でん、
とそそり立つそれをは正座のまま、じっと見た。
年頃の娘ならそんなものを見ようものなら悲鳴を上げてすっ飛んでいくであろうそれを。
まじまじと見つめていた。
それは、彼の脚の間にあった。
常は袴を穿いているその下、布に隠されているものだ。
勿論人目にさらすようなものではない。
しかし、
今はの目の前にある。
胡座を掻いた彼の脚の間。
彼の、
雄の部分だ。
見た事がない‥‥といえば嘘になる。
彼とは何度か行為に及んでいる。
抱かれる最中に目にしたことはあるが、冷静な状態で見るのは、多分初めてだ。
それが、まだ反応をしていない常の姿であるのを見るのも、初めてだった。
それをじっとは見つめている。
「なんだ、そんなに珍しいもんか?」
土方は苦笑を零した。
下肢を晒す男と、それを凝視する女。
その姿を見ればおかしいと言われるかもしれないが、これには歴とした理由があった。
「土方さんはいっつも好き勝手する!」
事の発端はの不満だった。
何の事かと問えば、昨夜‥‥彼がを抱いた事にあったらしい。
土方としては不満を言われるような事をしていないつもりだ。
きちんと彼女を良くしてあげたし、乱暴もしていない。
求める頻度もそれほど多くないはずだし、好き勝手と言われるほどの事はないはずだ。
「確かに、土方さんはちゃんと私の事気遣ってくれてますよ‥‥」
そう言えば、はむぅと眉根を寄せた。
でも、彼女はまだ納得できない様子である。
「なにがいやなんだよ。」
訊ねると、彼女はばんっと畳を叩いて、こう、豪語した。
「私ばっかり翻弄されるのはいやなんです!」
曰く。
自分ばかりがあられもない声を、痴態を彼に見せているのは不公平だ‥‥ということらしい。
それは仕方のない事ではないだろうかと土方は思う。
普通の女ならば、気持ちよくして貰う事を‥‥多少恥じるだろうが、怒る女などいないだろう。
しかし、は矜持の高い女である。
その行為で自分ばかりがいいようにされるのは気に入らないのだ。
「じゃあ、どうするんだよ?」
土方は呆れた表情で問うた。
問いかけに、はもう自分の中で答えを決めていたようで、
「今日は、私に土方さんを好きにさせてください。」
真顔でそんな事を言われたときには、土方は思わず茶を取り落としそうになったものだった。
そして今に至る。
「わかった好きにしろ」
と言った時には、意気揚々と彼の袴を脱がしにかかっただったが、いざそれを目にすると彼女は手を止めてしまった。
無言で見下ろし、正座する。
まじまじと見つめられて、土方はなんとも居心地がわるいものだと思った。
「‥‥やらねえなら、俺は仕事に戻るぞ。」
しばし無言で見つめられていたが、やがて土方はため息と共にそう呟いた。
袴を引き上げようとするので、
「待った!」
は慌ててそれを押し止め、
「やる、やるから!」
と慌てて距離を縮めた。
ここで機嫌をそこねられてはいつ意趣返しが出来るか分からない。
「‥‥」
気が変わらない内に、は手を伸ばすと常の状態である雄に触れてみた。
「えっと‥‥どうしましょ?」
触ってみたものの、どうしたらいいのかと言いたげに視線を上げられ、土方は面食らう。
「なんだおまえ、咥えた事はねえのか?」
「‥‥あるわけないでしょう。」
は半眼になって彼を睨み付けた。
ちょっとカチンとくる。
咥えるどころか、こうしてまじまじと見たり、触ったりするのも初めてだ。
一体どういう風に見られているのだろう‥‥
と眉根を寄せれば、彼はくしゃと顔を歪めたまま口を開いた。
「いや‥‥総司とこういう事もしてたんじゃねえかと思ってよ。」
「‥‥」
確かに、総司とは関係を持った。
しかし、寝たのは一度きりだし、そんな事をした覚えはない。
自分と総司はどんな関係だと思われているのだろう?
ちょっと問いただしたくなった。
「まあ‥‥俺が初めてだってんなら‥‥悪くはねえな。」
「‥‥」
「ほら。」
ぐ、と頭をそれへと押しつけられる。
別に怖くはないが、いざ目の前に突きつけられるとちょっと引いてしまう。
「気持ちよくしてくれんだろ?」
悪戯っぽい言葉に、はううと一度だけ呻いた。
掌全体で、まずはその大きさを確かめるように包む。
そのまま上下にゆったりと手を動かし、擦るようにすれば、土方が笑った。
「そうそう、その調子。」
今度は先端を弄ってみようと親指の腹で軽く、先を撫でる。
じり、と僅かに走る快感に、土方の目が細められた。
手の中のそれが、じんわりと熱と、硬度を持ち始めた。
「先端って感じるんですか?」
「男の一番弱ぇ所だ‥‥」
だから噛むなよ、と言われてはふぅん‥‥と小さく呟いた。
それなら丁寧に扱うべきなのだろうなと、両手で包み込んで、両の親指できゅきゅと亀頭を捏ねるようにしてみれば、
「っつ‥‥」
土方の口から小さなうめき声が漏れる。
「あ、痛いですか?」
慌てては先端から手を離した。
が、
「いや、いい。」
続けろ、
と少し低くなった声に促され、はもう一度先端へと指を這わせた。
痛かったのではまずいということで、丁寧に。
「‥‥っ‥‥ん‥‥」
ゆっくりと円を描くように捏ね、くびれの部分もちょいとひっかいてみると、男は眉根を寄せて苦しげな表情を浮かべる。
でも、
痛いのとは違う。
きつく閉じた目元は僅かに赤く染まり、その唇から漏れるのは乱れた吐息。
時折「ん」と小さく上がる声は‥‥情事の最中、彼が口にするそれと同じで‥‥
感じてるのだと分かった。
普段は自分の方が余裕がないのでこうしてゆっくりと見る機会はない。
男の感じる様は‥‥ひどく色っぽくて、どこか可愛らしかった。
そんな顔をさせているのは今、自分なのだ。
そう思うと、はたまらなくて、先端に唇を寄せる。
一瞬びくりと震え、腰が逃げようとする。
逃すまいと、くわえ込み、舌先で熱いそれを舐ってやった。
口を吸うのを思い出して、それをやってみる。
舌先で舐れば、それの熱さと太さは、また‥‥増した。
そして弱いと言っていた先端をぐりぐりと舌で押しつぶしてやると、じわ、と唾液とは違う何かの味が口の中に広がる。
男の精だ。
「土方さん‥‥なんか出てきた。」
一度唇から離して観察してみる。
自分の唾液で濡れたそれは‥‥先ほど自分が口に含んだときとは少し、違っていた。
なんというか‥‥
太く、熱く、膨らんでいる。
少し窮屈そうに。
「いちいち報告しなくていい‥‥」
報告を受けて、土方は顔を顰めてみせる。
そんなの分かってる。
自分の身体の事だ。
「いいんだから仕方ねえだろ。」
「いいの?これいいの?」
「‥‥黙って咥えてろ。」
ぐ。
ともう一度頭を押しつけられた。
もう、
は一つため息を零して、ふと、考えた事を実行すべく、彼の雄へとまた舌を這わせた。
「‥‥おい‥‥」
それを見て、土方の眉間に皺が寄る。
「なに?」
は笑った。
べろりと裏筋を舐めながら。
そのまま上までたどり着くと、舌先でぐりぐりと押すように亀頭を舐る。
赤い舌を見せつけるようなそれは‥‥ひどく淫靡に見えた。
「っ‥‥」
唾液でぬるつく舌の刺激に、後から後から先走りが零れてきた。
「また出てきた。」
「うるせ‥‥」
「でもまだですよ?」
言って舌は先端から離れた。
再びゆっくりと下りてきて、こんどは根本をちろちろと舐められる。
そうしながら片手は袋を弄りだすのでこれはたまらない。
「っ‥‥っ!」
びくんっと雄が震えた。
先走りは先ほどよりも濃密なそれが溢れてきて、砲身を濡らす。
てらてらと光る先端が震え、同時に彼の脇腹も震えた。
「なに?いっちゃいそう?」
「‥‥おまえ、ほんといい性格してるよな。」
「好きな人は苛めたくなる性分なんですよ。」
「っ‥‥」
ちゅと、先端にもう一度口づけると、再び口腔へとそれを含んだ。
熱く柔らかなそれは、先ほどよりも幾分激しい動きで彼を追いつめた。
女の中でされるのとはまた違うが、これはこれでひどく気持ちがいい。
いや、良すぎる。
これではうっかり達してしまいそうだ。
「ん‥‥も、いい‥‥っ‥‥」
離せ。
頭を掴んで引きはがされる。
「やだ‥‥」
は譲らず、雄を握った。
強く握られ堪らず声が漏れる。
「。」
咎めるように名を呼ぶと、彼女は視線だけを上げて、
「だって土方さん、すっごい色っぽい顔‥‥」
「っ‥‥」
にゅると濡れた弱い亀頭を指で捏ねられて土方は息を詰める。
咄嗟に漏れそうになった女みたいな甘い声を、歯を食いしばって留めれば、下からが目を眇めて笑った。
「もっとその顔見たい‥‥」
「てめぇ‥‥」
「ね、お願い、このまま出して。」
「出来るかっ‥‥女の口でいかされるなんざっ‥‥」
「いいじゃん、見たいんです。」
「断‥‥るっ‥‥ぁっ‥‥」
ちゅく、と口と指とで弄られる。
「駄目、達くまで離してあげない。」
「っ、っ‥‥」
「このまま、出して。」
「っぅ‥‥」
「土方さんのこと、気持ちよくしてあげたいんです。」
ね。
とこの場には恐ろしく不似合いな可愛い視線だけを上げ、ちゅうと雄を吸う。
口の中の空気を無くすように窄められ、そのままに上下に顔を動かされると、限界だったそれが一気に爆発した。
「っくっ」
何かを堪えるような男の声。
直後、
「んっ!」
びゅ。
と熱い飛沫がの喉に叩きつけられた。
一瞬噎せ返りそうになる。
それを無理矢理に押さえつけて、は奥までくわえこんで、彼の吐き出した精を口で受け止めた。
苦さと青臭さを感じさせるそれを嚥下しながら、舌先は筋張ったそれへと這わせる。
更に射精を促すように、根本から先端までを舐った。
「っは‥‥くっ‥‥」
ひくひくと下腹が震えている。
眉根を寄せて苦しげに吐息を漏らすその様は、ひどく艶めかしいものだと思った。
「気持ちよかったですか?」
は目を細めて問いかけた。
「‥‥くそが。」
鋭く目元を細めて睨み付ける。
しかし、上気し、赤く染まったそれで睨まれても怖くない。
それどころか目を細められれば一層色っぽさが増すばかりだ。
「ひーじかーたさん。」
そっぽ向いた彼の頬に手を伸ばす。
しかし、彼女の手が頬に触れるより前に、
「わっ!?」
強い力が逆に押され、どさっと後ろに倒されてしまった。
勿論上には男が乗っかってくる。
「ちょ、土方さん!?」
は慌てた。
何故なら股座に押しつけられたそれが、先ほど放ったばかりだというのに見る見るうちに熱と硬度を取り戻していったからだ。
そうして硬度を増したそれで、布の上から擦られる。
「っ!」
びくんっとは身体を震わせた。
喉に声が引っかかり、吐息だけが漏れる。
そして押しつけられた瞬間に気づいた。
自分の身体の変化。
男を咥えながら、身体が自然と反応していたことに気づき、は慌ててその腕の中から逃げだそうとした。
見咎められては何を言われるか分かったものではない。
「お、落ち着いてっ‥‥」
待って、とは男の制止を試みた。
が、
「今度は、俺の番だ。」
掠れた男の、欲情した声と視線に、止められない事を知る。
たまには立場を変えて
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