「今日はおまえの全部を見る」
土方さんはそう宣言して、私を抱いた。
嫌だという私の言葉を無視して着物をはぎ取って、丸裸にして、明るい場所で私の身体を暴いた。
こんな明るい内からこんな事をするのはなんだか悪い事のようで……ひどく罪悪感に苛まれる。
恥ずかしくて堪らないのにそれ以上にこんな気持ちになるなんてどうしたらいいの?
「素直に、俺に感じてれば良い」
そんなの簡単だと笑う彼に、それこそが難しいと私は泣いて訴えるのだ。
「そ、それはやだぁ」
「いやだ、じゃねえ。また前みたいに痛えって泣きたいのか?」
「それも嫌だけど、こっちはもっとやだ」
「どっちも嫌だは通らねえんだよ」
聞き分けろと言い切って、強引に顔を近付ける土方さんに私は慌てて身を捩る。
「やだやだやだぁ!」
さっきから嫌だ、ばかりだけど私が悪いんじゃない。
私はこれでも譲歩してる、はずだ。
明るくて恥ずかしいのだって、裸にされて恥ずかしいのだって、我慢してる。それなのに、
「は……ぁあっ!」
ふ、と笑う声が私の敏感な部分を掠める。瞬間、じんっと甘い痺れが駆け上がり、私の背中は不自然に反った。
身体には力が入り、抜けると同時にとろりと身体の奥から溢れる感覚に、私は羞恥を隠せない。
「おまえの毛、柔らかいな」
「そう言う事、言うなぁ」
追い打ちをかけるみたいに土方さんはそんな感想を口にした。
髪の毛が柔らかいと言われるなら私だって悪い気はしないけど、彼が褒めているのはその……下の、あれだ。
柔らかいって言われても嬉しくない! っていうか、もう感想はいらないから!!
「ここも、綺麗な色してる」
「だ、だから言わないでってばぁ」
「褒めてんだろ。ああ、こっちも、小さくて可愛いじゃねえか」
こことこっちが何を指してるのか分からないし知りたくない。
それ以前に土方さんにそんなところを凝視されているなんて認めたくない。
いくら夫婦だっていっても、そんな、
「ひっ」
ぬるりと熱く濡れた感触が敏感な核を撫でた。
その瞬間、堪えようのない疼きと快感に私の口から怯えたような悲鳴が上がった。
しかもそれは一度じゃなく二度、三度と往復して、最後にはじゅと音を立てて吸われて、強すぎる刺激に腰が思い切り跳ねる。
「ん、うまい」
うまいって、私は食べ物じゃありません! っていうか、そんなの絶対美味しいはずなんかないのに。それなのに土方さんは私のそこを飴でも転がすみたいに口に含んでころころと舌の上で転がした。
その度にじんっと強い痺れに腰が跳ね、私の口からは悲鳴みたいな声が漏れる。
「あっ、ひじ、や…そこ、しびれっ」
「腰の奥が痺れちまうか? そりゃ好い証拠だ」
「ち、ちがっ……ふぁ、あっ」
「違わねえだろ。ここ、こんなに濡らしてんだからよ」
ここ、と土方さんは私の膣口を撫でて蜜を掬うと、そのままぬめりを利用して指を押し込んできた。
違和感に身体が一瞬だけ竦む。
「ああ、やっぱりとろとろだ」
ぐっと根本まで押し込んで、中の具合を確かめるみたいに指がぐるりと周囲を撫でる。
撫でながら時折、核を舌先で突かれて私は大声を上げて泣き出したい衝動に駆られた。どうしてかは分からない。ただ、身体の内側からじわじわと溢れ出す何かをどうにかして吐き出したくて、でもそれをどうやって吐き出せばいいのか分からなくて、溢れる声と涙とで少しずつ流していくしかなくて。
「これなら、今日は大丈夫そうだな」
土方さんは一人ごちると指をずるりと引き抜いて、身体を起こした。
中途半端な状態で放り出されて、身体が疼く。さっきまでは嫌だやめてって言ってたくせにもっとして欲しくて、堪らない。
「やだ、もっと」
ついぽろりと零した言葉に自分でもぎょっとする。
なんてはしたない事を口にしてしまったのだろうかとすぐに恥ずかしくて視線を逸らせば、笑い声と共に大きな手に腿をゆったりと撫でられて背筋がぞわりと震えた。恥ずかしさなんて吹っ飛んでしまうくらいに、その手は私を高ぶらせてくれた。
「ぁ、土方さんっ」
もっともっと触ってと言う変わりに名前を呼ぶ。
なのに土方さんは疼いて仕方ないそこから手をどんどんと離していって、私を焦らそうというのだろうか足首を一度くるりと撫でてそれから、
「ひゃっ!?」
ぐいと強い力で足首を捕まれ開かれて驚いた声が上がる。
「や、やだっ」
ついであられもない恰好をさせられているという事実に気付けば、また私の口から「嫌」の言葉が飛び出した。
足首を捕まれ、広げられ、恥ずかしい恰好をした私を彼はじっと見て、小さく笑って、
「挿入れるぞ」
甘く掠れた声で宣告して、怒張したものを私の入口へと押し当てた。
「んっ」
ぬじゅと形容しがたい音を立てて先が飲み込まれていく。
今日は痛く、なかった。
きっと土方さんに散々良いようにされたせい。
それが彼も分かるからなんだろう。口元に意地悪く笑みなんか浮かべて私を見下ろして、
「な? ちゃんと解して正解だったろ」
「も、ばかぁっ」
「おうおう、旦那を馬鹿呼ばわりとは……そういう悪い妻には、こうだ」
「ひゃぁ!?」
言いながらぐっと腰を突き入れられ、強引に中をこじ開けられる。
肉を一気に掻き分け最奥まで到達すると、こりと私の奥に彼の先が当たる感触があった。その熱さといったら尋常ではなくて、思わず身体をびくりと震わせると、土方さんは私を見てにやりと艶っぽく口元に笑みを浮かべ、
「んっ、あ、あ」
とんとん、と私の奥を切っ先で突っついてきた。
まるで西洋の『ノック』でもするみたい。私の身体の奥を叩いて、もっと中へと潜り込もうというのだろうか。
「や、ぁ…おく、だめっ、それ、や」
「なんだよ。まだ、入るだろ? 入れろよ、こん中に」
「や、やだ、擦るの…だめっ…だめぇ」
「おまえの奥にも、俺の印つけておかねえと、な」
にじみ出たものをなすりつけて、という事なのか。
恥ずかしい言葉に貌がぐしゃりと歪むと、彼の様子は一層恍惚としたものへと変わっていった。私を辱めるのが彼はきっと好きなんだ。なんてひどい人。
「そりゃ、好きな女は苛めたいだろ」
「あく、しゅみ……あ、はぁ」
ぐちゅぐちゅと奥を犯す動きが徐々に大きく、大胆になっていく。
入口まで大きく引いたかと思ったらまた奥まで勢いよく押し込まれて、その動きも単調ではなく時には角度を変えて、時に動きを突くのではなく捏ねるように回して、そうしながら彼は私を高みへと追いつめた。
好き勝手に蹂躙しながら徐々に彼も限界へと近付いていくのか、その表情は恍惚としたものから余裕のないものへと変わっていく。
苦しげに眉が寄せられ、双眸が細められ、唇からは忙しないせっぱ詰まった声が零れた。
ああ、私も彼と同じで十分悪趣味。
そんな顔を見て、もっともっと追いつめたいと思いたくなる。
私の身体に溺れて、何もかも分からないくらいになって、私だけを求めればいいのにって。
「んっ」
知らずきゅうと膣を締めつければ、土方さんの表情が一瞬ぎくりと慌てたようなものになって次には苦しげに息を飲んだ。
埋まったものがびくんっと大きく震えたのは多分、私の刺激が予想外で達しそうになったのだろう。それを堪えた彼の表情は、どことなく泣きそうなものに見えた。
「かわいい」
ついそんな言葉を漏らすと彼の眉根が更に寄る。
可愛いと言われるのは男の矜持を傷つけるらしい。褒め言葉なのに。
「言ったな」
「あ、や…ぁ――」
太股に手を掛けて私を折り畳むように足を胸に押しつけ、さっきよりも激しい抽送で軽率な発言を咎められた。
突き破らんばかりの激しさに目の前が白く弾けた。
「ひじ…っ、だめ、はげし…ぁ、あっ」
そんなに激しくされたら、駄目、我慢できない。
「なんだよ、だらしねえな」
はっと私を笑いながら、でも彼の表情にだって余裕はない。
突き上げる動きだって徐々に焦るような早いものになっていって、私の中に潜り込んだ彼自身だってめいっぱい大きくなっている。もう、限界なのはそっちだって同じ癖に。
「仕方、ねえな。じゃあ、まず一回、いっとくか」
土方さんが意地悪く言った台詞の意味を、私はあまり理解していなかった。
ただこのもどかしさから解放される。そう思えばこくこくと頷いていて、彼が与えてくれる全てに、貪欲にしがみつく。
どくんどくんと身体の底から激しく脈打つそれは、まるでそこから何かが生まれて、飛び出してくるみたい。
殻を破って、外へと。
それを助けるのか、それとも阻むのか。土方さんがどくどくと脈打つ私の中を強く、深く、突く。
「そろそろ、か?」
上擦った声で彼が言う。
その壮絶な色っぽい声が、私の鼓膜を震わせ、脳髄までをも溶かす。
駄目、そんな外からも私を溶かさないで。壊さないで。
もうほんとに、我慢が――
「俺も、もうっ――」
ひきつった声と、ぐんとひときわ強く押し上げられる感覚。
じりっと焼け付いたのは身体の奥か、それとも私の思考か。
弾ける感触に息が止まり、そのせいなのか真っ白に染まる私の視界と思考。
何もかもが曖昧になり、私はどうしているのか、どこにいるのかも分からなくなる。
その一拍後、
どんっと身体の奥を何かが叩くような感触と、広がる熱。
じわじわと満たしていくのと同時に私の意識も視界も徐々に戻っていき、目を一度瞬かせると目の前には愛しい人の姿がある。
目を閉じ、彼は荒い呼吸を洩らしていた。
とても色っぽくて、綺麗で、私はただぼうっと彼を見つめていた。
やがて彼も落ち着いたのか、ずるりと穿っていた自身を抜き去り一つ大きく息を吐くと、閉ざしていた瞳を開き、私を見て困ったような顔で笑う。笑って、私の眦に一つ、口づけた。
「今日は、痛くなかったよな?」
「……意地悪」
意地の悪い問い掛けについ、と唇と尖らせる。
土方さんは小さく声を上げて笑い、悪いと謝る代わりに尖らせた唇に己のそれを重ねる。
一度、二度、と啄むようにして、やがて深く、重なった。
「んっ……ふ、」
舌先で擽りあって、戯れるように。
なんだか甘えられている気分になって、もっと甘えてほしくて私はその背を抱く。
土方さんも私の背に手を回し、それから、それか、ら、
「え、あ、だめだめだめ!!」
太股を捕らえられ、ぐいと開かされて私は慌てて唇を離した。
彼が何をする気か、なんて聞かなくても分かる。
「もう駄目! きょ、今日は一回だけ!」
二度もなんて駄目だ。前みたいにまた滅茶苦茶になって、翌日大変な事になってしまう。
翌朝大変だったんだから。
腰は痛いわ、怠いわ、声は出ないわで、散々。
だから今日は一度だけ、って言うのに彼は不満げな顔で言った。
「おいおい、何日もお預け食ってたんだぞ。一度なんかで満足できるわけねえだろうが」
「な、何日もって……そ、そんなの普通です! こういうのは毎日やる事じゃ、」
「何言ってんだ。毎日やるに決まってんだろ。俺たちは夫婦だろ。それに新婚だ」
なんて彼があまりに自信たっぷりに言うもんだから、私は二の句が告げられずぱくぱくと口を開閉させた。
まるで自分の言い分こそが世の決まりみたいな言い方だけど、そんなのおかしい。
夫婦だろうと、新婚だろうと、こんな事毎日なんてそんなの……
「だ、だから、駄目!!」
「っ!」
何も言えない事を了承と取ったのか、彼は腰を推し進めてこようとするので、顔をべちんと叩いてやった。
叩くつもりはなかったんだけど、気付いたらこう、彼の顔に見事に当たっていたんだ。
多分日の本広しと言えど、彼の顔を殴る女は私くらいだろう。
勿論彼も私に殴られるとは思っていなかったらしく、叩かれてちょっと怯んだ。その隙に、と彼の下から這いだし、私は外へ。
「ひゃっ!?」
襖を開けて、立ち上がろうとした瞬間、背中からどさりと押しつぶすみたいにのしかかられて私は無様に畳の上に倒れ込む。
「亭主を殴った罰だ」
彼は私の耳元で楽しげに言った。
これは罰なのだから甘んじて受け入れろって。
そんなの、出来るわけ。
「ん…ぁあっ」
出来るわけないけれど、敏感になったそこに先がねじ込まれるともうどうにも出来ない。
たったそれだけで身体のあちこちに火が飛び散ったみたいに熱くなって、身体の奥が酷く疼いてしまう身体は……もうすっかり彼をほしがっていた。
だって、彼に抱かれるのは嫌じゃないんだから。
愛おしい人に抱かれる事が嫌な人間など、いないんだから。
こんなに、欲しい欲しいと言ってくれている人を、拒めるわけが。
でもね、
毎日は……無理。
保たない。
「安心しろ」
そう訴える私の項に、熱い息を吐きかけながら彼は言う。
「毎日、おまえを抱いたりはしねえよ」
ほっと息を吐いた瞬間、ぬるりと奥までねじ込まれ、私の喉が震えた。
その震えた喉を、彼は愛おしげに撫でながら、
「ただその分、一度にその想いを込めるだけだ」
まるで安心できない言葉を吐くのだった。

君を想ふ気持ち
土方さんがただのエロ親父となりました(苦笑)
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