いつもは素直に好きだと言えない。
でも本当はいつでも好きだと言葉にしたいほどに想ってる。
勿論照れくさくてそんな事は面と向かって言えそうにもないけど、
今日だけは、
ちょっとだけ、
勇気を振り絞ってみる。
件名:お疲れ様です
本文:
お仕事お疲れ様。
忙しいのにメールくれてありがとう。
仕事だから仕方ない事かも知れないけど、あんまり無理しないでね。
私は大丈夫だから。
それじゃあ、お休みなさい。
明日も仕事頑張って。
それから、
大好き
To:土方さん
件名:無題
本文:今、電話出来るか?
件名:こんばんわ
本文:えと、大丈夫です
ピリリリリ――
「も、もしもし?」
『ああ、俺だ。こんな時間に悪い』
「いえ、その、起きてたんで大丈夫です」
『そうか‥‥で、さっきのメールはなんだ?』
「なんだって‥‥ご苦労様メール‥‥」
『それじゃねえよ。‥‥最後の』
「‥‥え、と‥‥なんか、まずかった、ですか?」
『まずいに決まってんだろ。なんでメールなんだよ、直接言え』
「い、言えないからメールにしたのに! 私がその一文打つのにどれだけ緊張したとっ」
『んな事ぁ知らねえよ。こういう事はメールで言うな。口で言え』
「ご、ごめんなさい」
『謝らなくて良いから、俺の事をどう思ってるのかちゃんと言ってくれ』
「‥‥‥‥‥好き、です」
『俺の事、だよな?』
「決まってる。それ以外に好きにならない」
『だよな。‥‥俺も、おまえが好きだよ』
「‥‥私だって、土方さんが大好きです」
『ああ、俺もだ』
「‥‥‥‥」
『‥‥あー、やっぱり、駄目だ』
「え?」
『こういうのは電話で聞くもんじゃねえな。やっぱり直接聞かねえとな』
「直接‥‥って‥‥」
『あと、10分で着く』
「え? ‥‥着くって、え、今から家に来るの?」
『ああ、今から行くから、さっきのもう一回言ってくれ』
「や、やだやだ! 直接なんて無理に決まってるじゃないですか! そ、それに仕事終わって疲れてるんだから真っ直ぐ
家に帰って下さいよ!」
『そんなの俺の勝手だ。‥‥いいか? あと、7分くらいで着くから』
「って言うか、元からこっち来るつもりだったでしょ!?」
『はっ、バレたか』
「ひ、酷い! 電話でも言わせたくせに、二度も言わせるなんて!! 絶対ドア開けないから!!」
『じゃあ合い鍵を使わせてもらうとするか』
「ふ、不法侵入!!」
『恋人が素直じゃなくて仕方なく、だ』
「し、寝室のドアの鍵掛けておくもん!」
『ほぅ、そりゃ、抱いてくれってお強請りか? 俺としちゃ大歓迎だけどな』
「ち、がっ、何言ってるんですか!? そんなわけ‥‥‥」
『因みに――」
ガチャ、
「寝室のドアの鍵、結構簡単に開けられるんだぜ。まだ締めてなかったみてえだけどな」
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To:総司
ピンポーン――
「ねえ、さっきのメール、何?」
「‥‥そ、総司。あの、今何時だと‥‥」
「そんな事どうだって良いよ。それよりもメールの事」
「良くないよ! 今夜中の一時‥‥って、総司、怒ってる?」
「怒ってるに決まってるでしょ。あんなメール寄越されたら」
「あ、そ、の、ごめんなさい。‥‥やっぱり迷惑、」
「あのね。僕が君にメールもらって迷惑なんて思うはず無いでしょ? 例え夜中だったとしても、君からのメールは
嬉しい」
「そ、そうですか‥‥」
「でも、ああいうのは駄目」
「だ、だめって」
「大事な事はちゃんとの声で言って貰わないと、駄目なんだよ」
「で、でも、恥ずかしくて」
「恥ずかしくても言うの。‥‥文字なんて気持ちがどれだけこもってるか分からないんだから」
「ごめん」
「それで、僕の事‥‥どう思ってるの?」
「‥‥‥‥」
「無言って事は、どうとも思ってないの?」
「‥‥‥‥‥‥すき」
「‥‥‥‥聞こえない」
「す、好き」
「誰の事が好きか、ちゃんと言って」
「そ、総司の事が好きだって!」
「怒鳴られちゃ気持ち伝わらないよ」
「‥‥そ、総司の事が、好き、です」
「詰まらずに」
「も、もういいでしょ! ちゃんと言ったじゃん!」
「ちゃんと言ってないよ。ほら、もう一回」
「もうやだ! 言わない!」
「」
「私寝るからもう‥‥わっ!?」
「じゃあ、僕も言うからもう一度だけ言って」
「‥‥‥」
「の事、大好きだよ」
「私も‥‥総司の事、大好きだよ」
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To:はじめ
件名:こんばんは
本文:夜分にすまない。
今、電話をしても良いだろうか?
件名:こんばんわ
本文:大丈夫だよ
ピリリリリ―
「もしもし」
『夜分にすまない。斎藤だ』
「うん、こんばんわ」
『あ、ああ』
「‥‥‥な、なに?」
『そ、その‥‥先程のメールなのだが‥‥』
「あ‥‥うん‥‥」
『その‥‥だな。とても嬉しかったのだが、やはりあのような大切な事は、その、メールで済ませぬ方が良いかと思って
電話をさせてもらったのだが‥‥』
「ご、ごめん。ちょっと、恥ずかしくて」
『あ、ああ、分かっている。あんたに恥を掻かせるような真似をすべきではないと分かっている。‥‥だが‥‥』
「‥‥‥‥一?」
『その、俺の我が侭かもしれぬが‥‥』
「‥‥‥うん」
『‥‥あんたの声で、聞かせてはくれぬだろうか?』
「‥‥‥」
『‥‥‥‥‥す、すまないっ。あんたを困らせるつもりは、』
「好きだよ」
『っ』
「一が、好き」
『‥‥‥っ』
「一の事が、大好き」
『お、俺も、あんたの事が‥‥好きだ』
「‥‥‥‥うん」
『‥‥‥‥‥ああ』
「‥‥‥‥」
『‥‥‥』
「‥‥‥」
『‥‥その、夜分にすまなかった』
「ううん、平気。これから帰るんだよね? 気をつけてね」
『‥‥‥ああ。‥‥‥。迷惑だとは分かっているのだが‥‥』
「なに?」
『これから、あんたに会いに行っても、良いだろうか?』
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To:平助
ピリリリリ――
「もしも、」
『うわ、やべ、出ちゃったよ! うわぁ、どうしようっ』
「‥‥‥平助?」
『あー! えと、ごめん、こんな時間にっ』
「ううん、平気。どした?」
『いや、その、あの、えっと‥‥』
「平助、落ち着いてよ」
『お、オレは落ち着いてる! だから、さっきのメールだよ!』
「だからの意味が分かんないんだけど、さっきのメール?」
『そう! あれ、なんだよ!』
「なに‥‥って、お疲れ様メール」
『そうだけど、そうじゃなくて! その後!!』
「‥‥あ」
『なんで、メールなんだよ!』
「なんで‥‥って‥‥そりゃ‥‥恥ずかしいから」
『恥ずかしいって、オレの方が恥ずかしかったじゃんかよ!』
「‥‥オレの方がって‥‥」
『オレ、一人でメール見てうわぁってなって、にやけそうで、もうすげぇどうしたらいいのか分かんなくなったんだから
な!』
「‥‥それ、迷惑だったって事?」
『ちが! そうじゃなくてっ‥‥‥』
「‥‥じゃなくて?」
『だからその‥‥あーっ!!』
「平助?」
『とにかく、オレは嬉しかったの! すげぇ叫んじまいそうなくらい嬉しかったんだよ!! でも、こういう事はメール
じゃなくて直接、言って欲しかったんだよ!』
「そ、それは‥‥申し訳無い」
『っていうか、ほんと、こういう事メールでって駄目だろー』
「そ、そうなの? ごめ‥‥」
『よし! 今から行く!』
「え!? い、今から!?」
『ああ。今から行くからこれ、ちゃんとオレに言ってよ』
「い、いやでも、明日早いし、それ以前に心の準備が出来てないんだけどっ」
『そんなのオレだって同じなんだからいいじゃん! 今から、そうだ、20分くらいでチャリかっ飛ばして行くから!』
「ちょ、私了承してな‥‥って、こら、平助!?」
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To:左之さん
ピリリリリ――
「も、もしもしっ」
『あ、おう。か。いま、ちょっと良いか?』
「あ、は、はい」
『こんな時間に悪いな。もう寝る時間だってのは分かってたんだが‥‥どうしても、話がしたくてよ』
「えと、はい」
『さっきのメール‥‥俺のこと気遣ってくれたんだよな。ありがとよ』
「いえ、その、お疲れ様です」
『おう。お疲れさん。‥‥それと、最後の一文はすげぇ嬉しかった』
「‥‥」
『今日の疲れが一気に吹っ飛んで‥‥なんつーか、年甲斐もなく浮かれちまったよ』
「そ、そうですか」
『ああ。‥‥で、だ』
「はい」
『メールでも充分嬉しかったんだが‥‥出来たら、おまえの声でもう一度言っちゃくれねえか?』
「‥‥え、えと‥‥」
『おまえが精一杯勇気を出してメールをくれたってのは分かってるんだけどな。それでも、』
「‥‥」
『おまえの声で、聞きたい』
「左之さん」
『ん?』
「好き」
『俺もだ』
「大好き」
『俺も‥‥愛してる』
「‥‥」
『‥‥』
「‥‥ねえ、左之さん」
『あー、くそ。今からおまえに会えたら良いのになぁ。‥‥とは言っても、この時間じゃ流石に‥‥』
「会いたい」
『え?』
「会いに行く、今から」
『お、おい、ちょっと待て。行くってこれから出てくるのか?』
「うん」
『ば、駄目に決まってんだろ! 夜中に女を出歩かせるわけにはいかねえって』
「でも、どうしても会いたいんだもん」
『会いたい‥‥って、おまえ、そういうこと言ってくれるなよ。堪えらんねえだろうが‥‥おい、? まさかおまえ』
「猛ダッシュで行くから、待ってて下さい」
『馬鹿、そんなわけに行くか。俺が行くからおまえは‥‥』
「それじゃあ私の気が済まない。だから、」
『分かった。途中で捕まえてやるよ』
君の声を聴かせて
最終的にみんな会いに来たって感じですよね。
まあ彼らが「好きだ」って言われて大人しく
していられるはずもないので‥‥
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