忍び寄る夜の闇のように。
音もなく、男はやってきた。
まるで闇に溶け込まない風貌をしているくせに、
闇から男は這い出たかのように、
音もなく、
現れた。
「――!!」
気配に気付いた時、は振り返る事も出来ずに、
ダン、
と壁に強く叩きつけられた。
痛い。
と思ったのは一瞬だ。
それよりも即座に反撃に転じなければと武器に手を伸ばすよりも、これまた先に大きな手が後ろにねじ上げる。
「いっ」
これは堪らず声を上げると、背後で低い笑い声が聞こえた。
ねっとりと粘つくようなそれに、ああやはりとは内心で呟き、そして同時にくそと吐き捨てた。
「出来れば‥‥あんたとは二度と会いたくなかった‥‥」
の吐き捨てるような言葉に、男は薄らと笑みを浮かべ、身を寄せる。
自分のあまり知らない香のにおいと体温とが包み、耳元に、温もりが触れてはぎくりとした。
「迎えに来てやったぞ‥‥」
艶然として笑う鬼の頭領‥‥風間千景は、妻よ、とを呼んだ。
やはり人の忠告は聞いておくべきだったと後悔しても既に遅い。
鬼の姫なのだと知ってから鬼の一族に狙われる事が多くなったではあったが、まさか町中で堂々と襲われるとは思って
はいなかった。
堂々‥‥といっても、ここは路地裏。
おまけに夜。
襲撃するにはもってこいの時間帯だ‥‥というのを今更思い出す。
そして、案の定襲撃にあった。
これが斬り合いならば、出会ったのが風間ではなく他の鬼ならば良かったのに‥‥相手はあの、風間、である。
出会い頭に壁に押しつけ、些か乱暴に扱ってはいるが、斬り合いをするようには感じなかった。
逆にその方が恐ろしいとは思い、一度捻り上げられた腕を動かしてみた。
みし、と骨が嫌な音を立てる。
これは身動きをしない方が得策のようである。
「‥‥んで、なに?」
何しにきたの?と突っ慳貪に言うと、風間は耳のすぐ傍で笑った。
吐息が耳を擽り、はひくと肩が動きそうになる。
それを唇を噛みしめて堪えると、不自由ながらになんとか振り返り、闇夜でも美しく輝くその瞳を睨め付けた。
「分かっているのだろう?」
「私を攫いに‥‥って事?」
「その通りだ。」
その通りと言われ、ははっと吐き捨てる。
「私はあんたと一緒に行く気はないって言っただろ?」
鬼の姫になるのなど‥‥ましてや風間の嫁になるのなど御免被るとは言ってのける。
「鬼の存続問題なら余所でやって。」
私には関係ない、と突っぱね、はもう一度離せと男に言った。
風間はそんな事を言われる事など分かっていたのだろう。
だが、
「そういうわけにはいかぬ。」
男は言って、細い首筋をねっとりと舐めた。
「っ」
ぞわりと鳥肌が立つ。
は思わず戒められた手を握りしめ、奥歯を噛みしめる。
「やめろ、変態!」
罵倒するが、風間はくつくつと嗤うだけだ。
舐るだけでは飽きたらず、細い肩に噛みついて、同時に空いている方の手で前をまさぐってくる。
「こっの‥‥無理矢理襲う気かっ!」
「了承しなければそうするまでだ。」
こともなげに男は認める。
冗談ではない。
は身を捩った。
しかし、男の力には敵わず、更に腕をねじ上げられはううと痛みに顔を顰めるしかない。
その合間にも鬼の手は袷から侵入し、サラシを解き始める。
解く、というより乱暴に引きずり下ろすようなそれで。
「鬼は高貴な存在とか言っておきながら、やってることはケダモノのと同じだな‥‥」
嘲りの言葉にも男は優位に立っているせいだろう、反論はしない。
サラシを引きずり下ろされ、ふわりと女のそれがこぼれ落ちる。
男の前にそれを晒すのはこれが、二度目。
ああ畜生とはまた悔しげに吐き捨てた。
これが他の娘ならば青ざめ、やめてと泣き懇願した所だろうが、生憎とはそんなに可愛らしい性格はしていない。
身を捧げたい相手もいなければ、綺麗で在り続けねばならない必要性などない。
ただ‥‥この男に抱かれてやるのは癪だとは思うけれど‥‥
「っい、った‥‥」
ぎゅうと、豊満な胸に男の指が強く食い込む。
「まだ芯が残っているな‥‥」
なるほどと大きさと感触とを確認した風間は逆にをからかうように言ってのける。
もう一度強く形を変えるほどに揉まれ、はもう一度痛いと言った。
「案ずるな‥‥すぐ俺の手に馴染むように仕込んでやる。」
「だ‥‥れが‥‥っあんたに仕込まれてやるもんかっ」
「ふん、すぐに自ら俺の前に屈するようになる。」
「あんたに腰振るくらいならっ‥‥」
その辺の見ず知らずの男とやった方がまだマシ‥‥とが続けようとした所、
きゅ、
「ふぁっ」
乳首を強くも、弱くもない絶妙な強さで摘み、引っ張られ、の口から声が漏れた。
親指と中指とで引っ張ったまま人差し指で先の部分をくるくると擽られ、じんっと腰に甘い痺れが走っていくのが分かる。
生娘ではない。
だからそれが快楽なのだということは分かった。
分かって‥‥絶望した。
好いた男ではなくても、感じる場所を責められれば感じてしまうのが女だということを知らしめられた。
そして、自分もやはり女なのだと。
じんと生まれた疼きは腰から全身へと広がっていく。
きゅきゅと摘みながら、首筋を男の舌がねっとりと何度も往復した。
時折、耳朶をかりと緩く噛まれて、それがまた疼きを増長させ、は壁に額を押しつけたまま奥歯を噛みしめて漏れる
声を押し殺す。
快楽がなんたるかを知ってはいても、それを堪えれば堪えるほど身体は敏感になる‥‥というのを彼女はまだ知らない。
「は、なせっ‥‥この、変態‥‥」
身体を疼きに支配されながら、はそれでも男に屈する事はない。
甘ったるく濡れながら、どこか強さを感じる琥珀の瞳に、やはり加虐心を煽る女だと男は思った。
支配してみたくなる。
屈服させてみたくなる。
それが‥‥男という生き物だ。
「その変態に乳房を弄られて感じている女が何を言う?」
わざと辛辣な言葉を突きつければ、の瞳が一瞬屈辱で歪む。
征服欲を満たすその表情に、男は笑い、やがて乳房を弄んでいた手をゆっくりと、彼女にその手がこの先何をするのか
見せつけるかのように下へと滑らせていく。
「っ!」
これにはやはりも表情を変えた。
男の手は間違いなく、の中心。
女の秘めた場所へと向かっている。
そこに触れる意味はただ一つだ。
身体を、繋げるため。
女のそこに、男の欲をねじ込むためだ。
そして、精を注ぎ‥‥子を宿すため。
「く、そっ‥‥」
無駄な悪あがきと分かってはいても、は暴れた。
爪が食い込み皮膚が裂けてもは止まらなかった。
男の手が、
「っひっ――」
下履きの中に滑り込み、彼女の秘所にたどり着くまでは。
「ふん‥‥」
指先に感じる湿り気に男は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「濡れているぞ。」
女陰は‥‥僅かに濡れていたのだ。
それが何を意味するか、というのは初な子供でなければ分かる。
つまりそれはが、
「俺に触られ‥‥感じたのだろう?」
そういうこと。
無理矢理だというのに、男の指に、舌に、
は感じた。
感じ、身体の奥から蜜を零し始めた。
それが、彼女の体内から溢れ、まるで受け入れる準備をするかのようにそこを濡らしたのだ。
「だ‥‥れがっ‥‥」
おまえなんぞにと口では言っても。
どれだけ嫌がってはいても‥‥身体は快楽には勝てない。
は吐き捨てるように悪態を口にするが、
それもすぐに、
「ぁっ‥‥ぅっ‥‥」
男の指が中に侵入し、唇はあっさりと開き、甘い吐息を漏らし始める。
生娘ではないにしても一度ばかりの交わりだ。
の中はひどく狭かった。
しかし、とても熱く、柔らかく、そして激しくうねっていた。
風間は差し込んだ一本のそれで女の体内をかき回す。
ぐちゃぐちゃとわざと音を立てるようにかき回した後、もう一本指を増やして中を広げていく。
「ぁっ‥‥はっ、ぅっ‥‥」
指は乱暴でありながら、確実にを追いつめていた。
壁のあちこちを指先が触れるたびに脳天から爪先まで強い何かが流れていく。
気がつくと、はつま先立ちになり、こみ上げる快楽の波から逃れようとしていた。
この状況としては嬉しくない事に‥‥は人よりも感度がいい女であった。
まだ二度目の交わりだというのに、体内で快楽を得られるようになっていた。
そしてまた、風間も勘のいい男である。
が顕著に反応を示したそこが感じる場所なのだと察し、何度も何度も執拗にその場所を嬲った。
体内からまた蜜が溢れ、知らしめるように男はぐじゅと盛大に音を立ててみせた。
「んっ、だめっ‥‥」
何度も同じ場所を弄られる内に、は無意識にそんな言葉を漏らしていた。
ふるふると太股が震えている。
限界は‥‥近い。
「そろそろ‥‥だな。」
男はひとりごち、指を中から引きずり出すとの穿き物をぐいと乱暴に下ろした。
一瞬だけ、手が自由になる。
が、反撃に転じる理性もなければ時間も与えず、
「ぁあああ――!!」
男は一気に猛る自身で女の中を貫いた。
熱く太い楔に貫かれ、は痛みに思い切り声を上げ‥‥同時に軽く頂を極めていた。
その時にきつく締め上げられ、背後でぐ、と男は呻く。
それは射精を堪えているようだった。
「ぁ‥‥あ‥‥っぁ‥‥」
ひくひくとが快楽の余韻にしばし震えるのを見守り、
やがて彼女がほぅと溜息を漏らし自分が達した事に気付き、悔しげに唇を噛みしめた後、風間はゆったりと腰を動かし
始める。
「あ、や‥‥」
腰を引いた瞬間に体内が引き絞り、男を受け入れているのだとに知らしめる。
嫌だと言いつつも、また奥までねじ込まれると、
「っはっ、ぁっ」
身体の奥からじわりと熱いものがこみ上げ、先ほどと同じ強い快楽の波が押し寄せてくる。
立位という体勢のせいか、中はひどく狭く、男を締め付けてくる。
「良い具合だ。」
風間は耳元でくすりと笑い、さらなる快楽を得ようと女を引き寄せた。
「っ」
ぐいと自分の胸に背を預けるように凭れさせ、下から掬い上げるように乳房を持ち上げる。
「んんっ」
強く一度揉み、その刺激で立ち上がった先端を両の手できゅとつまみ上げた。
「ぁあっ!」
ひくんとは背をしならせ、きゅうと雄を締め上げる。
まるで食いちぎる勢いに風間はくつくつと笑った。
「いい、ぞ‥‥もっとだ。」
きゅっきゅと一定の早さで強くつまみながらゆるゆると腰を回す。
「や、やめっ、ぁあっん!」
離せと男の手を掴んだまままた良いところを擦られてたくましい男の腕に爪を立てる。
脳天まで甘い痺れが走りたまらず女は抜けそうになる楔を追いかけるように腰を揺らした。
くつと耳の後ろで男は笑ったけれど、はその意図を考えないようにした。
「ぁっ、ああっ」
乳房をもてあそびながら、熟れた肉壁を存分に擦る。
男の律動に合わせるようには腰を揺らし、自ら上り詰めるために快楽をむさぼった。
耳たぶを舐っていた唇が肩口に滑り、がりと強く噛みつかれる。
「アっ!!」
高い声が上がり、同時にきつく締め上げられ、男は先走りを零した。
ぐちゃと濡れた音が一層響く。
余裕が無くなってきた男は強く下から突き破るような勢いで突き上げてきた。
同時に乳房に爪を立てられ、皮膚を裂く感覚さえが快楽にすり替わり、はああとか細く啼いた。
がくがくと太股が震えはじめ、もはや自力で立つことが叶わなくなってくる。
「や、だめ‥‥も、もっ‥‥」
切羽詰まった泣き声が聞こえてきた頃、男の限界も近づいていた。
びくんびくんと内部で雄が震える。
「出すぞ‥‥」
短い宣告にはいや、と首を振った。
「なか‥‥はっ‥‥」
やだ、とか細く訴える彼女に鬼はそれは聞けぬと首を振り、
「中に出さねば‥‥子は出来ぬ。」
そう言ったその後、
ぐん、
と、最奥まで己を押し込み、
「っ!?」
甲高い女の悲鳴と、一際強い締め付けを味わいながら一気に熱を吐き出した。
「あ‥‥ぅ‥‥」
男の精が注ぎ込まれ、体内を満たす。
最後の一滴まで注ぐように、男は最後まで腰を軽く揺すって時折きゅうと締め付ける女の中を堪能した。
そして、それが終わると、
「‥‥っ」
にゅるりと、そんな音を立てて雄が引き抜かれた。
栓を失った途端にどろっと精があふれ出し、は嫌悪感に顔を歪める。
そのまま地面に頽れそうになる身体を鬼の逞しい手が支える。
無言のまま身体を反転させ、冷たく乾いた大地の上に女を座らせ、改めて男は女の痴態を眺めた。
暴かれた胸元。
たわわに実る胸のその先は、強く摘んだせいで赤く熟れ、その先端はまるで食べて欲しいと言わんばかりに尖らせ、
存在を誇示している。
今し方精を注がれた女の秘所。
荒く呼吸をつく度にどろりと粘つくそれを吐き出すそこは、鮮やかな赤をしていた。
ひくひくとまるで意志でも持っているかのように動く入り口は、物欲しそうですらある。
そうして、
「‥‥」
こちらをぼんやりと見つめる、女の瞳。
濡れた、快楽に堕ちた瞳。
強引に奪われ、辱められたその人は‥‥
しかし、奪われてもなお、その奥に強い色を秘めていた。
「っ‥‥」
不意に、女は笑った。
ぞくりと、肌が粟立つほど妖艶に‥‥そして美しく。
男に汚され、堕とされても、
なおいっそう、美しく、
女は笑った。
「‥‥これで‥‥私を手に入れたつもり?」
まるでそう、今し方征服したと思った自分を、嘲るかのように――
奪ったつもりで奪われた
初・千景先生のう・ら♪
でも、千景先生惨敗←
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