こめかみを汗が流れ落ちた。
冷たい空気に晒しているはずの身体は、だけどその寒さを感じないほどに熱い。
熱くて‥‥意識が朦朧とする。
そのくせに、
ちゅく、
と粘着質な音は耳にしっかり届いて嫌になる。
「んっ‥‥ぅっ‥‥」
羞恥に顔を真っ赤にし、千鶴は唇を噛みしめた。
ちり。
と胸が上下するたびに、素肌に触れる繊維の感触が、さらに欲を煽る。
無意識に足を広げれば、沖田はくすりと笑った。
「なんか、いつもよりえっちな感じだよね。」
彼女の格好を見て、からかうように呟く。
千鶴の身体は今、セーターで覆われている。
しかし、それはまくし上げられ、中途半端に胸を隠している状態だ。
シャツもブレザーも前を開けられ、ブラも取り去られている。
下に関しては何も身につけていない。
まるで素肌にセーターを着ている感じで、それはそれでいやらしいなと彼は思った。
しかも、そのセーターは自分のものだ。
なお卑猥に感じる。
なんて思いながら、沖田は指を蠢かす。
「んぁあっ!」
びくっと背が撓った。
いいところに当たったらしい。
思わず漏れた甘い声に、千鶴は慌てて口を手で覆う。
「そんな事しなくても誰も聞いてないって‥‥」
資料室に人が来る事など滅多にないのだから。
そう言うけれど、千鶴は口を覆ったまま首を横に振った。
「素直じゃないなぁ。」
いつもより余裕のない声で言うと、彼は早々に指を引き抜いた。
はやる気持ちのままに彼は繋がろうと自身を取り出す。
「ぁ、やだぁ‥‥」
恐れるみたいに千鶴は上へと逃れようとする。
簡単に押さえつけて、沖田はしなやかな足を抱えた。
なんともいやらしい格好をさせられて、嫌だと言うように彼女は首を振った。
「千鶴ちゃん、無駄な抵抗だって。」
君が僕に敵うはずがない。
高ぶりは、濡れそぼった入り口へと押し当てられる。
ぬめるそこはまるで吸い付くように先端を食み、
「っ――」
「君に気持ちいい事を教えてあげたのは僕なんだから――」
ぞくりと、
肌が粟立つほど妖艶な笑みに一瞬目を奪われた瞬間、
「ひぁ――!?」
楔は奥まで一気に差し込まれた。
さながら、息の根をとめるように。
「サイッコー‥‥」
強いくらいの締め付けに沖田は顔を顰める。
千鶴は、痛みと強すぎる快感に、傍にある沖田の首へ縋るしか出来ない。
「せ‥‥んぱっ‥‥」
「うん、すぐ動いてあげるから。」
「や、まだっ‥‥」
ずる。
「っ!」
喉の奥で悲鳴が弾ける。
無理矢理引きずられて、でも悔しいかなひどい仕打ちさえ快感と思える。
ああ、彼の言うとおり。
自分に快楽を植え付けたのは彼だった。
逃げられるはずもない。
これだけ、いいんだから。
「ん、ぁっ‥‥せんぱっ‥‥」
「千鶴ちゃん、先輩、禁止だって‥‥」
譫言のようなそれに、沖田は切なげに眉を寄せながら告げる。
「えっちのときは、僕の事、なんて呼ぶんだっけ?」
再度、深く貫き、耳に囁きながら奥を犯す。
ずくずくと遠慮無くかき回されて、千鶴は彼の背に爪を立てた。
あ、あ、とか細く聞こえる声がたまらなく可愛い。
目を細め沖田は、ねぇと甘ったるい声を零す。
「僕の事は、なんて呼ぶんだっけ?」
「ぁぁ‥‥は、やくっ‥‥」
「駄目、ちゃんと言わないとイかせてあげません。」
セーターの中に手を突っ込んで痛いくらいに立ち上がった胸の先端をつまむ。
きゅっとするだけで締め付けは強くなり、沖田は小さく呻いた。
「僕だって、つらいんだから‥‥っ。」
早く。
とせがむように彼は甘ったるい視線を送る。
その眼差しを受けて、千鶴は一瞬唇を噛みしめた。
「ね、呼んで。」
掠れた声が求めるように紡がれた。
まるでそれに誘われるみたいに、
「‥‥そう、じ‥‥さん‥‥」
唇から零れるのは彼の下の名前。
先輩ではなく。
名字ではなく。
彼が行為の最中に呼べと言うのは、彼の名。
「総司、さんっ‥‥総司、さっ‥‥」
何度も求めるように千鶴は呼ぶ。
甘い声が自分の名を呼ぶたびに、ぞくぞくと背中が震える。
「本当は、呼び捨てがいいんだけど‥‥」
くしゃ。
と沖田は顔を歪めて笑い、
でも、合格‥‥と彼は呟く。
――ぐじゅ――
「ぁあっ!!」
抽送が激しくなり、千鶴の声からは先ほどよりも大きな声が上がった。
ベッド代わりの机に押しつけて、小さな身体を何度も差し貫く。
涙で滲む視界に、余裕のない彼の顔が映っている。
そんな顔をさせているのが自分だと思うと、嬉しくてたまらない。
「そ‥‥じさっ‥‥」
「千鶴ちゃ‥‥千鶴っ‥‥」
忙しない息づかいが耳をくすぐる。
「‥‥そ、うじさ‥‥っ‥‥」
「っ、千鶴‥‥もうっ‥‥」
もう、と泣きそうな声で言って‥‥
楔は最後、
強く奥までねじ込まれた。
「つァ――!!」
一際甲高い声が千鶴の口から溢れる。
瞼の裏が白く弾けると共に、身体はびくっと震えて硬直する。
瞬間、
「っ!!」
苦しげな沖田の吐息と、
どくりと身体の奥に感じる熱い飛沫。
「は‥‥ぁ‥‥」
やがて、けだるさと共に身体はゆっくりと弛緩していく。
緩やかな締め付けを感じながら沖田はその内部に全てを注ぎ込むみたいに、身体を少し揺すった。
「ぁ、あっ‥‥」
そのリズムに合わせて千鶴の口から小さな声が漏れた。
愛情を全て彼女に注ぎ込んで、沖田はそっとその濡れた額に口づけを落とす。
それを合図にするように、
千鶴の瞳はゆっくりと閉じられた。
視覚的スイッチ
全容はこうなっていたという(苦笑)
|