どさ――
  「いたっ!!」
  些か乱暴に下ろされるも下に敷いてある布団のお陰で衝撃が和らいだ。
  ほっとしたのもつかの間、
  「ひぇっ!?」
  迫ってくる男の姿には悲鳴を上げて逃れようとする。
  といっても所詮後ろ手に縛り上げられていてさして自由の利かない身体だ。
  押さえつけるのも容易いというもの。

  「へえ‥‥やっぱりおまえ、いい身体してやがるな。」

  片手で肩を押さえつけ、惜しげもなく晒されている胸元をまじまじと鑑賞した。
  それはもういやらしい眼差しで、は助平爺と心の中で罵ることにした。
  じたばたと暴れたが、腕は拘束されついでに脚の間に男の身体が滑り込んでいて蹴り上げる事は愚か、閉じることも出来
  ない。
  しかも暴れれば暴れるだけ着物が乱れて男の眼下に隠れている下肢まで晒すことになる。

  「ちょ、ちょっと待って!
  落ち着いて土方さん!」
  「俺は落ち着いてるぞ。」
  むしろ慌てているのはの方だ。
  いや、彼女にしてみれば落ち着いていられるものか。
  「ひ、土方さんも子供が欲しいんですか!?」
  「‥‥ああ‥‥」
  しれっと認める彼にはひきひきと顔を引きつらせた。
  そうしている間に男の大きな手がそっと肌の上に落ちてくる。
  細い首筋をなぞりながら下へ。
  女とは違う固い皮膚に肌を遠慮無く撫でられてはぞわぞわと背筋を震わせて叫んだ。
  「な、なんで私なんですか!
  子供が欲しいなら別の所でっ‥‥」
  別の所で見繕えばいいじゃないか。
  彼なら引く手数多だろう。
  自分じゃなくてもいいはずだ。

  とこう言うと彼はその表情をくしゃりと歪ませた。

  「馬ぁ鹿‥‥
  おまえじゃねえと意味がねえだろうが。」
  「‥‥ぇ‥‥」
  紡がれた言葉には一瞬きょとんとした。
  言われている意味が分からなかった。

  自分ではないと意味がない。
  それは一体どういう‥‥

  「‥‥ひゃっ!?」
  しかしその問いを口にするよりも早く、男の指が先ほど原田にたっぷりと触れられた胸へと落ちていた。
  原田と同じように両手で包み込んで感触を楽しむように。
  「‥‥なんだこの手触り‥‥」
  驚いたような声が彼の口から漏れる。
  「すげぇ、柔らかいじゃねえか‥‥」
  知るか。
  は内心で反論した。
  柔らかろうがそうじゃなかろうがあんたらには関係ない。
  それがどうした!
  というか‥‥
  触るな、揉むなっ!

  「んっ、ぅうっ」
  原田とは違う、繊細な手にもにゅもにゅと揉まれてはじくんと下肢に熱が集まっていくのが分かった。
  なんというか‥‥力が抜けてしまうような触り方に戸惑う。
  なんだろう、この微妙な触れ方。
  優しいというか、繊細なそれに、頭がぼんやりと霞がかっていく。

  ふと、指の間で凝る乳首に気付いてふと土方は意地悪く笑いを漏らす。
  「ここも尖らせやがって‥‥」
  触って欲しいのかと指の股で挟む。
  瞬間、

  「っんぁっ――!」

  びりっと背筋を走る甘い痺れにはつい甘い声を漏らしてしまった。
  無理矢理されている事だけど、仕方ない。
  そこは‥‥感じる場所だから。

  「なんだ、ここがいいか?」
  きゅ、きゅ、と先ほどやったように男は再度摘んだ。
  びりっ、びりっ、とその度に痺れが走りはうっかり漏らしてしまいそうな声を、唇を噛みしめて堪える。

  ちがう、よくない!!

  それを伝えるみたいにぶんぶんと勢いよく頭を振ったが、

  ――ぬるりと、

  「――っ!?」

  指とは違うそれで刺激された瞬間、は絶叫してしまいそうだった。
  驚いて顔をそちらに向けると男が自分の胸元に顔を埋めていた。
  赤い舌先を尖らせて、わざと見せつけるように尖った乳首を舐めて‥‥

  「ひっ!?」

  その熱い口腔に含む。

  ざらついた舌先で舐られながらちゅうと乳でもしぼり出すかのように吸われては堪らない。

  「や‥‥やめっ‥‥」
  上擦った声ではやめろと制止の声を掛ける。
  しかしそんな声など聞こえないとばかりに、
  かり、
  「ひぁあ!?」
  歯でゆるゆると先端を噛まれた。

  途端にびりっと一際強い痺れが脳天まで駆け上がり、びくんとの華奢な身体が大きく跳ねた。

  その唇から女の声が‥‥零れた。
  甘ったるい、
  まるで強請るみたいな声。

  くそっ

  は涙目で虚空を睨み付ける。
  悔しかった。
  そんな声を上げてしまった自分が。
  感じてしまった自分が。
  悔しくて悔しくて堪らない。

  誰が感じてやるものか!
  誰が悦んでやるものか!

  私は絶対に‥‥服従などするものか!

  ぐ、とは唇をきつく噛みしめる。
  その間もちろちろと弱い胸を舐られ、喉の奥まで何かがせり上がってくる。
  それを堪えた。
  必死で唇を噛んで堪えた。

  「んっ」
  「おい‥‥」
  それに気付いたらしい土方が険しい顔を上げる。
  片手はまだ乳首を弄ったまま、そっとの頬に手を伸ばす。
  「声を出せ‥‥堪えれば堪えるほど辛くなるぞ。」
  「っ」
  いやだと、まるで拒絶を示すようにぶんっと頭を振る。
  そうして更にぎり、と唇を噛みしめれば一層唇が赤く染まる。
  柔らかな唇をそのまま噛み切ってしまいそうで、
  「っ」
  ち、と男は舌打ちをするとその唇を親指でなぞった。
  「んんっ‥‥」
  ぞくりとそれだけで肌が粟立ち、力が抜けてしまう。
  その隙に、
  「っ!?」
  男の指が唇の中に侵入した。
  「俺の指を噛んでおけ。」
  唇を噛みきってしまうくらいなら‥‥自分の指を噛めばいい。
  男はそう言った。
  驚きに目を見張っていると、
  きゅむ、
  「ふぁっ――!?」
  再び弱い乳首を弄られた。
  は喉を逸らしてくぐもった声を上げる。
  その甘い声を聞きたくなくて必死に男の指を吐き出そうとしたけれど、出来なかった。
  そればかりか、
  「ん、ふ、ぅっ‥‥」
  指先が舌さえもまるで愛撫するように蠢く。
  人差し指と中指で捕らえて、爪の先でちりちりとざらついた表面を引っ掻かれるのだ。
  それが‥‥驚くくらいに気持ちよくて、

  「ひゃ‥‥ひゃらっ‥‥!」

  はぎゅうと目を閉じたまま指を押し出そうと舌を動かした。

  熱く柔らかな舌が指を舐る。
  舐っているつもりはない、彼女は出そうとしているだけだ。
  でも、男は一心不乱に指を舌で愛撫されている気分になった。
  そんな切なげな表情で、一生懸命指を‥‥いや、指にを何かに見立てて愛撫されている気分になる。
  ぞくりと、
  腰に甘い痺れが広がった。

  そうするといてもたってもいられなくて、

  「‥‥ひぅっ!」

  彼女の濡れた下肢に手を伸ばしていた。
  そこは予想通りしどけなく濡れている。

  は目を見張り、

  「らめっ‥‥ら、めっ‥‥」

  そこだけは勘弁してとばかりに頭を振る。

  「そういわけにもいかねえだろ。」

  土方は自嘲じみた笑みを浮かべた。
  そうして、
  ぐじゅ、

  「ひぃ――」

  己の指を一本、穿つ。
  内部は思ったよりも熱く、柔らかかった。
  まるで熱で蕩けてしまったかのように。

  「こいつは、堪んねぇな‥‥」

  乳房だけではなく、彼女の膣内も吸い付いて離れない。
  まるで異物を貪欲に貪るかのように‥‥肉壁は指に食らい付いた。

  指だけでもこれほどに気持ちがいいというのだ。
  一物を埋めたらどれほどの快楽を得ることが出来るだろう。

  「や‥‥やらぁっ‥‥」

  ずる、と指が奥へと侵入してくる。
  まるで虫の這うような早さで進むそれにの身体の奥から疼きが広がっていった。
  掻きむしりたいほどの‥‥ひどい疼きが。

  足りたないのだ。
  もっと。
  もっと。

  「んんっ」

  鮮やかな赤が戦慄いた。
  瞬間、くちゅりと濡れた音を立てて指を一度強く締め上げ‥‥
  ひくひくと物欲しげに震え出す。

  それを見た男は薄らと笑みを深くした。

  どくどくと血がそこへと集中していくのが分かる。
  袴の下で一物が天を差し、固くなっていくのが。

  「そんなに煽ってくれるなよ。」

  「ひ‥‥ぅっ!?」

  ぐじゅぐじゅっと濡れた音が激しくなった。
  指が増やされたのだ。
  男は人差し指を中指とを埋めると激しく出し入れを繰り返した。
  まるでその中を広げるみたいにぐじゅぐじゅと。

  「や‥‥ぁああっ‥‥」

  は一際高く啼いてぶんぶんっと激しく頭を振る。
  その瞬間、口の中から手が零れ、唇が解放された。
  だがもう口を噤む気力はなかった。

  指が膣内を行き来するたびに堪えようのない快感が走り抜ける。
  指の腹が、爪の先が、あちこちを擦るたびに、
  耐え難い快感がを襲った。

  だけどその中で一層、

  ぐり、

  と指先が当たったとある部分が、

  「っ!?」

  感じた。
  自分でもそこが弱いのだとすぐ分かるくらい、感じた。
  声は音にならなかった。
  弾けたそれに、土方は気付いた。

  「ここ‥‥いいのか?」
  ちょいちょいと指先が探るようにが反応した部分を引っ掻く。
  ちりと固い爪の先がまた触れた。
  いや――
  は本能的な恐れを感じて身体を捩らせた。

  「だ、だめ‥‥そこ、さわんな‥‥でっ!」
  急速に身体の中で何かが膨らんでいくのが分かった。
  それはまだ味わったことのない何かで‥‥人間というものは未知のものにひどく恐れを感じるものだ。
  そしてそれはも同じ事。
  襲いかかる知らない何かに恐怖し、嫌だと何度も首を振る。
  「ここ、本当に駄目か?」
  はっきりと見つけた弱い部分を土方は両の指で交互に攻める。
  休む間も与えずに責め立てられ、

  ひくんっとは身体を震わせてわなわなと唇を戦慄かせた。

  「あぁ‥‥駄目‥‥だめ‥‥っそんな、強くしたらぁっ‥‥」
  「達きそうか?」

  がくがくとの身体が震えていた。
  絶頂が近いのが分かった。
  は分からないと目を瞑って頭を振る。

  苦しくて、
  怖くて、
  何がなんだか分からなくなる。

  「いいぜ‥‥」
  と土方は優しく許した。
  「達け――」
  告げて、ぎりとその場に爪を強く立てた瞬間、

  「あ―――っ!!」

  びくんっと面白いくらいに身体が跳ね、の両の眼が見開かれた。
  ぎゅうと身体に異様なくらい力が込められた。

  次にやってくるのは落下するような感覚に‥‥言葉に表せない快楽。

  「ぁ‥‥あ‥‥ぁ‥‥」

  震えた声をだらしなく開いた唇から零しながらは打ち震えた。
  迎えた絶頂にその表情が恍惚としたそれへと変わる。
  ひくひくとしばし身体を震わせ、やがて力を失いぱたりと布団の上に四肢を投げ出す。
  とろりと内から溢れた蜜が伝い落ちる感触に僅かにぶるりと震えた。

  気持ち‥‥い‥‥

  双眸を細めてうっとりとした表情では荒い呼吸を繰り返す。
  今はただ、この余韻に浸っていたかった。

  だというのに、

  ごそごそと聞こえる物音に現実に引き戻された。
  引き戻されただけではなく、

  「ぎゃっ!?」

  今までの全部が吹っ飛ぶほどの物を見せつけられて、悲鳴が上がった。

  男が袴を脱いで一物を晒していたのだ。
  天を仰いで反り返る‥‥なんとも異様な局部とやらを。

  「‥‥」
  はーと荒い呼吸を繰り返しながらどこか虚ろな瞳で見つめられる。
  は慌てた。
  「や、やだっ!それはやだっ!!」
  そんなもの入れてくれるなとじたばたと暴れるけれど容易く足首を掴まれ、押し広げられ、秘所が男に丸見えになるよう
  なあられもない格好をさせられてしまう。
  「いやだぁあっ!絶対嫌っ!」
  「何言ってやがる。
  てめぇ一人だけ気持ちよくなってそれで終いだと思うなよ。」
  こっちだって早く気持ちよくなりてえんだよと言われては声を上げた。
  「そ、そんなのそっちが勝手にしたんじゃん!!」
  「うるせぇ、黙ってよがってろ。」
  「どっちなんです‥‥ひっ!?」
  ぬちゅと濡れたそこに固い何かが押し当てられた。
  それが男の亀頭なのだと分かった瞬間、は肩を震わせぎゅっと眼を瞑る。

  「そうだ‥‥そうやって大人しく‥‥」

  大人しく抱かれていればいい。
  男はそんな言葉の続きを何故か飲み込んでしまった。
  ついでに言うと、飲み込まれるはずだった雄も、そのまま、押し当てられたままぴたりと止まっていた。