白い息を吐きながら、沖田・斎藤・は今日も今日とて、帰り道に買い食い。

  「寒い日と言えば、中華まん。」
  沖田がビニール袋から中華まんを取り出して言う。
  「昨日はおでんって言ってなかった?」
  「その前はたい焼きだったな。」
  、斎藤の言葉に沖田はひょいと肩をすくめる。
  「なんでもいいんだよ。
  暖かければ。」
  「なるほど‥‥で、何買ってきたの?」
  寄越せ寄越せと手を出す彼女に、沖田は一つ包みを出して、
  「‥‥はい。」
  その手の上に乗せる。
  「一君にはこれ。」
  「すまない。」
  それぞれが包みを受け取り、ぺりっと開ける。
  白い湯気が上がった。
  美味しそうなにおいに、はいただきますと言って、早速口に含む。
  一口、食べて、
  「これ何まん?」
  変な顔をして離した。

  「新商品のいちごまん。」
  にこにこと笑顔で答える沖田に、
  「おーまーえ、なんつーもんを買ってくるんだよ!」
  は顔を顰めて抗議の声を上げる。

  いちごまん。
  ぶっちゃけ、まずい。
  ほかほかの生地の中に、暖かいイチゴジャムが入っているのだ。
  なのに甘い。
  罰ゲームとして買い求められる事が多い。
  もしくは‥‥稀少な好みの人が食す。

  「僕は塩豚。」
  「うわ、ずる!
  自分だけちゃっかりいいの買ってきやがったな。」
  「だって、買いにいったの僕だもん。」
  「じゃんけんで負けたのおまえだろ!
  半分寄越せ!」
  「いやだよ。」
  ぎゃあぎゃあと二人がやり合う中、斎藤は中華まんをぱっくりと二つに割ってみた。
  湯気と、立ち上る香り。
  チーズのにおいがする。

  「一、そっち何まん?」
  さっきまで総司とやりあっていたがこちらへ近付いてくる。
  見ればその手には半分に割られた‥‥いや、むしり取られたというべきか、塩豚まんが握られている。
  因みにいちごまんはそのままの形状で残っている。

  「ピザだ。」
  「そーうーじー、なんで一のは普通のなんだよ。」
  ぎろっと振り返ると、彼はちょっと小さくなった塩豚まんを口に頬張りながら、肩をすくめた。
  「人徳の差。」
  「おまえにだけは人徳云々言われたくない。」
  「え、僕より人徳ないの?」
  「ないだろう。」
  しれっと答えたのは斎藤だった。
  うわ、ひどい、と彼は苦笑を漏らしただけでそれ以上文句は言わず、自分のそれを食べ続ける。

  「なあなあ、一。
  私の半分あげるから、一口ちょうだい。」
  そう言っていちごのを割ろうとするので、
  「‥‥」
  無言で差し出した。
  いちごのはいらないけれど、食べたければ食べればいい‥‥そんな感じだ。
  は苦笑して、それじゃと差し出されたピザまんを、

  ぱく、

  彼の手から一口、
  食べた。

  差し出した半分のピザまんには小さな歯形。

  「うん、うまい。」

  ごくんと飲み込んで、は嬉しそうに笑う。

  それを見て、斎藤は苦笑を浮かべた。

  本当は‥‥
  半分あげるつもりだったんだけど。
  そんな事を思いながら、斎藤もピザまんにかぶりついた。

  三人で並んで歩く。
  白い息と、白い湯気が空に上がる。

  「明日は、何しよっか‥‥」
  「次は俺が買ってくる。」
  「あー、それは有り難い。総司だと変なの買ってくるからなぁ。」
  「やだな、女の子が好きそうなの買ってきてるだけなのに。」
  「あれはどうみても嫌がらせだろう。」
  「そーそー。
  っていうか、ほんとにいちご食べない?」
  「遠慮しておく。」

  二人の声が見事にハモった。

  明日も。
  またこうして帰ろう。
  三人笑って。
  また帰ろう。


 また した