色々突っ込みたいけど突っ込んでも無駄なので話を進めようと思う。
 ツイッターを始めるという事で、まずは、アカウントの取得だ。
「それって名前みたいなもんだよな?」
 平助が訊ねてくる。
「まあ、名前みたいなもんで間違いはないと思う。別に名前入れる所もあるけど」
「なんて入れても良いのか?」
「うん、好きにしたらいいと思うよ」
 よしと意気込む平助を筆頭に、みんなもそれぞれアカウントを考え始めた。
 私は何にしようか……やっぱりここは名前が一番かな、分かりやすいし。
「じゃあsetsunaと……」
 登録完了。
「オレも出来た! なあ、、これあとどうしたらいい?」
「アカウントが出来たら繋がりたい人を探してフォローすると良いよ」
「新選組のみんなとか?」
「うん、そだね。私もう登録したから「setsuna」で探してみてよ」
 探したらここを押してねと平助の画面を覗き込んで言うと、彼は分かったと元気に応えてすぐに画面と向き合う。
 ほどなくして私のフォロワー数が一つ増える。
 アカウント名は……@toudou_heisuke
「まんまだね」
「その方が分かりやすいだろ」
「確かに」
 たまに捻って分かりにくい名前を入れる人がいるけど、出来れば見ただけでピンとくる方が良い。
 なんて話をしているとまた、フォロワーが増えた。
 なになに?

 @harada_s

「左之さん、名前は端折ったんですね」
「長いからな。名字だけじゃねえし、分かるだろ?」
「はい、簡潔で良いかと」
 ただ個人的には何故に続けると「腹出す」って読めるのが微妙なんだけどな。左之さんだけに……
 まさかそんなネタ仕込んでないわな。
「でも、左之さんも平助も、もうちょっと遊べば良いのに」
 真面目だなと言うと平助が遊ぶって? と首を捻って聞いてくる。
「例えば『魁先生藤堂』とか」
「お! それ格好いい!!」
「後は『小さくても一人前な平助』とか」
「小さくねえよ!!」
 なんて平助をからかっているとまたフォロワーが増えてた。
 お次は……

 @hijikata_korosu

「総司ぃいいいい!」
「あれ? 分かっちゃった?」
 名前書いてないのにって言うけど、こんなアカウント総司以外にありえない。
「明らかに土方さんに喧嘩売ってるだろ!?」
「だって、が遊んで良いっていうから」
「遊びすぎ!! っていうか、これだと微妙に土方さんなのかそうじゃないのか分からないじゃん!!」
「まずいかなぁ?」
「まずいから!! 別のにしろ!!」
 こんなの当人に見られたら絶対に大変な事になるでしょうが!!
「でも、自分の名前入れるのも嫌なんだよねぇ……変な事つぶやけないし」
「変な事を呟かなくてよろしい!! とりあえず誰かを貶めるようなアカウントはやめなさい」
「じゃあ」
 かちかちと打ち直す総司の指使いは、まさに高校生のそれだ。
 なにそれ、私だってそんなに早く打てないのに。
「これは?」
 ものの一拍もしない内に打ち終えた総司のアカウントを私は再度確かめて、

 
@sirebamayoi_hougyoku

「総司、これだけは駄目ぇええええ!!」
 血の雨が降る!
 この俳句だけは駄目だ! いや他のも駄目だけど、特にこれは駄目! 衝撃が大きすぎる、見るだけで!
「土方さんから離れろ! 頼むから!!」
「ちぇー」
 仕方ないなぁと呟きながら総司は改名作業に入る。
 後は、一だ。
 さっきから黙々と作業をしているけど、機械とは相性が悪いらしい。
 いやまあこの時代機械なんて早々ないから相性悪くても構わないと思うし、一が機械に強かったら……逆に嫌だ。
「一は出来た?」
 たどたどしい指使いでどうにか打ち終わったらしい彼は、妙に満足しきった顔で私を見て、
「ああ、見てくれ」
 と画面をこちらへと向けてきた。
 そこに表示された文字は、

 @hs

 おいこらおまえ、この二文字を打つのにあんなに時間掛かってたってわけか?
 どんだけ音痴なんだこいつ。

「一君、それじゃ短すぎて分からないよ」
 恐らくイニシャルの頭文字だけを打ったんだろうけど、確かに分かりにくい。
「左之さんと一瞬間違えるよね。二人とも同じだし」
 もっと分かりやすくしてよと言われて一は眉間に皺を寄せると、分かったと言って打ち直す。
 ぽちぽちと辿々しくボタンを操作して、
「これでどうだろうか?」

 
@hshs

「………」
「………」
、これって、」
「言うな」
 一瞬彼がこんな状況なのかと想像して、怖くなって止めた。


  ついったぁ


  無駄なことを嫌う男、それが斎藤一です。
  はい、すいませんでした!!