【土方歳三 昔話パロ】

  配役
  語り:近藤勇
  桃太郎:沖田総司
  おばあさん:
  おじいさん:土方歳三


  昔々、あるところに土方じいさんとばあさんが住んでおりました。

  「土方さんはともかく…私まだ若いのに」
  「そりゃどういう意味だ?」

  仕方ないだろう!
  女子が…他にいないんだから。

  「近藤さんが言うなら…仕方ないなぁ…」

  こほん。
  おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川に洗濯に行きました。
  おばあさんが川で洗濯をしていると川上から大きな桃がドンブラコドンブラコ…

  「……」

  ドンブラコドンブラコ…

  「…さて、帰るか」

  ちょっと待て
  桃を拾わないのか!?

  「いや、だって…見るからに怪しい…」

  いやいや確かにそうだが、このままじゃ話が進まないだろう!

  「それにあれ中に入ってるの総司なんでしょ?
  拾わなくても自力で来るって」

  いや、その

  「じゃあ帰りますね〜」

  ま、待ってくれ!おいっ!
  お〜いっ!?


  *****


  「おい…本当に良かったのか?」
  「何が?」
  「いや…近藤さんあっちで軌道修正させるのに奔走してるぞ」
  「大丈夫ですよ。
  そのうち総司が勝手に乗り込んできますって」
  「……」
  「それに万が一総司が来なかったら私が鬼退治してきますから」
  「いやいやどこの世の中に鬼退治するばあさんがいるってんだ」
  「仕方ないでしょ?
  桃太郎がいなかったらその穴埋めはおじいさんおばあさんがしなくちゃいけないし…」
  「……」
  「まぁ別に軌道修正さえ出来たらなんでもいいんですけど…出来ないなら…て土方さん、なんで近づいて…」

  「ようは桃太郎がいりゃあいいんだよな?」

  「…ちょっとなにその、顔…」
  「総司じゃなくてもいいんだよな?」
  「ちょっと、なんでそんな厭らしい目…」
  「知ってるか?…桃太郎の本当の話を…」
  「本当って…な、に…」
  「本当の話は、桃を食ったじいさんとばあさんが若返って…」
  「……わか…がえって…っ」
  「二人の間に出来たガキが…桃太郎だ。」
  「で…き…」

  「――てことで…大人しくしろよ?」


  「――っ!」

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  その後無事に飛び込んできた桃太郎はおじいさんと斬り合いになり、助けに来た犬・猿・雉と共に、は無事鬼ヶ島
  に鬼退治に行きましたとさ‥‥
  めでたしめでたし。
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【土方歳三 ギャグ?】

  「おまえくらい可愛い女だったら良かったんだけどなぁ。」

  雪村千鶴は‥‥小さくて、愛らしい女だと男は思う。
  女、というよりもまだ幼さが残るから少女と言った方が正しい。
  弱いくせに他者を守ろうとするお節介な所があるけれど、一生懸命で真っ直ぐな人だ。
  その真っ直ぐさは色恋沙汰でも遺憾なく発揮され‥‥まあお陰で沖田というひねくれ者にからかわれて些か可哀想ではあ
  るけれど‥‥見ていて羨ましい所もあった。
  彼女は、思った事を真っ直ぐその表情に乗せるから。

  怒っていれば不機嫌そうに頬を膨らませ、楽しければ無邪気な笑みを浮かべてくれる。
  そして彼をどれだけ愛しているか‥‥というのさえも、真っ直ぐに表れる。

  「おまえくらい可愛い女だったら良かったんだけどなぁ。」

  つい、ころころと表情の変わる少女を前にそんな言葉を漏らしてしまった。

  というものの、彼の愛しい人は、思った事を素直に表現してくれないのである。
  元来の意地っ張りな性格故だろうか‥‥
  怒っていても怒っているとは微塵も出さないし、悲しくても笑顔だ。
  おまけに自分を見る目にあまり「恋情」とやらを見せてくれない。
  人に隠している‥‥というのもあるだろうが、これはただ単に彼女が恥ずかしがり屋という理由もあるのだろう。
  「俺の事が好きか?」
  と聞いても、
  「好きじゃなかったらとても一緒にいられません。」
  とさらりと笑顔で返してくるのである。

  これが千鶴なら恥ずかしがってでも、
  「好きです」
  とかなんとか返すのだろう。

  気に入らない。
  しかし、男が何より気に入らないのが‥‥彼女の自分への無関心ぶりである。
  無関心‥‥というのは、彼の女性関係のことで、
  例えば土方が、用事があるといって色町に出掛けたとしても、
  「酒を飲んで酔いつぶれないでくださいよ」
  と苦笑でからかわれる程度だ。
  場所は色町なのである。
  確かに酒を飲む場所ではあるが、そこで酒や話や舞を披露してくれるのは煌びやかに着飾った女達なのである。
  人によっては気に入った花魁と一夜を共にする男だっている。
  昔は土方もそうだった。

  酒の代わりに白粉のにおいをさせて帰ってきた――花魁が寄りかかってきたためであり疚しい事は何一つしてない――と
  いう事もあったが、それでもは気にした様子はなかった。
  ただ、

  「色男―」

  とやはり茶化されただけである。

  普通の女ならば「私というものがありながら」と詰る所じゃないのだろうか?
  多分千鶴ならば、涙を浮かべて悲しげな顔をするだろう。
  やはり彼女も「ひどい」と詰るだろうか?

  どちらでもいい。
  ただ、何らかの反応を返してくれるはずだ。
  そこに自分に対する執着というのも見えるはずで‥‥


  ――簡単に言えば、に嫉妬して欲しいのである。


  詰られてもいい。
  泣かれてもいい。
  ただ、自分に対する執着というのを、彼女なりの独占欲というのが見えればいいのである。

  そうしたら‥‥


  ぱりーんっ

  唐突に何かが割れる音がしてはっと我に返った。
  見れば、丁度部屋に入ってこようとしていたが湯飲みを落として割ったようだ。

  「?」

  しかも何故か、彼女は驚愕の表情を浮かべている。

  どうした?
  と訊ねようとすればその驚愕の表情が一瞬にして消え、代わりに、

  「っ!?」

  満面の笑顔へと変わる。

  しかし、その身体からは隠す事もせずに殺気を放っている。

  「土方副長‥‥?千鶴ちゃんに何をしたんですか?」

  笑顔のまま、は問いかけた。

  千鶴?
  え?なにが?

  と彼女の指摘に隣に座っていた彼女を見ると、何故か彼女は顔を真っ赤にしており‥‥

  すら、
  と背後で抜刀する音が聞こえた。
  が久遠を抜きはなった音だ。

  「ちょ、待て!俺は何もっ‥‥」
  何もしていない!
  そう何もしていない。
  ただ、

  「可愛い女」

  という言葉に勝手に初な千鶴が赤面しただけである。

  まあ無理もない。
  相手は、
  新選組一と言われる美男‥‥土方歳三なのである。
  そんな男に「可愛い」と言われて頬を染めない女は、世界広しといえ彼の恋人くらいしかいないだろう。

  しかし、男の言い訳も虚しく‥‥

  「ええい!問答無用!!そこに直れ、この女たらしーー!!」

  目をつり上げた愛しい人は本気で斬り殺そうと刃を振り下ろしてくるのだった。

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  嫉妬ネタ←
  副長‥‥残念な感じです( ´艸`)
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【土方歳三 ほのぼの】

  「なに?私に嫉妬なんてして欲しいんですか?」

  はきょとんとした顔で訊ねた。

  ああそうだ、そうだから、とりあえずその刀を下ろしやがれと鬼の副長は些か乱れた呼吸の元呟く。

  理解して貰うのに時間が掛かったのは、その隙も与えないように斬りかかられていたからか。

  「問答無用」

  その言葉の通りに。

  「‥‥なんでそんな面倒くさい事?」
  おまえは本当に女か?と突っ込みたくなる。
  いや確かに『私だけ見て』とか制限されるのは煩わしい。
  だが、だからといって『仕事だから仕方ない』と容認されるのも寂しい‥‥というか、悔しい。

  「なんで悔しいんですか?」

  やっぱり指摘された。
  うぐ、と男は言葉に詰まる。
  一回りもこちらが上だというのになんだか手玉に取られている気がする。
  年上の威厳とやらは一体どこへ?

  「‥‥土方さん?」

  ふいっとそっぽ向いてしまった彼には仕方ないなぁと苦笑を漏らして声を掛ける。

  「なんで悔しいんですか?」

  先ほどよりも少しだけ優しい声に、うっかりと応えたくなるのは惚れた弱みだろうか。

  「‥‥俺だけみたいで、不公平だろうが。」

  ぼそっと憮然とした面もちで彼は白状した。

  そう。不公平なのだ。

  彼はが他の男と話をしているのを見るのが気に入らない。
  それが例え仲間だとしても‥‥面白くはなかった。
  誰にも笑いかけてほしくなくて、誰の事も見て欲しくなくて。
  見せたくなくて。
  もういっそ閉じこめてやれればと思ったときもある。

  「俺だけが‥‥おまえの事を独り占めしたいなんて‥‥」

  不公平じゃないだろうか。

  気持ちは同じはずなのに。
  同じくらい好きなはずなのに。
  いや、もしかしたら自分の方が大きいのだろうか。
  だから、こんなに彼女を独占したくて堪らないのだろうか?

  「‥‥ああくそ‥‥俺ぁ、いつからこんな駄目な男になったんだ。」

  吐露をしてしまってから、情けないったらない、と溜息を漏らし、くしゃっと前髪を掻き上げる。

  本当なら自分の方が年上なのだから。
  もっと寛容になってあげないといけないというのに。

  「駄目なんだよ‥‥おまえの事となると‥‥」

  寛容になんかなれない。
  彼女が他の男を見ているのに。
  自分以外を見て笑っているのに。
  許すなんて出来ない。

  「‥‥ひじかたさん‥‥」

  きゅきゅん、と男の本心を告げられて胸がときめく。
  普段はかわいげの欠片もないというのに、こういう姿を見せられると母性本能が擽られて堪らないではないか。

  思わず、

  「‥‥あ?」

  その頭にぽんと当て乗せて、よしよしと子供にするみたいに撫でてしまう。

  瞬間、男の顔が凶悪そのもののそれになったが、母親の心境である彼女にとっては気にならない。

  「土方さんって‥‥可愛い人ですね。」

  馬鹿にしてんのか。
  内心で思いきり毒づいた。

  この世のどこにも「可愛い」と言われて喜ぶ男はいない。

  「情けなくて悪かったな。」
  「悪いなんて言ってないです。」
  くすくすとは笑いながら、
  「嬉しいです。」
  目元をそっと細めて笑うその表情が、なんだか大人っぽくて――癪だと男は思った。

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  嫉妬ネタ続編
  あのあと本気で刀振り回して暴れ回ったと逃げ回る土方の図
  本当に残念な副長の図(笑)
  そして続く→裏へ‥‥
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【沖田総司 甘】

  青と赤のまぁるい飴。

  「どっちがいい?」

  無邪気な顔で問いかける沖田に、は迷わず、

  「青。」

  と答えた。



  毒々しい赤は、意外にも美味しかった。
  からころと丸い飴を口の中で転がしながら、ねぇ、と隣で何か書物に目を通す彼女に声を掛ける。

  「赤いのはどんな味?」

  問いかけに同じようにころころと口の中で飴を踊らせるはうーんと首を捻り、

  「甘くて美味しいかな?」

  と答える。

  色が違うけれど、そうそう味は変わらないだろう。
  所詮は、同じ物を溶かせて固めただけなのだから。

  だけど沖田はすごく興味があった。

  「ねえ、交換しない?」

  彼女の口の中で転がり続ける青い飴玉に。

  「‥‥は‥‥?」

  提案には一瞬、手を止め、すぐにそんな間の抜けた声をあげてこちらを怪訝そうに見る。
  何を言い出すんだと言いたげな顔で。

  「交換って‥‥もう舐めてるっての。」
  まさか出して洗って交換するとでも言うのだろうか。
  「同じ味だって。
  そんな交換するようなもんじゃ‥‥」
  は苦笑で受け流そうとするけれど、彼はどうしても交換したかった。
  ぐいと身を乗り出して距離を縮める沖田に、はぎょっとして身を引いた。
  既にその身体は腕の中に捕らえられていたのだけど。

  「ちょっと待て待て、なんだこの展開は!」
  「うん?
  だから飴の交換をね‥‥」

  にこりと笑う沖田にはまさかと口元を引きつらせる。

  「その、私の口の中に手を突っ込んで‥‥とかいうんじゃ‥‥ないよな?」
  「そんな乱暴な事、女の子にするわけないでしょ?」

  獰猛な色を浮かべる翡翠の瞳に、そいつはどうだかなと内心で呟いた。
  指を突っ込むんじゃないとしたらもしかして、

  「口移しーとか?」

  まさかね、とあははと笑ったは、

  「‥‥そのまさかだよ。」

  これまたあははと笑った沖田の言葉に、大きく目を見開いた。
  同じように開きかけた唇は‥‥いつの間にか塞がれていた。



  から、
  ころ、


  再び口の中で飴が転がる。

  からころ、と沖田は舌で右へ左へと転がしながら、にこにこと上機嫌で呟く。

  「うん、美味しい。」
  「‥‥‥」

  ああそうかよ、とは疲れたような溜息を漏らした。

  彼女の口の中には毒々しい赤の飴が、随分と小さくなって転がっていた。



  「ね、もう一回交換しない?」
  「ば、馬鹿かおまえは!」
  「いいじゃん、交換交換。」
  「わ、やめろって!
  今度赤い飴買ってきてやるからっ」
  「僕が欲しいのは新しい飴じゃなくて‥‥」

  の‥‥

  続く言葉は再び重なった唇の中で溶けて、消えた。

  からんと重なった唇の中でもう一度‥‥赤と青は行き交うのだった。

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  無邪気に見えて、エロスなのが沖田総司という人だと思ってる。
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