まず初めに。
こちらはとても土方さんが残念なお話となっております。なので格好良くない土方さんなんて駄目!というお方はお戻りになってください。
また、ちょっと大人向けな表現もある可能性がありますが、裏に入れるほどではないので表に出させていただきますが、苦手な方もやはりお戻りください。
待てるだけの自信があった。
彼女の気持ちが、きちんと整理されるまで待てる自信があった。
決して気長な方ではないが忍耐力はある……と思っている。
それもこれも彼女を愛するが故に、だ。
彼女を傷つけたくない。
だから、待てる。
そう、思っていたのに――
「こいつぁ、拷問じゃねえか」
思わずという風に零れた一言こそが、彼の本心だった。
そんな彼の目の前には縁側ですやすやと眠る女の姿がある。
いくら今日は暖かかったとは言っても、風呂上がりの寝間着姿で寝転けるのはどうかと思う。
そしていくら眠たかったからと言って、そこで眠ってしまうのはどうだ。
先に寝ていて良いと言ったのに、それも悪いと思ったのだろう。
でも悪いと思うのならば、そんな無防備な恰好を曝さないで欲しい。
寝間着からすらりと伸びる白い腿のなんと眩しい事か、うっかり手を伸ばして触れてしまいたくなる。
「おい、」
思わず呻くような声で低く呼びかければ、はうーと返事なのかなんなのか、よく分からない声を返した。
「んな所で寝てんじゃねえ」
風邪ひくだろうが、と続く言葉がごろりと寝返りを打った瞬間にひゅと変な音へと変わって消える。
寝返りを打った瞬間寝間着が引っ張られたせいで彼女の胸元が緩んでしまったのだ。そのままこちら側へとごろりと動けばそれに伴ってふくよかな胸元が揺れる様子がはっきりと見えて、
「っ」
無防備な胸元はさも見てくれと言わんばかりで……そこは男の本能に勝てない。
まじまじと見つめれば暗影がその大きさを彼にまざまざと見せつけるようで、
「――!」
土方は慌ててべりっと視線を逸らした。
そうしなければそこに無遠慮に手を伸ばしてしまいそうだったのだ。
そうして触れてしまえば、きっと止まれない。
彼女の寝間着を奪って、眠っているにも関わらず己が欲望で貫き、自分勝手に上り詰めてしまった事だろう。
土方は甘すぎる誘惑を拳を握りしめて跳ね退ける。
今し方風呂に入ったばかりだというのにじっとりと肌が汗ばんでいた。決して熱いからという理由ではない。
しばし男は視線を逸らしたまま、深い呼吸を繰り返し、熱が徐々に収まった頃を見計らって視線をそこから逸らしつつもう一度呼びかけた。
「、起きろ」
返答はない。
どうやら熟睡してしまっているようだ。
ここが安全だから、すっかり気を許してしまっているようだけど……本当は安全なんかじゃない。
命の危険はないかもしれないが、貞操の危険というのがいつも傍にあるのだと気付いて欲しい。
「いい加減、起きろ」
呻くように言って肩を軽く揺する。
と、
「んぁ?」
漸く目が覚めたのか、寝ぼけたような声を上げぱちりと瞳が開く。
瞳は開いた、が、覚醒には至っていないようだ。
はこちらをぼんやりと見つめたまま、動かない。
「こんな所で寝るな。風邪ひくぞ」
そんな彼女を些か八つ当たり気味に低い声で窘める。
「起きろ。そんで部屋に戻れ」
「……」
「ほら、部屋に戻るぞ」
「……」
返事はない。
ぼんやりと人の顔を見つめたまま、先程から一向に動く気配がない。
彼女はここまで寝起きが悪かっただろうか?
「おい、。聞いてんのか?」
そう、再び声を掛けた時だった。
のっそりと身体を起こした瞬間揺れた白い胸元に目を奪われ、思わず魅入ってしまったのがいけない。
柔らかそうだ……なんて感想を抱いてしまったのもいけない。
そんな無防備だったからこそ、
「っ!?」
は再び眠りについてしまった。
しかも、
居心地良さそうだとか思ったのか、彼の腰に手を回して、
彼の膝の上に身を乗り上げて、
その瞬間、
彼の大腿部にふにゃりと柔らかな感触が押しつけられる。
それは勿論、
彼女の……
「いい加減目を覚ましやがれぇえええ!!」
怒声は、情けない悲鳴に聞こえた。
苦悩は続くよどこまでも
祝言を挙げるまで後二十二日。
こんな感じで悶々としてると良い。
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