本文の前にこちらの合戦衣装をご覧ください。


  「と言う事で、合戦衣裳に着替えてみました」

  じゃじゃーんと、自分で言いながら飛び出してきたはどうかなと彼らの前でくるりと回転してみせる。
  引き締まった深い青を基調とした彼女の戦装束。
  色味的に少し冷たい印象を与える、かと思えば脱いだ羽織を腰で結んでいるのがどことなく柔らかさを感じさせる。回転
  すればふわりと揺れるそれは尻尾、というよりも羽のようだ。当人は嫌がるかも知れないが、蝶が柔らかく舞っているか
  のよう。
  青と、赤のなんとも美しい蝶の完成だ。
  「とても良くお似合いです!」
   そんな彼女にすぐに過ぎると言うほど賛辞の言葉を発したのは千鶴で、彼女の瞳はきらきらと輝いていた。
  「普段の恰好もとてもお似合いですけど、こちらも素敵です!」
  「ありがと、千鶴ちゃん」
  「お色もとても綺麗で……さんらしいですっ」
  「あはは、そんな褒められると照れちゃうよ」
  「お袖を腰で結んでいらっしゃるんですね」
  「うん。だらしないかもしれないけど、羽織邪魔でさ……ただでさえ下ろした髪も邪魔だって言うのに袖がぷらぷら揺れ
  るんじゃ戦いにくいったらないよ」
  千鶴同様に長い袖の羽織だったが、俊敏さを要求される彼女にとっては袖一つが命取りとなる。
  ということで、普段着ている着物同様に腰に纏める恰好となったのだ、が、

  「………」

  ふと、は千鶴以外の男連中が黙っている事に気付いて彼らを見た。
  彼らは揃ってこちらを見てはいる、けれど、その視線が注がれているのは一点だ。
  彼女の……腹。
  それも仕方のない事。青を基調とした彼女の中で、それは酷く映えて見えるのだ。
  白い、肌は。
  まあそうでなくとも見事に引き締まったそこは目に付くだろう。
  普段隠れている場所なれば、こそ、だ。

  「あ、えっと……」
  まじまじと凝視され流石のも見られる事が恥ずかしいのか、己の手で腹を隠す。
  「やっぱり、お腹出すのはまずかった?」
  見苦しいものを出してしまっただろうか……そんな事を考えた時、沖田がにこりと笑みを浮かべて言った。
  「お腹、冷やさないようにね」
  「誰が冷やすか!」
  「いやでも、その恰好は冷えるだろ」
  子供じゃ在るまいしと叫ぶ彼女に苦笑でそう言ったのは土方だ。
  「しかし、女子が身体を冷やすのは良くないと言う」
  真面目な顔で斎藤が言えば隣で、そうそう、と藤堂が同意を示す。
  「なんなら、一君から襟巻きとか借りておいたら?」
  「いや、それなら羽織を着る方が早いだろ」
  原田にまで苦笑で言われて、は些か不満げに自分の恰好を見下ろして呟く。
  「そんなに、お腹冷えそう?」
  ああ、冷えそうだ。

  そう口々にしながら、

  『あの腰、たまらん――!』

  それぞれがそんな下心いっぱいの感想を抱いていたなど、は知る由もない。


  何故人は山に登るのか、そこに山があるからさ


  誘惑には勝てないって事ですよ(≧∇≦)b