キングサイズのベッドの上にそうと、まるで壊れ物でも扱うかのように優しく下ろされる。
  私の胸は初めて抱かれた時のように、どきどきと高鳴っていた。
  怖いはずなんてないのに‥‥どうしてだろう‥‥すごく心細くて‥‥
  「んな顔すんな。
  酷いことはしねえから。」
  私が不安げな顔で見上げていたからだと思う。
  土方さんは安心させるように言って、額に一つキスをくれる。
  そうして私の緊張を解かせると、タイの結び目に指を引っかけてぐいと緩めた。
  私は、その瞬間が好きだった。

  彼はいつもネクタイを緩めているけれど、それを締めている限り彼は大人で‥‥教師。
  そこから一線を超えることはない。
  まるで自分を戒めているかのようだと以前思った事がある。

  そうして私を抱くときは、ネクタイを外した。
  教え子に手には手を出さないと言う、彼の規律を破るかのように。
  だから‥‥それを解く瞬間は、彼が男になる瞬間なのかもしれない。
  ただの一人の男として私と向き合う瞬間なのかも。

  その時の‥‥乱暴に解く姿はいつも涼しい顔をしている彼からは想像できないくらい野蛮な男らしさを感じて‥‥同時に
  身の毛がよだつほどの色気を感じた。

  仕草一つでそんな風になるなんて‥‥思わない。

  「っ」

  きゅう、と胸を鷲掴みにされた気がして、私は切なくなる。

  「エロイ顔。」

  そしたらなんでか、そんな事を言われた。
  物欲しそうな顔をしていただろうか?

  「うっさい‥‥」

  睨み付けて吐き捨てる私に、土方さんはくすくすと笑みを漏らしながら唇を重ねてくる。
  ちりりと唇から痺れが広がった。
  あの時と同じ。
  いや、あの時よりもずっと‥‥ひどい、疼き。

  「‥‥私、今日、やばいかも‥‥」

  正気でいられる自信がない。
  キスだけでこんなになっちゃうんだもん‥‥

  「そりゃ俺も同じだ。」

  だけど、それは私だけじゃないらしい。
  土方さんは呟いて、頬にキスを落とす。
  それをそのまま滑らせて耳の付け根に吸い付かれた瞬間に、
  「ひぁっ」
  変な声が上がってしまった。
  それを聞いて彼は切なげに目を細めて、告げる。

  「俺も‥‥正気を保てるか自信がねえ。」

  耳のすぐ傍で聞こえた声は、熱く、掠れて、余裕がない。

  それがまた、私を苦しくさせる。

  早く‥‥欲しかった。

  「土方さ‥‥」
  「ん」

  まるで自分もだと言わんばかりに彼は唇を隙間なく塞ぐと、指を滑らせる。
  耳の後ろから首を滑り、鎖骨のくぼみを指先で引っ掻き、その間をゆったりと撫でる。
  そのまま服の深く切れ込んだ胸元まで落ちるとドレスの中に手が侵入してきた。
  かり、と下着の上から真っ先に乳首を擦られてびくんと身体が震えた。

  「相変わらず敏感だな。」

  少しだけ唇を離し、濡れたそれを舐りながら笑う。

  「だって‥‥ぁっ」

  もう片方の先端もきゅっと指先で摘まれて、下腹の奥からきゅうっと疼きが広がった。

  たったそれだけで布を押し上げるように両方の果実は存在を誇示するかのように勃ちあがる。
  きゅっと摘むと、それだけでじわりと濡れてくるのが分かった。
  そんなに簡単に濡れるなんて‥‥ひどく自分がいやらしい身体になってしまった気がする。
  でも、

  「‥‥欲しかった、んだもんっ‥‥」

  離れているその一月以上の間。
  彼の事を考えなかった時はない。
  触れて欲しくて、キスしたくて、抱いて欲しくて堪らなかった。
  欲しくて欲しくて堪らなかった。

  身体が勝手に反応してしまうほどに。
  自分からいやらしい事を口走ってしまい程に。
  欲しくて‥‥

  「ばっか、おまえ‥‥」

  何故か土方さんは私を見て苦しげに顔を歪めた。
  触れていた指先に力が入り、一瞬唇を噛みしめたかと思うと、

  「あ‥‥っ」

  まるで破るんじゃないかと思うくらいの荒々しさで私のドレスを脱がせる。
  生地が滑らかなせいなのか、それとも彼が慣れているせいなのか分からない。
  あっという間に脱がされ、いつの間にホックを外したのか、ブラも奪われる。

  いつもは恥ずかしくて手で隠すけれど、今日はそれよりも早く触れて欲しくて‥‥触れたくて‥‥

  「‥‥?」

  手を彼の肩に伸ばした。
  それから逞しい身体を確かめるみたいにゆったりと掌を滑らせる。
  滑らかなシャツの感触とその下にある体温が私の手に伝わってきた。
  それから、

  「っ」

  なだらかだったそれがちりと引っかかる。
  シャツ越しに感じる‥‥土方さんの‥‥

  「男の人も‥‥感じると‥‥」

  こうなるの?
  固くなった乳首に指先を引っかけて、彼がいつもしてくれるみたいに捏ねた。

  「んっ」

  土方さんは色っぽい溜息を漏らして、ああ、と頷く。

  「おまえが触れてると‥‥気持ちいい。」

  濡れた瞳を細めて、彼は本当に気持ちが良さそうな顔になる。
  だけど、ちょっと‥‥苦しそうでもある。

  「‥‥もっと‥‥強い方が良い?」

  くすぐるみたいな指使いをきつく摘むようにすればいいんだろうか?

  訊ねると彼は苦笑で首を振り、

  「それ以上やったら我慢が出来なくなるから‥‥」

  私の手を掴んで距離を縮めると、

  「ぁっ」

  今度は自分の番とばかりに、私の胸を掌で包み込んで愛撫しながら、囁いた。

  「また、今度ゆっくりさせてやる――」