「私、欲求不満なんだ」
そう言って、僕を妖しく誘う瞳の奥。
ゆらりと揺れる脆さに僕は気付いていた。
「少し、付き合ってよ」
まるで遊ぼうと簡単に言うみたいにあっさり言いながら彼女が差し出した身体は、震えていた。
理由は、分かっていた。
が『人』ではないと知ったのは数日前の事。
彼女が僕とは違う『鬼』というものだと知ったのは。
あの風間とか言う男と同じ化け物の血を引いていて、なおかつ彼女は先祖返りしたとても濃い特別な血を引く鬼だった。
そんな彼女を、風間は欲しがった。
理由は馬鹿馬鹿しいけど、鬼の血を絶やさない為。つまり、に自分の子を産ませようとしていたんだ。
腹立たしい以上に笑っちゃうよ。
が好きとか、そういう理由なら分かるけど、血を絶やさない為?
そんな事の為に彼女を抱こうなんて、許せるわけがない。例えばが望んでも。
ううん、望んだって許さない。させない。
僕以外の男が……に触れるなんて。
彼女は、
僕だけのもの。
「ぁ、…あっ、ぁ」
僕の腕の中で、は他の誰にも聞かせた事がないような甘い声を上げる。
普段は凛とした声がこんなに色っぽい音に変わるなんて、誰も知らない。僕だけ、だ。
「、気持ちいい?」
訊ねながら裡に潜り込ませた指でぐるりと弱い所を撫でる。
はひ、と短く悲鳴を漏らしたかと思うと僕の背中に爪を立ててきて、涙をぼろぼろと零した。
いつもなら絶対に泣かないけど…こういう時はは泣き虫だ。ううん、僕が泣かせるのが好きだからかも。
だって、の泣き顔、綺麗だから。
涙で濡れてきらきら輝く瞳も、苦しそうに寄せられる眉も、上擦る泣き声も、加虐心を煽る嗚咽も、全部綺麗で……とて
も色っぽい。
堪らなくなって指を引き抜くと彼女の細い両足を抱えて、拡げる。
「や、やだ、総司っ」
態とが見えるように脚を抱え上げ、ひくひくと物欲しげに震える入口に僕は自分を宛った。
見せつけるように一度、二度、とそこに押し当てて腰を揺らせばが身体を捩って、切なげに……泣く。
そうじ、と短く呼びながら僕を横目でちらりと見るのが、ぞっとするほど艶っぽい。
悔しいな……もっとじらして狂わせてやろうと思ったのに限界で、
「あ、ぁあ――」
下腹に力を入れると一気に、の一番熱い所を貫いた。
突き入れた瞬間に衝撃を逃すみたいに敷布を握りしめ、喉を反らすの様に……なんとなく獣の気持ちが分かった。
捕食される獲物の息の根を止める。それがどれほど愉しい事なのか、飢えを満たす以上の歓喜をきっと彼らは求めている
に違いない。
「僕が中にいるの……分かる?」
彼ら獣は言葉を操る事が出来なくてさぞ悔しい想いをしているだろう。
獲物をそれ以上嬲る事が出来ず、突き落とす事が出来ず、悔しい想いをしているだろう。
でも、僕には言葉がある。更に彼女を貶める言葉が。
「の奥、絡みついてくる」
「や……ぁっ」
「僕の事そんなに欲しかったの? 吸い付いてくるみたい」
「言わないでぇ」
恥辱に顔を歪め、は両手で顔を覆う。
だけど身体は言葉に嬲られて、更に堕ちていこうとする。
「意地悪される方が好きな、癖に?」
「ち、がっ…は、ぁっ」
ずるりと態とゆっくり引き抜けばの内側がじわじわと僕に追いつこうとする。
追いつかれる前にまた奥までねじ込むと、はびくっと細い背中を撓らせて悲鳴を上げた。
「ゆっくりされると、おかしくなっちゃうそうでしょ?」
「い、やぁ、そ…じっ」
「おかしくなっても好いんだよ、見てるのは僕だけだから」
「やめ、やめ…ぁ、あ…」
「ほら、もっと見せてよ」
乱れた姿を僕だけに。
徐々に締め付けが強くなる内部に僕の呼気も揺れ、徐々に大胆になっていく動きに釣られるみたいにの乳房が柔らか
く揺れる。
女の子の胸が大きいとか小さいとかはどうでもいいけど、やっぱり大きいとこういう時、愉しい。
大きく揺れるその様が、とってもいやらしくて、好い。
「、やらしい」
「っ――ぅンっ…」
「でも、可愛い」
はあ、と自分でもいやらしいなと思う吐息を零すと僕は堪らなくなっての中を滅茶苦茶に掻き回す。
掻き回しながら片手を離しての一番弱い核を潰すと、悲鳴が上がった。
「あ、やだぁ、やぁあっ…」
いやだって言いながらの中がじっとりと濡れる。
腰が焦れったく揺れる。
口から甘ったるい声が、瞳がとろんと溶けて、全てが、僕が与える快楽で塗り潰される。
「ん、…あ、そ、そうじっ」
僕で塗り潰されながらは僕を求める。
酷い言葉で嬲る僕を、滅茶苦茶に掻き回して泣かせる僕を、僕だけを、
求めて縋り付いてくる。
「もっと、呼んで」
「ひ――ぁあっ」
抱えていた脚を放り出して、胸を合わて奥をぐりぐりと押し上げながら僕は求める。
名前を呼んで。僕を欲しがって。
誰にも触らせない。
誰にも奪わせない。
君は、
僕の、
「僕だけのもの」
がどうして僕にあんな事を言いだしたのか。
あんな事を言いだして僕に身体を差し出したのか。
分かっていた。
気付いていた。
彼女が怖がっていた事。
何を恐れていたのか。
でも、
気付かなかった。
何を決意したのかまでは……
「……」
僕は目覚めて――本気で怒りを覚えた。
自分の迂闊さに。
甘さに。
それから、
彼女の弱さに。
「の馬鹿」
隣には、彼女はいない。
絶対に離さない。そう思って握りしめた手の中には、何もない。彼女の温もりさえ消え失せていて、僕はひたすら、自分
の甘さを呪った。
が優しい女だって知っていたのに。
どこまでも愚かなほどに優しい女だって知っていたのに。
彼女が「それ」を選ぶなんて微塵も思わなかった。
いや、思いたくなかったのかもしれない。
は僕の傍にいると、ここから離れるはずないと信じ込んでいたから。
でも、はいなくなった。
僕の為に、いなくなった。
きっと風間に僕が殺されるとでも思ったんだろうね。
その優しさは、僕にとっては酷い仕打ちだと気付いて欲しい。
あんな鬼に負けるほど僕は弱いって思われたのかな。冗談じゃないよ。
僕はまだ戦える。
それなのに、行ってしまうなんて酷い。
僕を信じてくれなかったの?
誰より僕を愛してくれていた癖に、信じられなかったの?
悔しくて情けなくて、むかついて、僕は奥歯をぎりりと噛みしめた。
血が滲むほどに噛みしめても、もう心配してくれる人はいない。
もう、彼女は、此処にはいない。
どこかへ消えてしまった。
とても大切な人だったのに。
僕にとって唯一の女だったのに。
――だった?
僕は自分の中で零した言葉に、驚く。
どうして終わった事になっているんだろう。
何も未だ終わっていないのに。
確かにはここにはいない。
でも、この世からいなくなったわけじゃない。
僕の傍にはいないけど、この世のどこかにはいるんだ。
そう、
終わりじゃないこれは。
「残念だけど」
彼女の優しさを、彼女の決意を、僕は裏切る事になるかもしれない。
彼女を泣かせる事になるかも知れない。
でもそれでも、このまま忘れてあげる事なんて出来ない。
僕はそうっと晴れやかな空を見て、笑った。
「僕、逃げられると追いかけたくなる質なんだ」
きっと同じ空を彼女も見上げているだろう。
これこそが正
鬼の血を引いていると知って逃げようとする
にどう対応するか。
総司は追いかけるタイプなので、追いかけさ
せてみました。
そして追いついてぼろっかすに言うと良い。
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