しくじったとは思う。
  酔っ払いの介抱などしなければよかったと。
  自業自得なのだから、放っておけば良かった。

  そんな事を考えていると、

  ぐじゅ、

  「ふぁっ!」

  上の空だった自分を責めるかのように男の楔が奥まで差し込まれた。
  ぐ、と布団を握りしめ辛うじて声を上げるのを堪える。
  背後で忙しなく動く男から、強い酒のにおいがした。

  酔っ払いが‥‥

  は内心で呻き、だが、珍しく与えられる強引で強い快楽に、身体は素直に喜んだ。



  新選組、鬼の副長と呼ばれる土方歳三は‥‥
  その美しい顔立ち、厳しくも凛とした性格、そして腕っ節から考えられぬほど、
  酒に弱い男であった。
  彼ほど酒の似合う男はいないだろうに、残念ながら下戸と呼べるほど弱く‥‥また、酒癖の悪い男でもある。
  ぐだぐだと文句を言う絡み酒で、その対処にあたるのは副長助勤であるの役目であった。
  また、が酔った時に対処にあたるのも土方である。

  いつものように管を巻き始めたあたりでは土方の手を引き、別室に用意されていた部屋にやってきた。
  今日はここまでと彼を布団に寝かせ、そして寝息が聞こえた所で広間へと引き返す予定だったのだが、今日は彼の酔い方
  が違った。
  赤ら顔で明らかに酔った、据わった目のまま突然人を布団の上に引きたおした。
  遠慮無く引っ張られ顔面を布団にばふと押しつけられた女は、何が起きたのか一瞬分からなかった。
  どさと背中にいつもよりも高い体温と、酒の、彼の香のかおりを感じ、同時に下履きを引き下ろされた所で我に返ったが
  全てが後手に回っていた。

  気がつくと秘所を指で弄られ、3本の指が余裕で入るようになった頃、遠慮無く彼の雄で貫かれた。

  痛い、と抗議の声を上げたが酔っ払いには所詮聞こえてなどいない。

  いつもよりも性急な繋がり、そして性急に高みへと上り詰めようとする行動に、も追いつめられた。


  「んっ、はっ、ぁっ」

  ぐじゅぐじゅと男の楔がの感じる場所を擦ってくる。
  じんっと脳天まで痺れが走り、布団を握りしめる手に力がこもる。
  そうしたことで内部の雄を締め上げた。
  男の限界も、近い。
  びくんと震える感覚が段々と短くなり、同時に揺する動きが早くなってきた。

  「だす、ぞ」

  駄目、という間も与えずに、

  「――っ――」

  ぐんと奥まで乱暴に突き上げられ、は声にならぬ声を上げ、呆気なく達した。
  そして男もまた、
  女の中に精を吐き出す。

  どくっと内部で雄が震えるのと、そして暖かな水気が内部を浸していくのが分かる。

  は、と絶頂の余韻を味わいながらは荒い息を落ち着ける事だけを考えた。
  色々と考えると怒りがわき上がる。
  相手は酔っ払い。
  何を言ったところで無駄、なのである。
  勿論、土方は酔っていたとはいえ、意識はしっかりしている方である。
  聞けば記憶は残っているらしいから、話は通じるはず‥‥だが、今何かを言ったところで効果は半減するだろう。

  は覚えてろと思いながら、ぬるりと嫌な音を立て自身を抜いた男の下から這い出た。

  動くたびにどろ、と中から精が出てくる感覚に顔を顰めつつ、緩慢とした動きで布団の向こう、
  文机に寄りかかりそれに助けを借りてよいしょと身体を起こした。
  同時に、桜紙を取り、自身の秘所を拭う。

  普通これは男が始末してくれる事だろうに‥‥

  ああだから相手は酔っ払い、以下略、と考えながら二枚目の紙に手を伸ばしたとき、

  ぐ、
  とその身体を背後から抱きしめられた。

  酒と、そして彼の香りにどきりとした。

  そこは悲しいかな惚れた相手である。
  彼に抱きしめられればひどく幸せになり、満たされる。

  「‥‥」

  熱っぽく名を呼ばれ、うう、しまったと思いながらの怒りは霧散した。

  しかし、

  「‥‥っ!?」

  次の瞬間、ぐるりと勢いよく反転させられ、
  「うわっ!?」
  ずると身体を引っ張られ、慌てて文机に取り縋った。
  驚いて見れば目前には男が迫っていた。
  「ちょ、もう駄目だって!」
  ちゅと首筋に唇を落としてくる男をこれ以上は駄目だと押しのけようとする。
  実はこの後には仕事があるのだ。
  男の相手をしている暇はない。
  というか、これ以上何かをされたらおそらく足腰が立たなくなる。

  「土方さっ‥‥んんっー!?」

  ぐいと強く肩を押すが、男には対して効いていない。
  そればかりか、先ほど好き勝手に貫かれたそこに指を突き立ててきた。

  ぐじゅっと音を立て、中から精があふれ出す。

  「っぁ、だめっ‥‥そこ、さわらなっ‥‥」

  やめてと震える手で彼を押しのけようとした。
  どうにか鎮めたはずの熱が一気に膨れあがり、理性はじわりと蝕まれる。

  構わず男は指を根本まで一気に押し込み、その指先を鈎状にして、中に残った精をぐじゅぐじゅと音を立てて掻き出す。
  どろどろとしたそれはの太股を、そして敷布を濡らした。
  男に中に出されたものを掻き出される様は‥‥とんでもない羞恥を女に与える。
  それから、
  「や、やぁっ‥‥だ、だめ‥‥だめっ‥‥」
  掻き出すたびに指先が悪戯に壁を擦り、再び快楽を。
  男はそれを知って、にやりと笑みを浮かべながら女の感じる場所を爪の先で引っ掻いた。
  身体の奥から疼きが広がり、柔らかな肉は再び求めるように動き始める。
  腰の奥が熱くて‥‥もどかしい。
  もっとと腰を振ってしまいそうなのをは文机に爪を立てる事で堪えた。

  「んっ‥‥んんっ」

  じわりと浮かんだ涙が瞳を潤ませる。
  いつもは強い眼差しが快楽に濡れる様はいつ見ても興奮させられるものだと土方はぼんやり思った。

  「‥‥いい顔‥‥しやがる‥‥」

  土方は薄らと笑い、
  いつの間にか勃ちあがった雄をの濡れたそこへと宛った。

  「っひっ‥‥」
  また貫かれると思った瞬間、の身体はびくりと震えた。
  しかし、男は楔を穿たず、その代わりに、

  ずる、

  とそこに擦りつけるように腰を揺らした。

  にゅるっと滑る熱い肉の茎は、の脚の間を何度も往復する。
  の柔らかな襞で、何度も包むように。

  「ッ〜〜!!」

  これはこれでたまらない。

  自分の脚の間を男のそれが何度も前後するのは、見ているだけでものすごく卑猥だ。
  視覚的に犯されながら、時折それが花芽を擦るのが厄介だった。
  びりっと小さな電流がそこから走り、の秘所はひくんと収縮を繰り返す。
  それが棹に吸い付くのだろう。
  まるで唇を寄せて強く吸われるような感覚に、どくんと雄は震え、また大きくなる様を見せつけられた。

  その様子には恥辱に顔を歪ませて視線を背ける。
  男の方はそんな彼女に悪戯心が疼いて仕方がない。

  「ゃ、やだもうっ‥‥」

  ずりとは逃げるように膝を立て、上へとせり上がろうとする。
  それをやんわりと膝頭を押さえて捕らえ、蜜でべたべたに濡れた自身をそこから離した。
  そうして、

  「んっ、ィ‥‥」

  腰を一度落とし、先端を入り口に宛う。
  再度の挿入には息を吐いた。
  来る、
  と構えていると、殊更ゆっくりと楔が打ち込まれる。

  「ぁ‥‥はっ、ぁああ‥‥」

  ずぶずぶと虫が這うような速度で。

  じれったさに腰が揺れた。
  中途半端に煽られた身体には、苦痛でしかなかった。

  は濡れた瞳を彼に向けて、

  「ね‥‥はやく‥‥」

  と強請ってしまう。
  この時にはとうに理性は砕け、どこぞへと消えてしまっていた。

  「なんだ、さっきまで嫌がってたくせに‥‥」
  「だ、だって‥‥ぁっ‥‥それじゃっ‥‥」
  「達けねえ、か?」
  「あっ――」

  ぐり、と腰を上に突き上げるように動かされ、恥骨の裏を抉られる。
  そこがの一番感じる場所で、無遠慮に亀頭で擦られたは甲高い嬌声を放ち、びくっと背を撓らせきつく雄を締め上げた。

  「や、そこっ‥‥」
  「悦いか?」
  「ん、もっ‥‥もっと‥‥」

  望むままにと男は両の膝頭を押さえ、ぐんぐんっと何度もその場所を突き上げてくる。
  はしたなくも脚を広げた女は高くまた声を上げ、快楽に溢れた涙を零した。
  その刺激でゆらゆらと、細腰が艶めかしく揺れる。

  なんともいやらしい光景だと男は思った。

  この顔をずっともっと見ていたいとも。

  やがて何を思ったか、

  「え‥‥うわっ!?」

  突然人の手を引いたかと思うと背後にどさっと倒れ込む。
  その反動でずぐんっと奥を強く突かれては唇を噛んだ。
  破られるかと思った。
  身体の奥から。

  「‥‥い、いったいなにす‥‥」

  は咎めるように犯人を見る。
  その時になって、気付いた。

  「‥‥あ、あれ?」

  自分を見上げる紫紺の瞳。
  つまりは自分が見下ろしている。
  今だ身体は繋がったままで、見下ろしているわけで。

  つまり‥‥

  「っ!?」

  は思わず声を上げそうになった。

  この体位は自分が上に乗っている状態、つまりは騎乗の恰好である。
  男という馬の上に乗る、騎乗の恰好。
  そうすると必然、女が動かなくてはいけない状態になり、

  「や、やです!絶対嫌!!」

  は慌てて身体を起こした。
  しかし男がそう容易く逃がしてくれるはずもなく、
  大きな掌で両の太股を押さえつけられる。
  そればかりではなく、

  「ぁうっ」

  腰を軽く突き上げて女の中を擦った。

  途端唇からは甘ったるい声が漏れ、瞳は欲に支配される。

  この卑怯者と罵りたくてもうっかり開けば彼が望む声を漏らしてしまうばかりだ。

  「や、っだ‥‥」

  奥まで穿たれたまま小刻みに腰を揺すられては堪らない。
  身体を支えていられずに逞しい男の胸に崩れ落ちる。

  「やだ‥‥この体勢‥‥」

  「嫌なら、そのままでいればいい。」

  男はにやにやと笑ったままそう告げる。
  そうして太股から手を伸ばして胸へと寄せると、自分の胸にぴったりと合わせられているその頂きをきゅうと強く摘んだ。

  「ひっ!?」

  途端、ぎゅうっと女の中が締まる。
  はそこが弱い。

  「や、いや‥‥いたいっ」

  きゅ、きゅ、と些か強めに摘むと彼女は痛いと涙を零した。
  しかし相反するように彼女の中はきつく締まって、それが善いのだと男に知らしめた。

  「おまえが‥‥動かねえからっ‥‥こうしてるんだろ?」
  ああいい締まり具合だと土方は薄らと笑みを浮かべる。
  なんて言いぐさだ。
  は内心で憤慨した。
  が、強く摘まれれば摘まれるほど、は知らず腰が揺れていくのが分かった。

  「あ、あっ」
  たぷ、と豊かな胸を震わせ、腰がくねる。
  そんな自分の淫らな行為に唇を噛みしめ、泣きそうな顔になる。
  その顔が堪らない。
  もっと‥‥見たくなる。

  「もう、いやっ――!」

  その手から逃れるように彼女が身体を起こせば、これは好都合とその手を下に伸ばす。
  手は迷わず二人の繋がった場所へと向かって、
  何をされるのか瞬時に悟ったものの逃げることは叶わず、男の長い指にどこよりも敏感な花芽を捕らえられた。

  「ひぁあ――!」

  皮を剥いて赤く腫れたそれを爪の先で擽るように撫でる。
  途端、きゅうとの中は締まり、腰が先ほどよりも大胆に動いた。
  それは男にも、女にも強い快楽を与えた。
  堪えられない‥‥快感だ。

  「んんっ‥‥」

  は色っぽい溜息を漏らすとべたりと男の逞しい腹に手を着いた。
  涙に濡れた瞳を向ければ、彼は笑っていた。
  余裕のない顔で。
  笑って、

  「どうする?」

  と訊ねてくる。

  このままされるまま、彼にいいようにされるか‥‥
  それとも自分が望むように快楽を得るか。

  どちらにせよ彼を喜ばせることになるだけじゃないかとは分かっていたが、

  「っつ‥‥」

  は唇を噛みしめると下腹に力を入れて、
  ゆさと身体を揺すり始めた。

  されるがままなんて‥‥冗談じゃない。

  そう、思った。

  「ん‥‥くぅっ‥‥」

  唇を噛みしめて、下肢に力を入れて抜き差しを繰り返す。
  そうすれば男はくっと小さく呻いた。
  入り口がひどく締まって‥‥まるで搾り取られるかのようだった。

  「‥‥いい、ぜ。」
  きつくて‥‥引きちぎられそうだと彼は眉を寄せながら呟く。
  そうしながら

  「んぁあアっ――!!」

  が腰を下ろすのを見越して、強く、最奥を突けば更に締まりがきつくなり、女の動きが激しくなった。

  「んっ、んんっ‥‥ぁあ‥‥」

  きつく唇を噛みしめながら、男の上で踊る。
  その動きに合わせて、豊かな胸が重たげに揺れていた。
  そのまま引きちぎられてしまいそうで‥‥は己の両手でしっかりと挟んで固定し、身体を揺すり続ける。

  「たまんねえな‥‥」

  涙でぼやける視界に‥‥男が切なげに目を細めるのが見えた。

  そうして伸びた手が太股をしっかりと押さえ、男に激しく突き上げられた。

  何もかもが分からなくなり、ただただ快楽に身を委ね‥‥激流に流される。
  やがて、男が二度目の精を吐き出した頃‥‥の意識は真っ白く塗りつぶされて‥‥落ちた。


酒はんでもまれるな



翌日ぐちぐちと文句を言われて凹む副長。