「ん、ぁ‥‥ぁあ‥‥」

  ぷちゅという濡れた卑猥な音が、その人が腰を動かす度に聞こえる。
  私はその度に恥ずかしさと、駆け上がる快楽に耐えなければいけなかった。
  バスタブの縁に捕まり、縋りながら、腰だけを上げた状態で、ゆっくりと抽送を繰り返される。
  さっきよりもリアルに中に入っている彼の大きさを感じるのは、後ろからの挿入で視覚があてにならないからなんだろうな。

  「んん〜〜っ」

  奥をぐじゅっと突かれた瞬間、きゅうっと締め付けてしまって、更に、その大きさを鮮明に感じた。

  「唇‥‥」
  きつく唇を噛みしめていると、項を吐息が滑った。
  ぞくぞくっと途端に背中を震えが走り、私は喉を反らす。
  また、締め上げてしまった。

  「っ唇‥‥噛みしめるな。
  傷を付けるぞ。」

  土方さんは低く呻きながら、背後から伸ばした手で私の唇をなぞる。
  お湯で濡れたそれが優しく触れただけで感じてしまって‥‥私は逃げるみたいに顔を背けた。

  「だめ‥‥」
  「‥‥。」
  「声‥‥出る‥‥」

  バスルームは音が反響して良く聞こえる。
  ただでさえ繋がって、揺すられるたびに聞こえるお湯の音と、私の胎内から響く水の音で恥ずかしく堪らないのに‥‥
  自分の感じきってる声なんか聞きたくない。

  「‥‥恥ずかしいのか?」
  「あたりま、え‥‥ひゃぅっ!」

  ぱんっと肌がぶつかるような音を立て、最奥をぐりぐりと擦られる。
  唇を噛みしめて喘ぎを殺そうとしたのに‥‥あまりに気持ちよすぎて‥‥唇が震えて、閉じてくれない。

  「や、だめ‥‥奥、やぁ‥‥」
  「やっと声、聞けた。」

  ひどく嬉しそうな声が私の耳を擽る。
  そうして出来た子供を誉めるみたいに、良い子だと囁くと、奥が嫌だって言ってるのに、彼はずんずんっと奥を突いてきた。

  「ぁあんっ、だめ、だ、めっ‥‥」

  室内で反響する自分の声は、すごく、えっちだった。
  それに土方さんは煽られたのか、むくっと限界だと思っていたそれが大きくなるのが分かる。

  「っ‥‥」
  「ひ、ぁああんっ!」

  ぶちゅぶちゅというやらしい音を立てながら、土方さんは腰を小刻みに揺らす。
  やがて少しだけ腰を引いたかと思うと、

  「ひンっ!」

  突き破るみたいな強さで、勢いよく奥を叩かれた。

  「棹だけじゃなくて、袋もおまえのナカに入れさせろよ‥‥」

  舌で項に浮かんだ汗を舐め取りながら土方さんはとんでもなく卑猥な発言を口にする。
  そうして、ぐりぐりともういっぱいになってるそこに彼はそれを押しつけてきた。

  「そ、んな、無理ぃっ」
  「全部、おまえの中に入れて‥‥俺の全部でおまえを気持ちよくしてやれればいいのに。」
  「も、じゅう‥‥ぶ‥‥」
  「駄目だ、俺が足りねえっ‥‥」
  「ひ、アっ――」

  ざぶっとお湯が大きく揺れて、バスタブから溢れる。
  跳ね返ってくるお湯よりも更に大きな快楽の波が私を押し流した。

  「悪い‥‥な。
  俺ぁ、欲張りに‥‥なったみてえだ。」
  くっと自嘲じみた笑みが聞こえる。
  笑いながら耳朶を噛んで、孔にするりと舌を差し込む。
  ぐじゅっと濡れた音が鼓膜に響き、音が少しだけ遠くなる。
  「おまえを、何度‥‥何度求めても足りなくなってる。」
  「ぁ、や、も、や‥っ‥‥」
  「足りなくて‥‥もっと欲しくて‥‥」
  「い、ぁああっ!!」
  「‥‥おまえが‥‥欲しくて‥‥」

  そっと伸びた手が私の顎を掴む。
  無理矢理後ろを向かされて、ぼんやりと歪む視界に彼の端正な顔が迫って、
  「んっ‥‥んーっ」
  後ろから激しく抽送を繰り返されながらキスをされる。
  余裕なんて欠片もない、奪い合うみたいなキス。

  「‥‥」

  間近で見つめる紫紺が切なげな色を湛えて私を見つめている。
  きっと私も同じ、ううん、それ以上に切ない目で彼を見つめているに決まってる。
  だって、私も彼と同じで、
  与えられれば与えられるほど貪欲になっていくのが分かるから。
  もっとたくさん与えて欲しくて、
  もっとたくさん与えてあげたくて‥‥
  どうすればいいのか、分からない。

  「う、あッン‥‥」

  ずくんっと突然奥を強く抉られて、強い快感が身体を駆け巡る。
  本能的な恐れから身体が逃れるように上へとせり上がろうとすると、それを逞しい腕が抱き留めて、抵抗する力を奪うよ
  うに律動を激しくさせた。

  「‥‥っ‥‥」

  せわしない息づかいと、呼び声。
  彼の真っ直ぐで、必死な思いがその声に秘められていて、私はごくっと息を飲んだ。

  ひじかたさん。

  音にならない声に、彼はなんだと応えてくれた。
  縋る物を求めながら、手を彷徨わせ、やがて後ろから伸びた手がそっと私のそれを取ってくれた。

  「す、きっ‥‥」

  ひくっと喉を震わせ、涙を零しながら必死に告げる。

  「だい、すきっ‥‥」

  好きなの、
  大好きなの、
  誰よりも大切なの‥‥

  「ああ、俺も。」

  泣きそうな声が耳元で聞こえた。

  そして、

  「おまえを――」

  ひくっと震えた声が耳朶を打ち、

  「っ―――!」

  私は声さえ上げられずに再び、上り詰めて、

  おまえを、
  誰よりも愛している――

  優しい囁きを最後に、私の意識は闇の向こうへと落ちていった。