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黒板の前には教師が一人。
だだっ広い視聴覚室の席に着いているのは、生徒一人。
所謂マンツーマンの授業方式で、繰り広げられる授業に、私はぼんやりと頬杖を突きながら黒板の文字を見つめていた。
それは決して、私が優秀だからでも、逆に劣等生なわけでもない。
ただ、その授業内容が『保健体育』という特殊なもので、なおかつ、この学校には女子生徒が二人。
その内の一人が、私だからというだけなのである。
いや、それにしたって、マンツーマンでイケメン教師に、性教育の授業を受ける、
しかも、
相手が、
彼氏となると、
「なぁんか変な感じ。」
Let’s study
「なんか言ったか?」
私の呟きに、教鞭を振るっていた原田先生がくるりと振り返る。
小さな声だったんだけど、なんせここには二人しかいない。嫌でも聞こえるというもの。
「‥‥あ、いえ、なんでも。」
取り繕うように笑いながら頭を振る。
それを、原田先生は訝しむように眉根を寄せて見ながら、徐にチョークを置いた。
手に着いた石灰を払いながら、私の傍までやってくると前触れもなく、
「あ」
ひょいとノートをふんだくる。
やばい。
「‥‥おい、人の話聞いてなかったのか?」
先生の眉間にはそれはそれは不機嫌そうな皺が刻まれる。
まあ、当然と言えば当然かな。
私のノートはその授業が始まった瞬間から進んでおらず、ただ、ちょこちょこと落書きがいくつか書かれているだけなのだ。
因みに今は授業が始まってもう20分は経っている。
その間、先生は‥‥まあお世辞にも綺麗とは言えない文字を黒板に書き連ねてくれたわけで、それを私は全く書き写していないわけで‥‥
「あは?」
誤魔化すように笑ってみせると、彼ははぁ、と溜息を零してノートで私の頭をこつんと叩いた。
笑い事じゃねえ、とでも言いたげに。
「‥‥だってさ、今更性教育とか言われてもですね。」
最近の高校生ってのは耳年増なんですよー?
まあ、確かにセックスがなんたるか‥‥というのは、種の保存というよりも快楽を得るためだけに行われているものだと、子供である私らは認識していると思う。
私としては、好きな人と一つになれることはハッピー程度の認識。
それが事実かどうかはまだ分からない。
だって、私セックス経験したことないし。
悪友のお陰で変な知識だけはたたき込まれてるけど、さ。
「それにさ、聞き慣れない単語を並べられても‥‥」
ちんぷんかんぷんだし、それを知ったところでどうだって話だよね。
私、医者になりたいわけじゃないし。
「‥‥ばぁか、そういう問題じゃねえだろうが。」
もう一回こつんと叩かれて、溜息を吐かれる。
はて、そういう問題じゃなければどういう問題?
視線を上げて訊ねると、先生は半眼で私を呆れたように見下ろしながら、続けた。
「知識として知っている必要があるだろ?」
なにゆえに?
「身体の仕組みが分かってれば、色んな事を防ぐことが出来る。」
「快楽を得るが為に無責任にセックスして妊娠するようなヘマをせずに済むって事?」
「露骨すぎんだろ。」
女なんだからもっと恥じらえ、と言われて、私はだってと唇を尖らせた。
先生はノートを私に返してくるりと背を向けると、それから、と付け足した。
「自分の身体の事なんだから、知っておいて損はねえ。」
「‥‥私に男性器はついていませんが?」
今は男性の身体の仕組みを話していた。
そう突っ込むと、彼はそりゃそうなんだが、と頭をがりがりと掻きながら呟き、とにかく、と無理矢理話題を戻した。
「ちゃんと聞け。」
「‥‥‥うぃー」
なんとも気のない返事で、授業は再開された。
男女の身体の作りの違い。
それを保健体育の教科書の図解を見ながら授業が進む。
教科書には男女の身体をの断面図が描かれている。
これ、正面から書かないのはあれだな‥‥絶対教育委員会から卑猥すぎるとか抗議の声が上がったからだな。
断面図で見せられても人をまっぷたつにすることはないんだから分からないってのに。
「‥‥」
私はつまらんと思いながら断面図から視線を剥がし、ちろ、と前方を見る。
背中を向けているその人を盗み見るように。
相変わらず、いい身体してるなぁ‥‥とか言ったら私変態だろうか?
いやでも本当に、引き締まったいい身体、してると思うんだよね。
私には背中の広さしか見えないんだけどさ。
何か言ってるけど、私の耳には右から左、だ。ごめん、先生。
それよりも、私はこの状況が気になって仕方ないんだ。
だって、私たち恋人同士。
ふたりきり。
そんでもって話題は性教育だよ?
こう、さ、ちょっとむらっと来てもいいと思うんだよね。
ぶっちゃけ、世間一般の性教育なんかよりも、あなたの事が気になるわけで‥‥
そんな事悶々と考えてるのは私だけ?
「‥‥というわけで、精子が着床することにより、妊娠することに‥‥」
いつの間にか視線が教科書に落ちていて、
先生の声が止まって、あれ?と思って顔を上げると、いつの間にか彼は私の目の前に立っていた。
ただでさえでかいってのに、座って見上げるとなると首がしんどい。
見上げれれば彼はまた半眼で私を見下ろしている。
ありゃ、怒ってる?
「‥‥先生、テレポーテーションなんて身につけてたんですか?」
茶化すためにそう言うと、柳眉を寄せて唇を開いた。
「‥‥そんなに、授業がつまんねえのか?」
「いやそんなことは‥‥」
「‥‥‥」
「あります、すいません。」
じろっと睨まれて私は謝った。
でもだって仕方ないじゃん。
ある程度知ってる事っていうのを今更難しく教えられても面白くもなんともないわけで‥‥
そもそも、性器の名前とか、そういうのよりも、
「性教育‥‥っていうのなら、もっと実用的な事を教えて貰う方が良いと思うんですよ。」
私はその方がもっと、勉強になると思うんだ。
性器の名前知ってるからって、いざセックスする時になーんの役にも立たないし?
いや、それよりも知りたいのは今この状況での彼の気持ちだけど、授業中に何言ってんだって怒られかねないわけで。
と、こう私が言えば、原田先生は柳眉をそっと引き上げた。
わらっ、た?
しかも、
にこり、
じゃなくて、
にやりと。
その途端に、ぞくりと、
背筋が震えるほどの色気を感じて私の身体が椅子から飛び上がるほどに震えた。
それが、
男の、
大人の、
色気ってやつなんだと思うんだけど、それを私は初めて目の当たりにした。
「‥‥実用的な事を教えてほしい、ね。」
あ、あ、と声にならない声を上げる私を、原田先生は覗き込んで、鮮やかに笑った。
「そんじゃまあ、内容を変更して『実践授業』って事にしますか。」
実践授業って一体なんですか?
その問いかけさえ、私は色っぽい眼差しで止められた。
頭ん中が、ぐるぐる、ぐっちゃぐちゃしてる。
なんか考えなきゃいけない事があったはずなんだけど、それどころじゃなくて、私の頭は今の状況を整理するので精一杯。
ただ、この状況がやばいまずいってことだけは分かってる。
分かってるのに見上げている視聴覚室の天井を見て「あ、茶色だったんだ」なんて場違いな事を考えたりしてる。
多分、私、今いっぱいいっぱいだ。
そりゃ、いっぱいいっぱいになるだろ!
「‥‥」
「んっ!」
汗ばんで張り付くブラウスの前を全開にされて、
なおかつブラまで押し上げられて、
その上に教師であるその人が乗っかって、
あまつさえ、私の、その、む、胸なんぞを触ってるんだよ!
そりゃいっぱいいっぱいにならない方がおかし‥‥
ぬろ。
「んひっ!?」
表現しがたい音を立てて、そこが舐められた。
まあ、俗に言う乳首という所だ。
ぎえ、と悲鳴を上げなかっただけマシだと思って欲しい。
だって、そんなところ、先生が舐めるなんて。あ、いや、普通なの?これ?
「や、はら‥‥やっ」
嫌だっつってんのに、彼は赤い舌を見せつけながら私の乳首を擽るように舐め上げる。
あ、結構舌長い。
口ん中でさくらんぼの枝を結べそう‥‥確か出来る人ってエロイんだっけか?
おお、正解!
「お?俺に抱かれながら考え事とは余裕があるじゃねえか。」
あ る か!
逆にいっぱいいっぱい過ぎて現実逃避してるんだって気付いてよ!
しかしながら心の声は外に出ることはなく、
「ひゃっ!」
大きな手でゆったりと揉まれていた胸の先に長い指が絡みつく。
意図せずに立った乳首をくにくにと摘まれ、私の背中をびりっと痺れみたいなものが走った。
なんだこれ。
思わずびっくりして出た声もなんからしくなく高い声で、
再びなんだこれ?
「や、んっ‥‥」
慌てて口を手の甲で覆うと、先生は私をちらっと見上げて笑っただけで、
「ん、んんっ!!」
さっきよりも執拗に、手で摘んでいるのとは逆の乳首を舌で触れた。
今度は口の中に含まれて、ころころと凝った部分を舌の上で転がされる。
飴でも転がすような要領で。
――突然、
「ひっ!?」
硬い何かで挟まれた。
先ではなくて根本の方を。
何で挟んだかって言うと、彼の歯だ。
上下の歯でゆるゆると刺激を送られて、痛い、というよりは、あれ、疼く?そんな感覚が私の中に広がっていく。
「だ、だめ‥‥そこ、噛んじゃ‥‥」
びり、びりっと断続的に背筋を電流が走り、
もどかしい、むず痒いようななにかがお腹のあたりに広がっていく。
「保健体育とは関係ねえけど。」
散々私の両方胸を弄り倒した後、原田先生はすっかりと色を変えた瞳を細めて笑って言う。
「こういう時の『駄目』は『もっと』の合図だ。」
覚えておけ、と耳に吐息ごと吹き込まれて、ふにゃん、と力が抜けた。
そんなの知らないよ。
知りたくもない。
そんな事を考えながら目をぎゅっと瞑って身体を強ばらせた。
あれ?
私、なんか言わなきゃいけないことなかったっけ?
ゆっくりと遠ざかる体温と、胸を弄っていた手が離れた事でちょっとだけ思考が戻った。
とは言っても完璧に離れたわけではなくて、大きな手は私の身体のラインをなぞるように下へと降りて行ってる。
いや、脇腹くすぐったいから。
笑うから。
なんて思わず口元に笑みが浮かぶ。
いかんいかん。
言わなきゃいけないことを考えなくては。
ええと、なんだっけ?
確か、どうして?
何がどうして?
どうしての続きが分からない。
えっと‥‥
なんだっけ?
更に首を捻る私は、だけど、
「ひぎゃっ!?」
次の瞬間、色気もくそもない悲鳴を上げた。
その瞬間に原田先生がおいおいと眉を寄せたのが分かった。
「セックスの最中に出す声にしちゃ色気がなさすぎねえか?」
だ、だって!
呆れたような声に私は反論しようと口を開いて、ん?と不思議な言葉に違和感を覚える。
今なにか、おかしな言葉を‥‥
色気がない、のはいつものこと。
そこじゃなくてその前の、
セックスの最中に。
あ、これ、セックスか。
今更かと突っ込まれそうな呟きを一つ漏らし、そうだ!と私は「どうして」の先を思い出して慌てて声を上げた。
「どうしてこんな事をするんですか!?」
それこそ今更のように胸を隠して叫ぶと、先生はおやと目を丸くした。
「今更?」
ですよねー
ボタン全開にされて、胸をあんだけ触られて、乳首舐められて、んでもってショーツを脱がされ掛かった所でする質問じゃないですよねー
でも、今更、漸く、思考がまともに動いたんだから仕方ない。
開き直って私が睨み付けると、そりゃ、と先生は片方の眉毛をひょいと跳ね上げて悪戯っぽい顔で、言った。
「実践授業だって言っただろ?」
「‥‥だから?」
「だから、実践してる。」
いや、そういう事じゃなくて。
私は内心で突っ込んだ。
実践授業だから実践してるのは分かった。納得できないけど。分かったから。
だから、
「だからって、なんでこんなことっ」
「そりゃ、恋人同士なんだからこういうことがあってもおかしくねえだろ?」
そうだけど!
いちいちごもっともだけど違う!
そうじゃなくて、
なんで、
今!?って事。
私の胸中の叫びが聞こえたのか、先生は実はな、と悪戯っぽく零した。
「なんか、おまえとふたりきりであんな授業してたらさ。」
――むらっときちまったわけだ。
という悪戯な囁きに、私は、今度こそ言葉を失った。
数分前はそれが聞きたい言葉だったんだろうけど、まさか彼の口からそんな言葉が出てくるとは思わなくて。
思わず、凝視してしまった。
頭ん中は、真っ白。
そんな私を見下ろしていた彼が、唐突に、
手を動かした。
「ぎゃわっ!?」
さっきと同じ色気のない声が漏れる。
だから、仕方ない事だと思うんだ。
だってさだってさ、
「ダメダメダメ!これだけはダメっ!!」
先生がいきなりショーツを脱がそうとするんだもん。
そりゃ、悲鳴も上げたくなりますよ!
長い指がショーツの紐に掛かって、中途半端に下げられた状態で、私は慌てて彼の手を掴んだ。
紐を掴んで千切れたら洒落にならないと思ったから。
ここに来て初めて抵抗らしい抵抗を見せた私に、先生はひょいと眉を寄せて不満げに声を上げる。
「おいおい、ここまでき来てお預けかぁ?」
「おおお、お預けとかそういうんじゃなく!」
私は真っ赤になりながら反論。
「なんで、ショーツ脱がすんですか!?」
問いに、決まってるだろと言いたげに彼は口を開く。
「脱がさねえと、挿れられねえだろ?」
「い!?」
挿れるとな!?
どこに、何を!?
いやいや、聞くな自分!聞いたら墓穴を掘る!
一瞬愕然とし、次の瞬間に慌てたようにぶるぶると頭を振る私の頭の中を見事に先生は読み取ってしまう。
「なんだ?知識くらいはあったんじゃねえの?」
あるけど!!あるけど、実際体験するのとでは違うんです!!
そりゃ、何回も体験してる大人には分からないかもしれないですけど!
「おい、本気で邪魔するつもりか?」
声に余裕がなくなる。
え、もしかしてコレ結構ヤバイ状況なんじゃないの?今更で申し訳ない。
「ちょ、ほ、本気でするつもりですか!?」
私は狼狽えた。
だって、ここ、学校。
一応、私生徒、彼は先生。
見つかったら‥‥
ざぁ、と青ざめる私に、先生はしれっとした様子で、
「当たり前だろ。」
据え膳食わぬは男の恥だ、なんていつの時代の人間だよという言葉に呆気に取られていると、ちょっとばかし乱暴な手に、負けた。
「うわぁ!?」
するん、となんて早業!?って感じでショーツが引きずり下ろされる。
膝を越してしまうともう半身を押さえられている私にはどうしようもならなくて、
「あっ」
片脚を大きな手に掴まれて押し上げられ、限界まで紐を伸ばされて足から抜かれる。
その時、思わずその大きな手にどきりとしたのは悔しいから内緒。
それよりひやりとしたのは、
「っ!?」
自分のそこが、なんだかおかしいというのに気付いたから。
おかしい?
いや、まあまじまじと見たこともないんだからおかしいかどうか、なんて分からないし、元々の正常な状況すら分からないんだけど、なんていうの、その、
「‥‥濡れてんな。」
ぎゃああああ!言わないでぇええええ!!
私のそこは、まるで漏らしたみたいに濡れているんだ。
触らなくても分かるくらい。
熱い何かで濡れてる。
「や、やだぁ‥‥」
恥ずかしさのあまり私は泣きそうになりながら手で隠そうとする。
それよりも早く、先生の手が降りて、
「ひゃぁ!?」
濡れた入口を躊躇うことなく、撫でた。
ぬちゅ、と卑猥な粘着質な音が響き、私の肩はびくりと震える。
しかも、触っただけじゃなくて、
「ん、は‥‥ぁ‥‥」
指先が入ってきた。
どこに、ってそこに。
私の濡れてしまった中に。
「き、つっ‥‥」
たかが指一本なのに、なんだろこの妙な圧迫感。
これは私が初めてだからなのかなと思っていると、先生も同じようにきついと口にした。
「おまえ、初めて?」
「あ、たりまえっ」
私誰とでもやっちゃうような軽い女に見られてたわけ?
残念ながらあなたが初恋で、このまま続けられればあなたが初めての人になりますが!
「そいつはいいな。」
睨み付けると先生は嬉しそうに目元を細めて笑った。
「俺が初めての男か。悪くねえ。」
なんでそんな事をこんなに嬉しそうに言うのか‥‥私には不思議で堪らない。
いや、それよりも苦しくて堪らない、かな?
「あんまり力むなよ。」
先生は指をゆっくりと挿入しながら言う。
「そんな、こと‥‥言われてもっ」
私には勝手が分からないんだからどうすればいいのか‥‥
そう訴えれば先生はいいから、と優しく、子供を宥めるように低い声で囁いた。
「俺の手に、委ねりゃいい。」
先生の、手に?
委ねるって‥‥なに、どうすんの?
わけがわからずにただひたすらに入ってくる指の感触におっかなびっくりしていると、
ぬる、
「んぁっ!」
なんだか柔らかい所を擦り上げられた瞬間、思わず腰が砕けるかと思った。
っていうか、溶けた。
びりっと強い電流が走ったんだけど、その次に来たのは言葉では表現出来ない気持ちの良さ。
溶ける。
溶けそう。
「ここ、か?」
それに気付いた先生が、指を戻してくりくりと内部を擦り上げる。
「ふぁっ、う、あっ」
その度に私の口からはとてつもなく卑猥な声が上がって、うわなにこれ、ちょっと誰か止めてってくらいの恥ずかしさに唇を噛む。
だけどそうしたことで吐き出しきれない何かが私の中からぐるぐるととぐろを巻くかのように渦巻いて、
「んーっ、んっんーっ!」
びくびくと腿が震える。
え、なにこれ?
一体なんなの?
ちょっと誰か教えてよ、これ、な‥‥に‥‥
「気持ちがいい、か?」
私の顔を覗き込んで、先生はやけに上擦った声で訊ねた。
気持ち、いい?
あ、わかんない。
でも、気持ち悪くはない。
ただ、ちょっと、怖い。
「大丈夫。
それが、好きな男を受け入れる準備ってやつだから。」
そういうもんなのだろうか。
分からずにただ与えられる刺激に身体を震わせていると、彼の指によって立てられる水音が大きくなっていくのが分かった。
おまけに指の滑りも良くなって、なんていうのかな、胎内が熱く、なってくる。
「ふ、ぁああっ」
そうすると、先生の指が二本に増やされて、さっきよりも大胆に、中を広げるように指を開かれる。
空気が弾けるような音を立ててぐちゃぐちゃに掻き回され、私は上も下も何がどうなってるのか分からなくなる状態にただただ苦しさを持てあましながら荒い息を漏らし続けた。
「さて、と‥‥」
先生がふ、と息を漏らす。
ずるりと指が引き抜かれ、中がまるで引き留めるように締まった。
それに気付いて先生はにやと笑っただけで言及せず、代わりにかちゃとベルトのバックルに手を伸ばした。
「‥‥ぁ‥‥」
性急な手つきでベルトを抜き取り、スラックスのファスナーを下ろすと、ずるっと下着ごと下ろした。
「っ!」
その下に待っていたのは、男性の性器がある。
図解には載っていない。
正直、載せといて!ちょっと初めて見るのにはトラウマになりそうだから!ってくらい、グロイものがそこに。
うわなにあれ、先端赤グロイ‥‥間違えた赤黒いんですけど!!
なんですか!?あれ、人の身体!?
しかも反り返って、筋張ってますけど!?
「‥‥教科書には載っちゃいねえが、これが男性器ってやつだ。」
「‥‥‥‥」
茶化すような言葉に私は反論さえ出来ない。
ただまじまじと凝視するだけだ。とはいっても、別に興味津々ってわけでも私がとりわけえっちなわけでもない。
あまりのエグさに視線を逸らすことが出来ないってだけで‥‥
「こいつを」
と先生は言いながら私の両足を抱え上げる。
ひゃあと驚きの声を上げると共にスカートがぺろりと捲れ上がって下半身が露わになった。
その露わになった所に先生の性器が近づけられる。
丸みを帯びた先端が入口にまるでフィットするかのように触れた。
「おまえの膣の中に入れる。」
一応、授業のいっかんだからか――どんな卑猥な授業だよ――先生はわざと私の羞恥を煽るように「膣」とか「性器」とか言葉を並べ立てて、今からすることを教えてくれるのだ。
「ひ、ぅ、ぁ!」
ぬじゅ、と先端が食いこむ。
指とは比べ物にならない質量と熱に、私の身体は当然強ばる。
それを見越して、先生はむにと、私の胸を揉んだ。
「あ、やっ」
ゆるゆると乳首を擦り上げられて力が抜けた所を、再び押し進められ、私は虫ピンで縫い止められた標本のごとく、身動き一つ出来ない。
初めてって痛いって聞いてたけど、うん、痛い。
身が裂かれそう。
「おまえが、濡れやすい体質でよかったよ。」
は、と濡れた声が降ってくる。
それは滑りに助けて貰ってか、ずるずると私の最奥まで侵入を試みようとしている。
「そんな、おっき‥‥の‥‥無理ぃ‥‥」
「へえ、大きいってのは、どこのどいつとの比較対照だ?」
意地悪な言葉を掛けながら、ぐんっと乱暴に腰が押しつけられた。
ひ、と私の口から短い悲鳴が上がり、背が撓る。
瞬間、胸を突き出すような格好になった私に、先生は「えろい」と表現した。
えろいのはそっちのくせに。
「‥‥え、あ‥‥」
不意に私は彼の動きが止まっている事に気付く。
見ればぴったりと、いや、構造上ピッタリと合うことはないんだけど、彼の肌と私の肌とが触れ合っていて、
「‥‥全部入ったぞ。」
ということを言われて初めて、分かった。
身体の中、いっぱいに彼のものが入っていることに。
「‥‥すご、い‥‥」
思わずそう零してしまったのは、内部にあるものがびくびくと震えていたからだ。
まるで、それだけが別の生き物みたい。
「痛くは、ねえか?」
私は聞かれて、ええと、と首を傾げる。
さっきまであんなに痛いと思ってたのに、どうしたんだろう?
今は全然いたくない。
ただお腹の中がいっぱいな気がして苦しい。
「じゃあ、もう動いても良さそうだな。」
「う、ごく‥‥って、な‥‥」
に、まで言わせてくれない。
先生は私の足を抱えなおしたかと思うと、徐に、
ずる、
「ひぁっ!」
腰を引いた。
一気に抜かれるのかと思いきや、入口ぎりぎりで止めて、
すぶ、と卑猥な音を立ててまた中まで押し込まれる。
ちか、と瞼の裏で白く明滅。
止まらずに再び引かれて、今度は上に突き上げるように突き立てられる。
「ぁっ、ああっ!」
恥骨の裏側をえぐり取るようなその動きが、私の弱い部分を捕らえるのか、私はあられもない声を上げ、逞しいその肩にしがみついた。
「や、だめっ、そこ、ンぅー!!」
「駄目?
駄目って言うには、随分とっ‥‥」
ふ、と苦しげな吐息を漏らして、突き上げられ、私の身体は強ばった。
ぎゅっと噛むように彼の性器を締め上げるのが分かる。
それが痛みよりも快楽を与えているというのはその顔を見れば分かる。
締め上げると‥‥気持ちいいのかな?
「いい顔、してる。」
「‥‥先生‥‥も。」
そう音を紡ぐと、先生は困ったように笑った。
あれ?なんか変なことを言ったかな?と首を捻ると、彼は私の手を取って、ちぅとまるで王子様がお姫様に誓いのキスをするみたいに手の甲に口づけられた。
「左之助。」
「‥‥ぇ‥‥」
「こういうときは、名前で呼ぶものなんだよ。」
これは教科書には載ってないけどな、と彼は気恥ずかしそうに言って、強請る。
名前を呼んでくれと。
先生でも、
原田さんでも、なく、
左之助という名前で呼んで欲しいと。
「‥‥さ、の、すけ、さん‥‥?」
恐る恐る呼ぶと彼はくつと笑った。
「呼び捨てでいいぞ?」
「‥‥急には、無理。」
それに年上なのに、呼び捨てなんてできっこない。
「なら、いいよ。それで。」
先生、いや、左之さんは満足げに笑って、私に優しくキスをすると、再び、動きを再開した。
「さ、の、さっ」
私は引きつった声を漏らして、喘ぎながら彼の名前を呼んだ。
なんだか、切なく求めるような響きがそこにあった。
「‥‥っ」
彼の口から漏れた声も、私のと同じくらい、切ない響き。
だけど、すごく求められるような声に、ぞくりと心が震える。
「左之さっ‥‥さの、さっ‥‥」
「、っ‥‥」
ずんずんと突き上げられるたびに、胎内に埋められた彼の性器がびくびくと震えるのが強くなる。
今にも爆発しそうなくらいに膨らんで、熱くなって、それこそちょっと締め付けたら爆ぜるんじゃないかと思うくらいで。
「‥‥最初から、ナカは、無理だもんな。」
左之さんがそんなことを突然言った。
なんの事か分からずになに?と問い返すと、抱え上げられていた片方を外されて、その手をするりと繋がっている所へと宛われる。
正確には繋がっている所よりちょっと上。
膨らんだ、花の芽みたいになってる所。
そこを、きゅ、と摘まれた瞬間、
「ひっ――!?」
びくんっと私の身体は今までにないくらいに強ばり、
「っつ、あっ――」
世界が一瞬白く塗りつぶされて止まった次の瞬間に、身体の中で熱が爆発したのが分かった。
彼が射精したんだってことが分かったのは、それから呼吸が整った後で、自分があの瞬間にイったと分かったのは、独特な気怠さが身体を襲ってからだった。
左之さんは余韻に浸る私に、こう、告げる。
「射精して、出された精子が卵巣に着床すれば‥‥」
無事妊娠って事だ、と囁かれた言葉に、今更のように彼が避妊具を着けずに行為に及んでいた事実に気付いたのだった。
初めての原田先生裏。
普通に保健体育が左之さんとかエロすぎるだろ
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