「えっと‥‥ここをこう、で‥‥」
彼女は独り言を呟きながらネクタイと格闘している。
やけに真剣な顔だった。
まるで、大きな仕事を前にでもするかのように、
真剣な面持ちで彼女はネクタイと格闘していた。
人のネクタイを結ぶのは自分で結ぶよりも難しい。
日常的に結ばない彼女にとっては特に。
おまけに、彼女はちょっとばかり不器用だ。
ネクタイ一つを結ぶのに実はすでに5分も経過している。
何度も結んでは結び方を間違えているのに気付いてほどく。
ほどいては先ほどとは違う方法でやって、また間違っていることにきづいて、の繰り返しだ。
よくネクタイ一つでそんなにムキになれるもんだ‥‥
「」
「ま、待ってください!」
そんな彼女に話しかけると必死の形相で待ってくれと頼まれた。
必死で訴えなくても首くらいかしてやる。
練習ならば何度でもすればいい。
ただ、
「ええっと、これを‥‥こうで‥‥」
ネクタイに必死になるあまりに俺におざなりにはなってもらいたくない。
「ここを、こう‥‥」
だって気付いてねえだろ?
俺が悪戯をしかけていることに。
気付いてねえだろ?
ブラウスのボタンを一つ一つ、俺に外されている事に。
いつもなら飛んでくる恥ずかしそうな怒鳴り声だって今日は上げない。
ネクタイにご執心、だからだ。
それは、俺よりそいつに夢中って感じで、癪だ。
「で‥‥きた!!」
俺の手が最後の一つを外すのと同時には俺のネクタイを結ぶ。
「上出来じゃねえか」
誉めてやると嬉しそうに笑った。
その顔が、たまらなく愛おしい。
「‥‥?」
そしてその愛おしい顔が不思議そうな表情になって、
「っ!?」
漸く、気付く。
俺の仕掛けた悪戯に。
でも、その時はもう遅い。
「ひ、土方さん!何してるんですか!?」
「おまえな、前も同じようにボタン外されたってのに無防備すぎ」
「無防備って‥‥一生懸命ネクタイを結んでたのに!!」
「ありがとな。
だから俺も礼として‥‥だな」
手を滑らせてブラウスの下に潜り込ませる。
密着するとがぎょっとするのが分かったが,それよりも前に指先で少し弄ればぱちんと戒めが緩む音がした。
なんだかネクタイを解くのと同じくらい、興奮する音だ。
「や、ちょっ‥‥」
は狼狽する。
俺は構わず鼻先を緩んだブラの上からその谷間に押しつけてにやりと笑った。
「安心しろ。
他の事なんかぶっ飛ぶくらいにヨくしてやるからな」
俺の事しか、考えられないように――
そう告げればは「俺のためなのに」と泣きながら訴えるのだった。
ネクタイよりも俺に構ってくれないか
ネクタイ別バージョン。
ネクタイにばっかりご執心だったのでちょっと
拗ねてみた土方部長のお話。
駄目だこの人、私が書くと駄目上司だ(笑)
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