『イギリス人の主観からしてフレンチ‥‥つまりフランス風とは、下品な性的劣情を煽るという意味がある』
フランス人はそれほどに下品なのかと疑いたくなる言いようだ。
しかし、古来からあるヴィクトリアンメイドとフレンチメイドでは、まったくもって装いが違った。
そういえば近年では、フレンチメイドをジャパニーズメイドと言うらしい。
ごく一部の日本人がそこに改良を加え‥‥更に、マニア度やら、いやらしさやらを追求したから‥‥らしい。
「いやでもしかし、土方さんがこういう趣味を持ってるとは思いませんでした。」
感心したよう広げた黒のドレスを見つめる少女に、男は断じて違うと首を振った。
コスチュームプレイなどというマニアックな趣味なんぞ持ち合わせていない、と。
「じゃあ、なんでこんなもの持ってたんですか?」
びろーんとメイド服を広げて見せられ、思い切り顔を顰めて、
「どこぞの悪趣味な男の嫌がらせだ。」
と答える。
悪趣味な男‥‥つまり、の悪友、沖田総司の嫌がらせに違いないと。
タイミング良く、二人が一緒の時を見計らって荷物が届いた事からして間違いない。
しかも、名前は土方の名前だけでなく、の名前まで入っていたのだ。
『恋のキューピッド』などという怪しい名前で送りつけてくるような、タチの悪い嫌がらせをするのは‥‥彼しか思いつ
かなかった。
嫌な予感がしつつも開けた瞬間の、あのなんとも言えない空気をどうしてくれるんだ‥‥と男は沖田に言ってやりたかった。
「しかし、最近の衣装って凝ってるんですねぇ‥‥」
一人、闘志を燃やす彼とは逆には広げた衣装を見てしみじみと呟いた。
縫製もさることながら、布地に至るまで色んな所に凝っている。
昔のように手作り感満載の衣装ではなく、普通にどこぞの店でも売っていそうだ。
「‥‥こういうのが世の男性の好みというワケか‥‥」
「言っとくけど、俺は別にそんな趣味はねえぞ。」
「そうなの?」
は小首を傾げた。
いや、まったくないか‥‥と聞かれれば多少、興味はある。
だが勿論メイド服がいい、とかコスプレがいい、というのではなくて、着る人間の問題だ。
つまり‥‥それをが着た所を見てみたいと思うが、誰でもいいというわけではない。
そこの所は勘違いしないでほしい。
「大丈夫ですよ。
私、土方さんがちょっと変わった趣味の持ち主でも馬鹿にしたりしません。」
そいつは喜んでいいのやら悲しんでいいのやら分からない。
はぅ、と土方は溜息を吐き、ふと、彼女が興味津々といった様子で衣装を見つめていることに気付いて、提案してみた。
「‥‥おまえ、着てみねえか?」
「は?」
は間の抜けた声を上げ、目をまん丸く見開く。
「は、じゃねえよ‥‥折角だから、着てみたらどうだ。」
「い、いやいやいや!絶対似合わないし!!」
「いや、おまえに似合うヤツだと思うぞ。」
どうせあの男の事だ。
彼女に似合う、ぴったりジャストフィットサイズを発注したに違いない。
いつかどこから情報を仕入れたのか問いただしたい所だが‥‥今はとりあえずおいておこう。
「で‥‥でも‥‥」
こんなのガラじゃないと呻くに、土方はにっと笑みを浮かべて、
「ガラじゃねえかどうかは‥‥着てみないと分からないだろう?」
そう告げる。
尤もな意見にもう一度、はうぐぐと呻いたが‥‥勝敗はもう既に見えていた。
テレビの情報番組だかなにかで見たときは「侮辱もいいところだ」と思った。
正式なメイドに謝るべきだと。
しかし、今、この瞬間、謝るべきはそのメイド服を改良したごく一部にこそだ‥‥と思った。
「‥‥‥」
じーっと穴が空きそうなほどじっと見つめられ、は居心地悪そうにちらちらと視線をあちこちへと彷徨わせる。
意味もなくスカートの裾を弄りながら、下へと引っ張るのは‥‥その丈があまりに短すぎるためだ。
ふわんと膨らんだタイプのそれは、歩いただけでめくれ上がりそうで‥‥すごく心許ない。
胸元を飾る大きなリボンはなんとも自分に不似合いな気がして、とにかくすぐに脱ぎ去りたい気分だ。
おまけに、目の前の彼氏は驚いたように目を見開いて凝視するばかりで感想の一つもない。
居たたまれない。
「‥‥や、やっぱり着替えてきます。」
そのまま後ろにじり、と下がろうとすると土方が我に返った。
我には返ったのだが‥‥しかし次の瞬間、にや、と男の口角が引き上がって、嫌な予感がする。
あの顔はあれだ‥‥何かいけない事を思いついた顔。
「ちょ、ストップ‥‥近付かないで‥‥」
「なんでだ?もっと近くで見たっていいだろう?」
にやにやと嫌な笑みを浮かべながら近付いてくる男にはじりっと後退する。
ダッシュで逃げられないのはスカートの裾がひらりと捲れてしまいそうだから。
「何で逃げる?」
「ひ、土方さんがそんないやらしそーな顔で近付いてくるから!」
身の危険を感じるんだと言えば、彼はそいつは察しがいいなと笑った。
「いやらしい事をしようと思ってる。」
「ちょ、わ!お触り禁止!!」
すっと大きな手がに伸びる。
慌てて身を翻してその場を逃げようとしたけれど、
「っ!?」
思ったよりも強い力で両腕を掴まれて、引き寄せられてしまう。
「お、お触り禁止って言ったのにー!」
「お触り禁止?何言ってんだおまえ‥‥」
ふんっと鼻で笑いながら土方は首筋へと唇を這わせ、衣服の上から胸の膨らみへと手を伸ばしながら囁く。
「メイドは、ご主人様の言うことをきくもんだろう?」
誰がご主人様だと反論する唇は、次の瞬間、男のそれに塞がれた。
なんていやらしい事をするんだろうかとは思う。
こんな普通ではありえない衣装を着て、セックスをするなんて‥‥なんていやらしい事をするのかと‥‥
しかも、自分をご主人様と呼ばせて喜ぶなんて、変態だ。
もう彼は変態親父で十分だ。
「生意気な事を言うメイドだな‥‥」
まったくと呆れたように言いながら、彼は埋めた指を感じるところに押し当てて擦りつけた。
「や、やぁっ!」
途端、あられもない嬌声が口から飛び出し、きゅうと男の指を強く締め付ける。
男はにやりと余裕のない笑みを浮かべて、おまけにと付け足す。
「いやらしいメイドだ。」
誰のせいだ。
は内心で罵ったが、怒りはすぐに気持ちいい所を撫でられ‥‥霧散した。
ぐちゅ、くちゅ、と自分の中からはしたない水音が聞こえてくる。
同時に口からはひっきりなしに甘ったるい声が漏れて、は耳を塞ぎたかった。
が、
その両手はリボンで拘束されていて出来ない。
しかも、そのリボンはあろうことか、机の脚に固定されていて腕を頭上に纏めたままで動かすことが出来ない。
身を捩ろうにも限度があって、
「これ、外し‥‥てっ」
は何度もリボンを解くように懇願した。
だが、男はゆったりと首を振って、意地悪くこういう。
「外してくださいご主人様‥‥だろう?」
「ひ、ぁ、ああっ――!!」
言いながら膨らんだ花芽を親指で潰される。
ぐりっと強く円を描くように捏ねられては腰が跳ねた。
その弾みで露わにされた柔らかな胸が、たぷんと躍る。
「や、や、だめっ、そこっだめっ、だめぇっ!」
びりびりっと断続的な痺れが身体を支配する。
それと同時に強すぎる快感が走り抜け、は爪先を丸めて力を込めた。
「イかせてほしいか?」
問いかけにこくこくと無意識に頭を縦に振っていた。
「じゃあ、イカせてください、ご主人様‥‥ってお強請りしてみろ。」
「っつ‥‥」
羞恥に頬を染め、はぎっと睨み付けた。
誰がそんなことを言えるかと言いたげに鋭くなった眼差しも、すぐに、
「う、ふ‥‥ぁっあー」
甘く蕩けるような快楽に堕ちてしまう。
「なんだ、イカせてほしくねえのか?」
「や、い、じわるっ‥‥ぁ、ああっ」
「たまにゃ‥‥いじめ抜いてやりてぇって思うのも男心だ‥‥」
諦めろ、と意地悪く囁かれ、それで?と続きを促された。
ついでにちょいっと爪の先でナカを引っかかれて、びくっと腰が跳ねた。
「‥‥っ」
一瞬は顔を歪めて、泣き出しそうな顔になる。
それでも止めずにじっと見つめ続ければ、恐る恐るという風に少女の唇が動いた。
「‥‥お願い、しますっ‥‥」
か細く声を震わせて、
「ご主人‥‥さまぁ‥‥」
主人に懇願する。
なにを‥‥とは言わなかったが、彼女にしては上出来だ。
分かった、と土方は喉を震わせて言うと、顔をそっとそこへと落とした。
「や、舐めっ‥‥」
それは嫌だ、と言葉にするよりも先に、熱く柔らかい唇に、
「っ――!」
緩く食まれ、呆気なく‥‥上り詰め、果てた。
「エロ‥‥」
指に絡みつく蜜を舐りながら、はーはーと荒い呼吸をする女を見下ろす。
縛り付けられ、メイド服の胸元を暴かれ胸を露わにされ、
スカートを捲り上げられ下着を脱がされ、男にされるがままの少女の姿はひどく‥‥扇情的で‥‥
「っ」
男はごくりと生唾を飲んだ。
きりりと下肢を締め付ける感覚が苦しくて、ベルトを慌てたような手つきで外すとファスナーを下ろし、前をくつろげた。
「‥‥あ‥‥やだ‥‥」
虚ろだった瞳が徐々に光を取り戻し、土方の様子に気付いたはいやと怯えたように言って逃れるように上へと上がろ
うとする。
それは簡単に太股を捕らえられて遮られ、また引き寄せられた。
「やだ‥‥もう、外して‥‥」
お願い、とは懇願する。
リボンを解けと彼女はまた言った。
「どうしてだ?」
別にこのままでもいいじゃないかと男は言いながら、濡れた下肢に雄をすりつけた。
熱く、固い感触にはびくりと身体を震わせる。
そのままなし崩しに受け入れてしまいそうになるのを必死に叱咤して、駄目、と彼女はもう一度言った。
だって、
「‥‥土方さんに触れないと‥‥怖い‥‥」
不安げに告げる彼女に、男は不覚にもときめいてしまった。
きゅんと胸を鷲掴みにされた気分になり、なんというか‥‥今更ながらに罪悪感がこみ上げてくる。
彼女が不安を覚えながら自分に抱かれていた‥‥というのでは可哀想すぎる。
「‥‥悪かった。」
男は小さく謝罪を口にすると、両手の拘束を解く。
暴れたせいで、赤い痕が残ってしまった両手を見て、ひどく胸が痛んだ。
自由にされた少女は次の瞬間、男を蹴り飛ばして逃げる、という事もなく、
「っ」
男の逞しい首にしがみついてきた。
もう絶対離れない、とでも言いたげに、きつく。
「‥‥悪い。」
もう一度、男は謝罪の言葉を口にする。
そうして今し方までの非道な行いを悔いるかのように、優しくこめかみにキスを落とした。
こめかみから頬。
それから‥‥
「土方‥‥さ‥‥」
唇。
深く、合わせて‥‥離れて、重ねて、絡めて‥‥溶ける。
深いキスを何度も交わしながら、男はゆったりと切っ先を入り口に宛った。
「‥‥いいか?」
訊ねれば、一瞬の間の後、
「‥‥うん。」
は頷いた。
「もう、意地悪‥‥しないでくださいね‥‥」
と釘を刺されて、男は苦笑した。
ああ、と溜息で応えながら少女を傷つけないように、ゆっくりと挿入を始める。
ぬるんと滑る感触で雄は飲み込まれていく。
「ぁっ‥‥」
痛みを訴えるのではない、甘い声が時折漏れた。
宥めるように背を何度も優しく撫でながら最奥まで到達すると、もう一度、唇を合わせる。
「動くぞ。」
「‥‥もう、いちいち聞かなくていいっ‥‥」
今度はそんなことを言って、恥ずかしそうに視線を背ける。
本当に我が儘な恋人だと内心で呟き、男は嬉しそうに笑って、やがて動き出した。
ゆっくりと最初は少女を労るように。
「あ‥‥も‥‥もっと‥‥いいから‥‥」
やがて焦れて腰をくねらせながら少女が譫言のように強請れば、激しく。
肌と肌とがぶつかるくらいに強く。
抽送を繰り返す。
「っ、イイか?」
ぐずぐずと奥まで犯しながら訊ねれば、少女はきつく瞳を閉じたままこくっと頷いた。
「俺も‥‥イイよ。」
「ん、ぁっ――」
ぐと、腰を僅かに引いて角度を変えて弱い場所を責める。
ああ、と空気を震わせる女の甘い声に男の劣情は煽られて堪らない。
「ンな声‥‥出すな。
加減出来なくなる、だろ‥‥」
我慢が出来ないと言わんばかりに乱暴に抜き差しをされ、はひっと引きつった声を漏らした。
ぎゅうと強く瞑った眦から涙が零れる。
「ひじか‥‥さっ‥‥私、もう‥‥もっ、ぅ‥‥」
ぎり、と背中に爪を立ててはもう駄目だと泣きそうな声で告げる。
ああ。
という声が溜息の合間に聞こえた。
「俺も、すぐ‥‥っ‥‥」
苦しげな声がその耳に届いたか、届かないか‥‥
短い、その合間に、
「っ――!!」
パチンっとの中で何かが弾け、目の前が真っ白に染まった。
一気にやってくる開放感と、それから、直後の落下する感覚。
びくりと一際力の入った身体をしかと抱きしめながら男は低く呻いた。
びりりりりと雄にまで伝わる細かい痙攣と、きつい締め付け。
言いしれぬ快感に男も少し遅れて絶頂へと駆け上った。
「っつ‥‥!」
しかし胎内に射精する寸前に引き抜き、ドレスの上に熱い飛沫をぶちまける。
「あ‥‥ぁ‥‥」
恍惚とした表情で打ち震える少女の肌を、白い精液が‥‥汚した。
これがまた、すごくいやらしい光景だと、男はぼんやり思った。
とんでもない優越感
メイドとご主人様、別バージョン(笑)
総司とはまた違った変態っぷりです←
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