「おい、買い食い禁止だって言ってんだろ。」

  コンビニ袋を手にやってきたたちに土方は顔を顰める。
  教師らしい一言に、いやだなとは笑った。

  「買い食いじゃないです。」
  「差し入れなんですよ。」

  にこにこと笑顔で答えるのは千鶴だ。

  「差し入れ?誰から?」

  嬉しそうな笑顔を向けられ、僅かに目元を柔らかくしながら追求したのは沖田。
  変な人間からの差し入れなら即座にそれを没収しようと言うのだろう。

  「永倉先生。
  文化祭の準備してたら、お腹空いてるだろー?って‥‥」
  「‥‥へえ、新八さん、生徒に差し入れするお金はあるんだ。」
  「いや、それくらいはあるだろ。」
  沖田の呟きに土方はそれくらいは持ってるだろうと答える。
  ついこの間競馬で惨敗したと言って原田に金を借りていたような気がするが‥‥たかだか、数百円だ。
  それくらい持っていないと、ちょっと、いや、かなり情けない。

  「で、何を差し入れてもらったの?」
  「ええと‥‥」

  がさごそと袋を開け、はひょいと伸びた棒を掴んで取りだした。

  「フランクフルト!」

  しかも、ジャンボフランク。
  直径が3センチの大きさが売りの商品だ。
  おそらく自分が食べたかったものを買ったのだろうが‥‥よりによってなんでそれを女子に渡すんだと、土方は内心呟く。
  ほら、女子は甘い物がすきなんだからそっちを選ぶべきで‥‥
  断じて邪推したわけではない。

  「千鶴ちゃん、ケチャップはつける?」
  そんな土方の内心など知らず、と千鶴は嬉しそうにケチャップを取りだして、油で光るフランクフルトの上にとろー
  っと垂らす。

  「それじゃ、いただきます。」
  「‥‥いただきます。」

  二人は揃って、ぱくっと齧り付いた。

  口の中に赤いケチャップつきのフランクフルトが吸い込まれて、消える。

  土方も沖田も、二人の口元を凝視してしまった。

  「あれですよね‥‥昔、ほら、中学生の時とかに、フランクフルト咥えてる女の子見ると男子が騒ぎましたよね。」
  「あー、馬鹿だったな、あれは。」
  「土方さんもそういうのやったんですか?」
  「いや、俺は見てた。」

  あの時は、食い物をなんてものに見立てやがるんだと思った物だ、と彼は言う。
  そうですよねと沖田は苦笑で肩を竦める。

  「そもそもあんな色してないし。」
  「‥‥そこかよ‥‥」
  「それに僕のあんなに細くない。」
  「‥‥‥‥‥‥‥」

  女子二人が聞いたらさぞ憤慨しただろう。
  そんなことを言われたら二度と食べられないじゃないか、と。

  「わ、ケチャップ垂れた!」
  「さん裏側に垂れてます!」

  危ないと言いたげには囓ったフランクフルトから口を離し、零れたケチャップを追いかけて舌を這わせる。
  それはただ、ケチャップを舐め取っただけなのだ。
  しかし、

  「‥‥わ、卑猥。」

  俺もそう思っちまった――

  沖田の一言に土方は内心で答える。

  ぺろっと赤い舌を這わせてケチャップを舐め取る姿は、なんというか、すごく卑猥に感じた。
  ああ駄目だ。
  隣の男に毒されて彼が手にしているものが男のそれに見えたのかも知れない。
  違う違う、あれは食べ物だ。
  食べ物なのだ。

  「‥‥んー、おいひい。」
  「私、フランクフルト久しぶりに食べました。」
  「私も。」

  ぱくっともう一度二人はそれに食らい付く。

  唇を油でてらてらと光らせながら、それはそれは嬉しそうな顔で。


  「僕も咥えられたーい。」
  「おまえ‥‥マジで黙れ。」



  そんな二人の横で男二人が邪な事を考えていた‥‥などと二人が知るよしもない。


  ネタは中学生




  ほんと中学生レベルですいません。
  仕事の休憩中に同僚と話をしていたら浮かんだ
  ネタです←最低