どくん、
どくん、
と内部でそれが震えているのが分かった。
震えるたびに、熱い何かが私の身体の中を満たしていくのも。
「はー‥‥はぁ‥‥」
自分の呼吸がものすごく激しかった。
全力疾走して、どこかから飛び降りたみたいな‥‥そんな感じだった。
目の前がまだ、ちかちかする。
指先に全く力が入らなかった。
痺れてる、みたい。
「‥‥」
うっとりとどこか酔いしれたような声で私を呼び、彼は目元に口づける。
目元に頬に、鼻の頭、それから、
「ん」
唇。
何度も何度も、彼はキスを繰り返す。
涙がボロボロと零れた。
辛くないのに‥‥なんでか、泣けた。
「‥‥大丈夫か?」
その零れる涙を拭いながら、彼は優しく問いかけてくれる。
私はこくっと頷いた。
泣いてるのは痛いとか、苦しいとかそういうのじゃない。
きっと、
幸せだから。
「ひじかたさん‥‥は?」
問い返すと彼は目を丸くして、すぐにふっと噴き出した。
「俺は‥‥」
と紫紺を悪戯っぽく細めて、囁くように告げる。
「最高に良かった。」
「っもう!」
そう言うのを聞いてるんじゃない、と私は彼の肩をぺちんと叩く。
土方さんは悪いとくつくつと肩を震わせながら悪びれなく謝って、また、キスをくれた。
優しい、思わずうっとりする、キス。
「‥‥少し寝てろ。」
キスの余韻に浸っていると、土方さんはそう言って身体を離した。
にゅると、内部から抜けていくような感覚が、いつもよりリアルなのは‥‥多分彼との隔たりがないから。
「あぅ‥‥」
大きく張り出た所が遠慮なく内部を擦るもんだから、思わず溜息にも似た声が漏れてしまい、彼は意地悪く笑う。
仕方ないじゃん。
やっぱり‥‥感じるんだから。
「どこ‥‥行くんですか?」
そのまま下着とズボンとを穿いてベッドから離れる彼に問いかけた。
思ったよりも心細そうな声が出て、彼はまるで子供にでも言い聞かせるみたいに優しく言ってくれる。
「すぐ戻る。」
彼は言うと、バスルームの方に消えていった。
姿が見えなくなって、なんだか不安になる‥‥のに身体は動きそうになかった。
「ひじかた‥‥さん‥‥」
もう一度名前を呼んで、どうにかこうにか状態を起こす。
と、
「っ!?」
下半身に力を入れた瞬間、どろ‥‥と何かが溢れた感触がして私は動けなくなる。
「う、わ‥‥わ‥‥」
とろ、と溢れたそれは土方さんが出した‥‥それ。
白く濁ったそれは私の太股を伝い‥‥そのままシーツに‥‥
その光景がとんでもなく卑猥で‥‥私は慌てて隠すようにシーツをかき集める。
「動くな。」
そんな私の手を遮って、いつの間にか戻ってきた土方さんが暖かい何かを太股に押し当てた。
濡らしたタオルだった。
「‥‥拭いてやるから、じっとしてろ。」
苦笑を零した土方さんは、そのままタオルでふき取るように手を滑らせる。
これは、すっごい恥ずかしい。
だって、後始末してくれてるんでしょ、これ。
「い、いい。
自分で‥‥」
自分で拭く、って手を伸ばしたらまたその瞬間に力が入って、
「うあっ‥‥」
どろっと中からまた、精液があふれ出た。
なんともいえない異様な感触に身体が震える。
ゴムなしでしたことなかったから分からなかったけど‥‥直接すると、こんな事になるんだ。
いやまぁ、そうだよね。
だって、中で、出した、わけだし‥‥
「‥‥埒があかないな‥‥」
とろっとあふれ出る半透明のそれは、拭っても拭っても後から後から溢れてくる。
土方さんが苦笑だったのは‥‥その原因が自分にあるからなんだと思った。
でも、一方で私はそんな所を見られていてすごく恥ずかしい。
もういいから。
私は土方さんを押しのけ、それならいっそシャワーを浴びようと思ったんだけど、それよりも前に、
「うわっ!?」
ひょいと軽々と抱え上げられて、
「シャワーで流した方が早い。」
スタスタとバスルームへと連行された。
連れていってくれるのは嬉しいんだけど‥‥気のせいかな、土方さんの目はすごく楽しそうに輝いている気がする。
スウィートのバスルームはやっぱりスウィートだった。
「ひろ‥‥」
私は思わず感嘆の声が漏れてしまう。
まずバスタブがすごく大きい。
コレ何人入れますか?ってくらいの大きさだった。
お湯はまだ半分くらいしか溜まってない。
土方さんは私をそっと下ろすとシャワーのコックを捻る。
すぐに暖かいお湯が出た。
「あ、自分で洗います。」
身体まで洗ってくれかねない彼に断りを入れて、シャワーヘッドを引き寄せる。
彼は少し残念そうな顔をしていたけど、ひょいと肩を竦め、じゃあ、と言って一度外へと出てしまった。
土方さんも早くシャワーを浴びたいだろうから、私は手早く身体を洗うことにした。
備え付けのボディソープはスウィートらしい豪華な薔薇の香りがするもので‥‥
滑らかな感触とにおいにうっとりしながら、私は汗を洗い流した。
「?」
大きくて優雅なお風呂に浸かっていると土方さんが戻ってきた。
「なんだもう洗い終えたのか。」
これまた残念と言った顔で彼は言う。
俺が洗ってやるという言葉を丁重にお断りして正解だった。
まったく、何をしようとしてたんだろ、このエロオヤジ。
「残念でした。」
もうばっちり身体は洗い終えた後ですと意地悪く言ってやる。
彼はひょいと肩を竦めただけで何も言わず、そのまま近付いてくるとぽいっと何かを放り投げてきた。
「なに?」
放られたのはケースに入った花びら。
なにこれ。
「薔薇風呂ってのもいいもんだろ?」
湯船に浮かべて楽しむものらしい。
なるほど‥‥
私は言われるままにぱかっとケースを開けた。
途端に強い薔薇の香りと‥‥花びらが湯船の上に振ってきた。
濃い赤や、ピンクが風呂の表面を飾った。
「‥‥少し足りないが‥‥仕方ねえな。」
一面の薔薇風呂というわけにはいかない。
それでも十分雰囲気はあるもんだ。
「それじゃ俺も‥‥」
花びらを指先で弾いて遊んでいると、突然土方さんはそう言って、
「わ、ちょ!?」
ズボンを脱いだ。
手早く下着も脱いで裸になる。
私は慌てて背中を向けた。
「なんで裸になるんですか!」
別に今更恥ずかしがるような事じゃないんだけど‥‥ほら、やっぱり恥じらいはあるんだって。
してる最中ならいざしらず、こんな時だし。
「そりゃ、俺も入るからに決まってるだろ?」
そんな私に土方さんは当然とばかりにそんな事を言った。
はい?
俺も入る?
入るってどこに?
ざぁっとシャワーがタイルを叩く音が聞こえる。
振り返れば彼は頭からお湯を被って‥‥髪に残ったムースを洗い流し、身体に残った汗を洗い流して‥‥
キュとコックを捻る。
前に流れ落ちる髪を後ろに撫でつけて、彼はバスタブに近付いてきた。
均整の取れた引き締まった体躯は、お湯で濡れて赤く染まって‥‥なんていうか、すごく、色っぽくて、目のやり場に困る。
て、私めっちゃ凝視してるんだけど‥‥
「て、ちょっとまさか‥‥」
スタスタと近付いてくる彼に私はぎょっとしてバスタブの縁に張り付いた。
そんな私を見て、彼はにやりと楽しそうに笑う。
「一緒にバスタイム、だ。」
なんだか非常に不安。

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