「教師が、生徒に手を出したら犯罪なんでしょ?」
「あ?なんだいきなり。」
「今朝テレビでやってたんですよ。」
は今朝のニュースを思い出して呟く。
どこぞの教師が生徒に淫らな行為を強要して、問題になったとかなんとか。
それ以外にも色々と聞くのだけど、
「あれってどこまでがオッケーなんですかね?」
はちょこっと疑問に思っていた。
だってそうだ。
猥褻行為というのも、それぞれで価値観が違う。
例えば‥‥ただ手を触れるだけでアウトな人もいるし、そういう雑誌を見せるのが駄目という人もいる。
そりゃ生徒に無理やり乱暴なんてしたら完璧にアウトだと思うけど、いまいちどこまでがラインぎりぎりか分からない。
「‥‥先生が私にしてんのは猥褻行為?」
悪戯っぽく訊ねると、土方は目を細めた。
「そりゃ、俺になんかされるのは嫌だって遠回しに言ってんのか?」
そう言う意味ではない。
ただ‥‥
世間様から見たらどうなのだろうと思っただけだ。
やっぱりこれは犯罪なのだろうか?と。
互いに好きあっていても、教師と生徒だから犯罪になるのはおかしな世の中だ‥‥と。
そう‥‥
自分が高校生でなければ、また違うのだろう、それもおかしな話だ。
「‥‥まあ、完璧に捕まるだろうな。」
土方はひょいと肩をすくめた。
なんせ、
「もう手を出しちまってる。」
彼女を抱いてしまっている。
そんな言葉に、
「‥‥出しちまってる‥‥って‥‥なんか嫌そうな言い方。」
は唇を尖らせた。
自分と関係を持った事、少し後悔しているのだろうか。
やっぱり煩わしい事と思われているのだろうか‥‥と不安になれば、土方は苦笑を漏らした。
それから、手を伸ばして不満げな彼女を引き寄せる。
ぽすんと、素直に腕の中に収まった。
「俺は後悔なんかしてねえよ。
‥‥我慢の利かなかった自分に呆れてはいるけどな。」
く。
と彼は自嘲じみた笑みを浮かべた。
立派な大人が、まだ子供である彼女にこれほどまでに骨抜きにされるとは‥‥ 「おまえを抱くのは、卒業するまで待ってるつもりだったんだが‥‥」
あと、数ヶ月。
それが待てなかった。
「横からかっさらわれるんじゃねえか‥‥ 若いおまえの事だから‥‥別の奴が好きになっちまうんじゃねえか‥‥」
そうして、自分は過去の男となるんじゃないか、
そんな不安さえ抱いていたと彼は言う。
「そんな事、私‥‥」
「勿論、信じてる。」
信じてる。
と言う目はすごく優しい。
「それでも‥‥不安だったんだよ。」
自分は、大人だから。
彼女とは、十歳以上も違うから。
だから‥‥
「‥‥取られる前に俺の物にしてしまいたいって思ったのかもしれねえな。」
誰かに取られるくらいなら。
自分の物にして、
他に何も見えなくなるくらいに骨抜きにしてやろうと、
そう思っていたのかも知れない。
「まあ何より、俺自身が我慢できなかったんだけどな‥‥」
ひょいと肩をすくめて彼は笑った。
それほどに求められていると言う事に、恥ずかしさと‥‥それから愛おしさがこみ上げる。
はきゅっと、彼の背に手を回した。
甘えるように頬を寄せれば、彼は額にキスをくれる。
「だから、おまえを抱いた事は微塵も後悔しちゃいねえ。
もしこれが罪だって言われても‥‥俺は納得しねえよ。」
悪いと思っちゃいないからな、と彼は自信たっぷりに笑う。
それを見て、は苦笑した。
本当に‥‥彼ならそんな事を言ってのけてしまいそうだ。
まったく、彼に恐れるものというものはないものだろうか。
まあ、でも。
と土方は呟いた。
「あれくらいで捕まるっていうなら、勿体ねえから‥‥」
「‥‥え‥‥って、うわ!?」
ぼす。
と突然肩を押されて、ソファの上に転がる。
その身体を追いかけるように、彼の体重がそっと掛けられた。
見上げれば、にやりと艶めいた笑みを浮かべる土方の姿。
「とりあえず、気の済むまでたっぷり堪能させてもらうかな。」
あ、ちょっとやぶ蛇だったかもと思ったときには、意地悪な唇に全てを封じ込められた。
猥褻宣言
先生、それは犯罪です!
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