昔々、あるところに、とても可愛い女の子がいました。
おばあさんに作ってもらった赤いずきんがトレードマークの彼女は、赤ずきん、と呼ばれています。
しかして、その本名は『』という女の子らしくない名前だったのです。
「人の名前にケチつけるのやめてくれるかなぁ?」
‥‥す、すいません。あの、言い過ぎました。
なので、刀をこっちに向けるのやめてください‥‥
「分かってくれてありがとう」
(相変わらず恐ろしい奴だな‥‥こいつ)
「ほらほら、早く進めて」
了解。
ある日、赤ずきんは母親に守りの中のおばあさんの元へとおつかいを頼まれました。
病気になったおばあさんにケーキとブドウ酒を持って言って欲しいというのです。
赤ずきんはお安い御用だと頷きました。
しかし、お母さんは赤ずきんに一人で森に行かせるのが心配でたまりません。何故なら森の中にはこわーい狼がいたのです。
「いいですか? くれぐれも寄り道などされませんように。それから、危ないと思ったらすぐに戻ってきてくださいね」
「山崎さ‥‥じゃなかったお母さん。大丈夫だって。もう子供じゃないんだし、いざとなったら‥‥これがあるし」
赤ずきんは笑って、腰に差した刀を撫でてみせます。
「‥‥確かにさんはお強いでしょうが‥‥狼を侮ってはいけません。ああ、やっぱり俺も一緒に‥‥」
心配性名お母さんに、赤ずきんは笑って「大丈夫だ」と言うと、彼が同行すると言い出す前に家を飛び出してしまいました。
「それじゃ、いってきまーす」
「いけません、さん! 走ると危ないです! ケーキが!」
「それでこそ新選組の一員だね、山崎さん‥‥」
おばあさんの家まではここから歩いて三時間の所にありました。
「え? 物語じゃもっと近くなかった?」
本当は三十分だけど、それじゃおまえソッコーで届けて帰るつもりだろ?
「もちろん」
だから三時間。
それにこれくらい時間稼がないと狼の出番ないでしょ。
「仕方ないなぁ‥‥で、三時間だっけ? 歩けばいいの?」
歩いて。
「へいへーい」
と言う事で、赤ずきんは森の中を歩きました。
「ちなみに花は摘まないからね」
ああ、蝶々がいるからね‥‥
「‥‥‥‥」
失言でした。刀は抜かないでください。
「お、いいところに‥‥」
そこへ、突然狼が現れました。
「よ」
気さくな挨拶です。まるで肉食動物とは思えない気さくさです。おまけに爽やかです。
「左之さ‥‥じゃなかった、狼さん」
「よお、赤ずきん。今から出掛けるのか?」
「はい。ちょっとおばあさんの所まで‥‥左之さんはどこまで?」
「んー、いやおまえを食いに」
はいそこ、正直に話しすぎです
「でもなあ、俺嘘苦手だし‥‥」
おまけに左之さんが言うとエロイです
「さすが歩く18禁‥‥」
「なんだよ、そりゃ」
とにかく、左之さ‥‥じゃなかった狼さん、ちょっとは演技してください。
「演技‥‥ってもなぁ‥‥やっぱり男は正々堂々といかねえと、だろ?」
そりゃあんたはそうでしょうが進行上そう言うわけにもいかないですから‥‥
「ってことで、。いっちょ食われてくれ」
「食‥‥って、にぎゃああああ!?」
聞けや、この歩く猥褻物!!
「なんか、食うって言うか、食われてる気分になるよな」
「な‥‥に、いっ‥‥ぁ、だめっ、揺すら、な‥‥でっ」
「くっ、そ‥‥やっぱり食われてる気分だろ。こんな、締め付けて‥‥っは」
「あ、あぅっ、くるしっ‥‥や、ン‥‥だめ、だめっ、も‥‥イッ‥‥っちゃ‥‥」
こうして、赤ずきんは狼においしく食べられてしまいました。
‥‥って話変わっちゃうな、これ‥‥
「ひ、ひどいぃ‥‥」
しくしくと泣きながら赤ずきんは脱がされた服を身につけます。
「見て見ぬ振りするとか、ひどい‥‥」
ストーリーテラーですから、何も出来ません。
とりあえず見ない振りしてあげたんだから機嫌直せよ。
「直せるか! しかも左之さんは左之さんで、どっかにいっちゃうし!!」
ヤリ逃げ? 左之さんらしくないなぁ‥‥
あ、あれじゃない?
ちゃんと進行させるためにおばあさんの家に行ったんじゃない?
「あの人は更に私を食うつもりか!?」
鬼だ、と嘆く赤ずきん。
いや、彼は鬼ではなく狼です。
さてさて、どうにかこうにか身支度を整え、歩き出した赤ずきん。
引き倒された時に落としたバスケットの中身が非常に気になる所ですが‥‥ここは見なかった事にしましょう。
アレの後なので、三時間は可哀想と言う事であっという間におばあさんの家に到着しました。
「‥‥‥」
だ、だから、私に久遠を向けるな!
悪いのは見事CEROをCに引き上げた原田左之助のせいだから!
「いや、CEROは左之さんのせいじゃないでしょ‥‥ああ、まあいいや」
投げやりに言って、赤ずきんはドアを開けます。
「だぁから、てめえはノックしてから入れって散々言ってるだろうが!」
開けた瞬間、おばあさんの声が飛んできました。
「‥‥あれ? 土方さん‥‥じゃなかったおばあさん‥‥?」
ベッドにどっかりと腰を下ろしたおばあさんは、赤ずきんの呼びかけに不機嫌そうになんだと応えました。
「あれ? 狼に食べられたんじゃないの?」
「阿呆、俺が狼ごときに遅れを取るかってんだよ」
いやいや、それでは話が繋がりません。
狼に食べられといてくださいよ、土方さん。
「断る。野郎に食われるなんぞ死んでもごめんだ」
「‥‥そりゃそうかもしれないけどさー‥‥ここは進行上、仕方ないって事で‥‥」
「んな事俺が知るか」
相変わらず俺様です。流石鬼の副長様。物語がどうなろうと知っちゃこっちゃないと言わんばかりです。
これは二度続けて女役をさせられた仕返しなのでしょうか?
女々しいぞ、土方歳三。
「ぶった切るぞてめえ」
「私としては、その意見に賛成なんですけどね」
うわ、結託したよ。流石漫才コンビ。
息がピッタリだな。
「、あの馬鹿はほっとけ」
「ですねぇ‥‥」
さーせんした! 放置プレイは若干寂しいので構ってください。
「ところで、赤ずきんよぉ‥‥」
「はい、なんでしょ?」
「おまえ、俺の見舞いに来てくれたんだってな?」
「ああ、元気そうですけど、一応お見舞いに‥‥」
どがしゃとテーブルの上に置いたバスケットから赤い液体が漏れています。
恐らくブドウ酒です。開けたら悲惨な状態になっているのでしょう。
それに気付いているのかそれとも見ない振りをしているのか、おばあさんは目もくれずに赤ずきんに詰め寄りました。
「あ、あの‥‥土方さん?」
「なあ、赤ずきん‥‥」
壁に追い込まれ、赤ずきんは青ざめます。
おばあさんの目は完全に据わっていました。
「おまえ、どうしてここのボタンが掛け違ってんだ?」
洋服のボタンが掛け違っている事を指摘すると赤ずきんは慌てました。
「あ、いや、これは‥‥その、急いでたからっ」
「ほーぅ。それじゃあなんで走ってもいねえはずなのに、そんなに汗を掻いてるんだ?」
「き、今日は、暑かったからっ」
「そうか‥‥」
じゃあ、とおばあさんの瞳がぎらりと光りました。
「なんで、他の男のにおいをさせてんだ?」
次の瞬間、
おばあさんの皮を破って飛び出したのは、怖いこわーい狼だったのでした。
「このやろっ、俺以外に抱かれやがって!」
「わ、私のせいじゃ‥‥なっ」
「口答えすんな」
「ひ、ぁあっっ!」
悪い子にはお仕置き、とばかりにおばあさんは強く深く突き上げます。
赤ずきんは泣きました。泣きながら許してと言いました。
ですが、おばあさんは許しませんでした。
何度も何度も赤ずきんの身体を揺すって、何度も何度も吐き出しました。
「もう二度と‥‥他の男に抱かれたいなんて思えねえようにしてやるよ」
抱かれたかったわけじゃないという赤ずきんの言葉は、華麗にスルーされましたとさ‥‥
「‥‥‥」
おっと、忘れていました。
赤ずきんになくてはならない正義の味方、猟師さんの登場です。
猟師さんは家の外で固まっています。
それもそのはず、中からは童話では絶対にありえないエロスな声が聞こえてくるのですから。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
猟師さんは真っ赤なまま凍り付いています。
オレはどうすれば? と言いたげな目をしながら。
とりあえず、
乱入してみては?
「殺されるだろ!!」
狼に気をつけて
童話コメディ第二弾。
すいません!本当に色々すいません!
でも楽しかったです←自己満足か
結局赤ずきんは一個もいい事がなかった‥‥
というお話ですね☆
平助にももうちょっと出番をあげたかった!
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