 自分でもは止められなかった。
 何故かは分からない。頭の中がぐちゃぐちゃになって、まともな思考が働かず、気付けば思ったままを口にして、はくるりと踵を返した。
「これ以上ご不快な気持ちにさせるのもなんなんで、私、一足先に帰って着替えてきます!」
「あ、おい!」
 待てと踏み出した瞬間、くるりともう一度振り返ったが最後の最後に反撃。

「土方副長の浴衣姿はとってもお似合いです。その恰好で昔みたいに言い寄ってきた女の子を摘み食いしないでくださいね」

 かつてやんちゃをしていた自分が祭で浮かれてついつい行きずりの女と関係を持った事があるなんて、彼女が知るはずもない。
 そのはずなのに彼女はその恥ずかしい過去を知っていて、なおかつ、こんな人前で大声で暴露なんぞをしてくれて、知らずかぁっと頭の天辺まで赤くなった気がして、思わずその恥ずかしさを吐き出すように大声で怒鳴りつけていた。
「と、とっとと帰りやがれ!!」
「言われなくても!!」
 べぇと舌を出して可愛くない顔を見せた助勤は、ずかずかと最初に自分がやったように肩を怒らせて雑踏の中に紛れて消えていく。
 取り残された男は何とも言えない哀れみの視線を集める事となり、
「何見てやがる!!」
 思わず周りに当たり散らして、彼もまた反対側に歩いていくのだった。