突然ですが、
頭から耳が生えました。
「なんじゃ、そりゃああああ!!」
突然すぎて絶叫したくなります。
いえ、絶叫というか、絶望したくなります。
そりゃそうだ。
朝目が覚めて、なんか頭が痒いなぁって思って触ったらやたらもふっと……こう、もふっていう表現がしっくりくる何かが頭から生えていて、しかも、それはやたら長い……耳だったんだから。
「兎?」
ああそう、それ。
総司の言葉に私は頷く。
多分それだ。兎に違いない。
その兎耳が私の頭から生えていた。
どう? 絶望したくならない?
「似合わないから?」
そう! って総司違う!
そりゃ似合わなさすぎて鏡見た瞬間に恐怖さえしたけれど、それとは違う。
まあ確かにこういうのは可愛い子についてる方が良いとは思うけれど……
「お似合いです……」
きらきらと、恍惚とした表情で千鶴ちゃんに言われ、私は沈黙する。
嬉しいんだか、複雑なんだか、よく分からない。
いや、だから、千鶴ちゃん、そんなきらきらした目で私を見ない!!
「恥ずかしがるさんも可愛いです!」
何この子どうしちゃったの! 総司に感化された!?
いやいやいや、そうじゃなくて。
私が絶望したのは、そういう「あり得ないもの」が頭に生えていたという事実だ。
こんな格好じゃ外に出る事も出来ない。
出たらきっと見せ物小屋行きだぜ、ははは。
「きっと、引っ張りだこでしょうね」
その元凶である山南さんがにこにこと笑いながら言った。斬るぞ、こんちくしょう。
そう、私をこんなけったいな姿にしたのは彼、山南さんの仕業である。
どうやら幕府の伝手でもらった秘薬を私に試したそうなんだけど。
なんで、私!?
もっと他に良い人材あるじゃない?
新八さんとか、平助とか……
「ああそれは、女性にしか効かない薬なんですよ」
しれっと山南さんは言う。
だから、私だと?
あんた……私の事を家族のように大事に思ってるとか言ってなかったっけか?
家族にあんたはそんな危ない薬を飲ませるのか?
家族は実験動物以下ですか!?
「総長、して、その効能は?」
こらこらこら、現実逃避すんな、山崎さん。
あんた新選組唯一の良心だろうが。普通ここは怒って「何やってんですか?」とか言うところじゃないの?
どんだけ混乱してんのさ。
しかもあんた一切私を目を合わさないだろう。
そんなに似合わないか? 似合わないのは分かってるけど、そう露骨だと私も傷つくぞー
「耳が良くなります」
それだけかい!?
「耳が良くなれば、敵の襲撃をいち早く察知できます」
「それは素晴らしい!」
やまざきー!!
あんた本当に大丈夫!?
ちょっと混乱しすぎて頭いっちゃってない!?
「……山南さん……もしかして、疲れてねえか?」
些か呆れたように呟いたのは左之さんだった。
山南さんは、彼の問いににこりと笑って、こう答えた。
「少し、暇だったので……」
どうやら、私は彼の暇つぶしの為に、兎耳を生やされたらしい。
「とりあえずそんな無様な格好を他の隊士に見せるわけにはいかねえ。ってことで、、てめえは暫く隠れてろ」
無茶苦茶だけど正論な副長の一言で、私の当面の謹慎というのが決まった。
分かってるけど自室に籠もってるのは嫌だと声高に叫べば、
「じゃあ、幹部の誰かに相手にしてもらえ」
なんて面倒くさそうに言われてしまったので、責任は彼に取って貰う事にした。
「ったく、なんで俺の部屋なんだよ……」
「言い出しっぺだから」
ぶつくさと文句を言う土方さんに、あっさりと言ってのける。
今日も今日とて多忙な副長様は、机の上に書類をたっぷりと積み上げていた。
それの相手もしつつ、私の相手もするのは大変だろう。
「あ、お構いなく」
「お構いなくって……てめえは何家捜ししようとしてんだよ」
土方さんの邪魔にならないように、と私は物音一つ立てないようにして彼の荷物を探った。
それは彼に見抜かれていたようだ。
「え? 春本とか?」
「ねえよ! 馬鹿野郎! 新八と一緒にすんな!」
「えー……新八さんって春本なんて持ってんの?」
「知るか!」
持っていそうだから言ったのか、なんて無責任な。
後で新八さんに言いつけちゃうんだから。
「ったく……頼むから大人しくしてろよ」
「ふぇーい」
ほとほと疲れ切った声で言われて一応返事だけはしておく。
とは言っても大人しくってどうやったらできんのかね?
私は動き回る方が得意だからどうにもじっとしてるのは性に合わない。と、向けられた拾い背中を見て、
「………何やってんだ?」
思わず自分でも驚きの行動に出てしまって、私はしてしまってから、ええと、と戸惑いの声を上げる。
「いや、自分でもどうしてだか分からないんですが……」
気付いたら、飛びついてしまっていたのだ。
彼の、背中に。
こう、抱きつくみたいに。
「……」
土方さんはぐるりと肩ごしに私を振り返り、睨み付ける。仕事の邪魔をすんな、とかそんな事を言われるんだろう。
ごめんなさい。そんなつもりはないんです。
なので、拳骨は勘弁……
「………」
「………?」
しかしどういう事だろう。
土方さんは振り返ったまま、動かない。喋りもしない。
ただ、私をじっと見つめたまま、固まっている。
おや? どうしたんだろう?
もしや、忙しすぎて燃料切れ……
「土方さん?」
大丈夫ですか?
そう、私が口を開いたその時だった。
力任せに、強引に引きはがされた。
この流れは拳骨だ。構えるように目を瞑り、痛みを待っていると、
だん、
と大きな音が立ち、予想外の場所に痛みが走った。背中だった。
一瞬息が止まり、けほ、と咳き込む。
だけどどういう事だろう?
咳き込んだはずなのに音が出ない。
いや、出ないのは音だけじゃなくて、私は呼吸もろくにできなくて……
あれれ?
なんか……唇が、塞がれてない?
なに、この、暖かくて、柔らかい……
え?
え?
ばちりと目を開ければ目の前に整った土方さんの顔が。
なんでこんなに近いのかと私が考えを巡らすよりも前に、開いた唇の隙間から何かが飛び込んできて、
「ん、うぅっ!?」
私の思考は一瞬にして、彼の舌に絡め取られた。
ふ、ふ、と荒い呼吸が耳につく。
私のものではなかった。
それは、土方さんのもので、彼は何故か、妙に興奮していると言うのが分かった。
いつも涼しい顔をしている彼らしくもない、男臭い、荒っぽい呼吸。
彼は異様に興奮していた。
何故に? どうして?
意味が分からなかった。
「あ、や、やだっ」
くちゅくちゅと、濡れた音をさせながら彼の指が私の膣を出入りする。
突然の事に頭はついていけないけど、身体はすっかり彼の手に順応して、貪欲に快楽に食らい付いている。
「ひ、んぁあっ」
長い指がざらついた壁を引っ掻く。
途端焼き切れてしまいそうな気持ちよさに腰がびくんと震え、まるで腰の骨が砕けてしまったかのようにとすんと力を失って私は畳の上にへたり込んだ。
荒い息が耳に掛かる。
頭に生えた耳の方。
その耳は音にも、それから感触にも敏感らしい。
熱い吐息にぞわりと腰が震え、私は喉を晒して一人馬鹿みたいに感じてしまった。
「尻……」
「は……は、ぇ……?」
背後から抱きしめるように、私の膣と乳首を弄っていた彼は掠れた声で告げた。
「尻、上げろ」
ごそごそと衣擦れの音が聞こえる。
それはなんだっけか? と鈍い思考を巡らせているとお尻の間にぺたりと、こう形容しがたい人肌よりも熱い何かが触れ、私はぎょっとした。
彼はそれを、中に挿れるつもりなんだ。
ここで。
屯所の中で。
いやいや、それはまずい。
今だって十分あり得ないまずい状況だけど、これ以上は本格的にやばい。
だって、今の所辛うじて声を堪えられてるけど、挿れられたら抑える自信なんてないもん。
「だだだ、駄目! それは駄目!」
「っ、ここまできて往生際が悪ぃぞ」
土方さんは暴れる私に不機嫌そうな声で言った。
ここまで来てって……勝手に進めたのあんたでしょうが! 私はもう気付いたらこの状況で……って、ここまで私も楽しんでいたのは認めますけど!!
「駄目! 本当に駄目だってば!」
私は身を捩り、彼の下で抵抗する。
無防備に背を向ける事はなんとか免れたものの、逃がすかと押さえつけられ、私は横向きのまま身動きが取れなくなった。
そんな私に、彼はち、と舌打ちを一つし、
「え……」
ぐいと、私の片方の脚を掴み上げる。
そうして強引に開いた脚の間に自分の脚を差し込み、膝を着いて、私の片脚を封じる。
脚が交錯し、私は逃げる事は出来ない。
だけど一体これで何を……
土方さんがふ、と笑うのが分かった。
彼は、片脚を高く抱え上げ、
――ぬるり――
「あ、ぁあっ――」
無防備な私の蜜口に、性器を押し当て、一気に貫いたのだ。
「っは、こいつは……いつもと違う場所に当たっていいな」
奥まで一気に挿入すると、彼は低く獰猛な笑みを漏らし、ゆったりと腰を引いた。
せり上がった亀頭がいつもとは違う場所を抉る。
体勢のせいもあって、きつくしまった膣は、その動きをまざまざと感じる羽目になり、私は喉を晒して喘ぐしかなかった。
「あ、だ、だめぇっ……これ、や、あんっ」
びくびくと身体を震わせながら繋がった場所へと手を伸ばす。
制止を訴えたかったのか、だけど、繋がった場所に触れた瞬間、埋め込まれる陰茎の大きさに驚いて手を引いてしまった。
「や、ひぅっ……そこ、や、やぁあん!」
「おい、、あんまでけえ声出したら……バレっちまうだろうが……」
そう言いながら土方さんは動きを止めてくれない。
それどころか、私が乱れれば乱れるほど、動きは激しく大胆になり、当然私の声も大きくなる。
「だ、だめ、声、声っ」
「塞いでほしいか?」
「ん、んんっ」
唇を噛みしめてこくこくと頷くのに、土方さんはにやにやと笑うだけで塞いでくれない。
「ひじかた、さ……ぁっ」
「お願い、したら、塞いでやるよ」
涙目で見あげればそんな意地の悪い言葉が降ってくる。
いつもならば誰がするかと反論して、結果散々甚振られて泣かされる羽目になって、彼の言うとおりにさせられるんだけど、今日はそんな意地も張らなかった。余裕が無かったからだ。本当に。
「お、お願い、しますっ」
「ったく、おまえは本当に可愛いな」
仕方ないと言いながら嬉しそうな彼は、不自由に顔を捻る私の唇を塞ぎ、そのまま奥まった場所をしつこく突いた。
じわじわと奥から漏れるような感覚に身体がぶるりと震える。
痙攣するお尻に、彼の袋がぺちぺちと当たる感触がなんとも言えず……その卑猥さに更に私の興奮は高まり、畳に爪を立て、私はくぐもった悲鳴を彼の口の中へとぶちまけた。
「っ――」
どくん、と熱が爆ぜる。
身体の奥に土方さんの精が吐き出され、とろとろと私の中を満たしていく。
時折強く膣を叩く射精の勢いに、微かに痙攣をしつつ、ゆっくりと唇が離れた。
私を見下ろす紫紺は、呆けた表情で見上げる私を見て、一言、
「悪い――」
あれ? どうして?
謝った癖に中に埋まったものが大きく膨らんで……
「ああ、きっと兎の特性でしょうね」
山南さんはなんてことないと言いたげに口を開く。
どういう事? と首を捻り訝る私は彼の言いたい事が分からない。
だって私は兎の事を詳しく知らないからだ。
彼は怪しげな薬を混ぜ合わせながら、
「兎というのは、非常に繁殖能力の高い生き物でして……」
とおっとりと焦れったいまでの口調で言葉を連ねた。
「いつどこで補食されるか分からない弱いものですから、きっと子孫を絶やさない為にいつでも子が宿せるようになっているんでしょう」
「……ほうほう、して、それが一体何か関係あるんですか?」
答えが早急に欲しい私はちょっと苛立って、言葉を返した。
山南さんはにこり、と笑い、私を振り返る。
「兎はいついかなる時でも生殖活動が出来るのですよ」
それはつまり?
「簡単に言うと、いつでも発情期というやつです」
「……」
「それに、男性があてられた……ということじゃないでしょうか?」
「総長……すいません。一回でいいんでぶん殴らせてもらえませんか?」
にこやかなその顔に思いっきり、一発ぶちかましたいんですけど!!
「それはごめんです」
出来れば永倉君あたりにしてあげてください、なんて意味不明な事をほざく総長に「新選組、大丈夫かな?」とかちょっと思ったりしたのはここだけの話。
「それにしても、土方君に迫られそうになっただなんて……君も大変ですね」
「大変な目に遭わせてんのはあなたですけど?」
「でも、迫られただけで済んで良かったじゃないですか」
何事もなくて、という言葉に含みがあるような……気のせいだろうか?
まさか屯所の中で副長にされちゃいました、なんて説明出来ず……説明したらここぞとばかりに土方さんへの嫌がらせをするだろうし、まあ嫌がらせをしてほしい所だけど私にも責任があるんだとしたら(不可抗力ですけど!)可哀想っていうか、それよりなにより私自身が恥ずかしくて詳細は言えず、ただ迫られたとだけ訴えた。
この人の事だから何か気付いていないとも限らないけど、私は言わないよ、言わない。
「……それで、これってやっぱり、男の人とふたりきりになるのはまずいって事ですよね?」
「でしょうね」
私の言葉に山南さんはこくりと頷く。
「あなたは気付いていないかもしれませんが……男性がその気になってしまう前に、あなた自身もそういう気分になってしまうでしょうから」
ああ、だから、私、あの時土方さんに抱きついたりしたんかな?
じゃあやっぱりけしかけたのは私……
「時に……」
「はい?」
一人考え込む私の前で、にこりと、山南さんは人の良い……だけど本当は何を考えてるのか分からない笑顔を浮かべる。
「これからは私の所に一人で来るのも控えた方が良いと思いますよ」
「え? なんで?」
どうしてときょとんとする私に、山南さんの瞳が薄く開く。
あれ? おかしいな、血を見たわけでもないはずなのに……彼の目が赤く……
「私も、立派な成人男子ですから」
やんわりとした脅し文句に混じる、男の本能。
それを目の当たりにした私は思わず飛び上がるようにしてその場に立ち上がり、失礼いたしました! と部屋を後にした。
山南さんに土方さんみたいな事をされたら……私はきっと二度と立ち直れない。
だってあの人、
鬼畜そうなんだもん!!
「なるほど、薬の副作用って……奴か……」
土方さんは苦い顔で一人ごちた。
「ったく厄介な事だな。耳や尾が生えただけじゃなく、見境なく男を誘って狂わせちまうなんてよお」
これは私の意志じゃない。だから見境なくとかそんな事を言わないで欲しい。仕方ない事なんだから。
「――で? なんでてめえはそれが分かってるのに、俺の所に来た?」
そこで土方さんは、私に向かってにやりと意地悪く笑う。
艶っぽい笑みに背筋が震えた。
背筋だけじゃなく、身体全体が震えた。
その瞬間、私は声を堪えられなくなって、
「あ、ぁあんっ!」
「こうなるって分かってるのに……」
ぐじゅ、と土方さんの性器が奥までねじ込まれ、子宮の入口をぐちぐちとねちっこく甚振られる。
それがどうしようもなく気持ちよくて、私は脚を彼の腰に絡ませながら思わずもっとと強請ってしまった。
これは決して私の意志じゃない。
兎の本能なんだ。
そう、言い聞かせて。
「嘘、つけ……俺に抱かれたくて堪らなかったんだろ?」
「ち、ちがっ……ん、ぁんっ」
「ちがわねえだろ? んな、気持ちよさそうな顔してるくせによ」
だ、だって、それは土方さんがそこを揺さぶるから。
訴えるように見上げれば、紫紺が意地悪く細められる。
そうしてぬちゅと濡れた音をさせながら、腰が引かれた。
引き抜かれる感覚に追いかけるように腰を持ち上げれば押さえつけられて、ぎりぎりの所まで逃げられた。
「ん、あ、ひじか……ぁっ」
雁首でひっかかった状態で、浅い場所をぬるぬると緩慢な動きで突く。
もどかしさに腰が揺れた。
「ひじ……ぁ、おく、奥、いれ……てっ」
恥ずかしい言葉を口にする私に、ぺろりと舌なめずりをしてみせて、彼は問う。
「入れて欲しいのは誰の意志だ?」
俺の意志か?
それとも、おまえの意志か?
ここで彼、と言えば引き抜かれるのだろうか?
それは想像するだけで恐ろしかった。
こんな状況で止められたら……狂ってしまう。
私ははくはくと唇を戦慄かせ、涙を浮かべて答えた。
「わ、たしの、意志ですっ」
「……」
「だから、お願いっ」
ひくりと喉が震える。震える腿を、甘えるようにしてすりつけながら私は懇願した。
「いれて、くださいっ」
土方さんが、低く笑ったのが聞こえた。
「あー、ぁ、あっ!」
獣は獣らしく、と土方さんは私を俯せにひっくり返し、後ろから犯した。
さっき確かに精を吐き出した陰茎は、いつの間にか大きくなって、私の中を遠慮無く出入りする。その度に蜜と精とがぐちゃぐちゃと掻き出され、伝う感触に腰が甘く震える。
「ひ、じか……あ、あんっ、も、やめっ」
力を失い畳に這い蹲る私はお尻だけを高く上げさせられ、彼の責めを受けていた。責めと言うにはあまりに甘いものだ。
「っ、このちっこい尾、動く度にひょこひょこ動くんだな……」
お尻の割れ目の少し上にある飴色の尻尾が、彼は気になるらしい。
動いているのかいないのか、は私には分からない。多分無意識に連動して動くんだろう。
「ひ、だ、だめだめだめ! そこ、触ったら!」
その尻尾に、土方さんは手を伸ばす。
しなやかな指先が触れた瞬間、それは私の身体の一部ではなかったはずなのに、稲妻でも走ったかのように脳天まで快感が走り私は背を撓らせた。
「っつ、は、なんだ、ここも敏感なのか?」
きゅうと膣が締まり、土方さんの性器を締め上げる。
彼は苦しげに息を詰めた次の瞬間には、笑みを湛えて私の中を突き上げながら、執拗に尻尾を弄り出した。
「ふ、ぁ、し、しっぽ、や……やらぁっ……」
「いや、じゃねえだろ? 良い声で鳴きやがっ、て!」
「んんっ――」
きつく、抓るように尻尾を捻られ、私は息を飲む。
「い、いたっ」
「んだ、怯えてんの、か?」
意図せずに耳が垂れ下がり、身体を強ばらせる私を見て、その手が離れた。代わりに腰をしっかりと掴まれて、ずんずんと奥を犯される。
「ひ、じか……ひじかたさっ……」
もう駄目、きちゃう。我慢できない。出ちゃうって。
「安心しろ、もう、俺もそろそろ……」
びゅと、彼の言葉の途中で先から熱いものが溢れ出す。それを最奥に押しつけるように突き上げられ、私は今日何度目になるか分からない絶頂に上り詰めて、
「――!」
落ちた。
「思ったんだが……どうしてこうなるって分かってて、おまえはここに来たんだ?」
布団に私は顔を押しつけたまま、身動ぎ一つ出来ずにいる。
その横で土方さんは涼しい顔……ってか、妙にすっきりした顔だ。
と、屯所の中で好き放題しやがって。
今度こそ総長に言いつけてやるんだから!
その場合は私も連帯責任か、くそう……
「千鶴の所に行けば一番安全だっただろう?」
突っ伏す私の髪を、土方さんは優しく撫でてくれた。
それが優しいから怒りなんてあっという間に吹き飛んでしまう。ふにゃ、と私はだらしなく口元を歪めた。
「でも……千鶴ちゃんが……何もないとも、限らない……」
「……なに? 千鶴もおまえに触発されるってのか?」
女同士なのにか? と聞かれ、私はこくりと頷く。
兎っていうのは発情している時は本当に見境なく、交尾をしようとするらしい。
つまりは女同士もあり得るということだ。
「私……千鶴ちゃんに襲われたら生きていけない」
衝撃的すぎて、と言うと土方さんは沈黙した。
想像して彼もそれは怖いと思ったに違いない。だって、あの純真で可憐な千鶴ちゃんが、こんな野獣みたいな事をするなんて想像したら怖すぎる!
「誰が野獣だ、誰が」
「……うひゃっ!?」
無防備な脇腹を擽られ、私は思わず声を上げた。
身体がまともに動かないから抵抗も出来ず、私はすぐに空気が薄くなって苦しげな声を漏らした。
「ごご、ごめ、なさっ」
「……ったくよ」
土方さんは悪態をつきつつ、すぐに私の脇腹から手を離し、剥き出しの背中を撫で、その中心に口吻ける。
ちりと走る甘い痛みと痺れ。
腰にまでそれが及び、わき上がる欲に小さく「駄目」と拒否を訴えた。
それが聞こえているのかいないのか……土方さんはそこから腰までをゆったりと舐めて、噛み、両足をゆったりと揉みながらこう、訊ねた。
「そんじゃあ、どうして、部屋に戻らなかった?」
一人でいたなら、私は確かに彼に好き放題される事はなかった。
薬が出来上がるまで大人しくしていれば……私はこんな事に悩まされる事もなかったのだ。
でも、
私は不自由に首を横へと向け、土方さんを見下ろす。
いつの間にか新たな欲を灯した……彼の紫紺をじっと、見つめ、私は言った。
「だって……ひとりでいたくなかったんだもん」
兎は、
寂しいと死んでしまうのだ――
それを山南さんに聞いたのは、その少しあとで……
耳が生えました
以前友達に送りつけちゃった兎話です。
色々と土下座したいお話でしたが、この
まま埋もれさせるのもアレかなと思って
外に出してみました(笑)
なんていうか……アホだ←自分が
Photo:空に咲く花 様
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