だから、取り替えた方がいいと何度も何度も言ったのにと沖田は内心で呟いた。
図書室においてある踏み台は、古くて、今にも壊れそうだったから、早く変えた方がいいと。
でも、図書委員の連中は「使わないからいい」と言って取り合わなかった。
だから、彼女がこんな目に遭った。
足下に積み上げた本を押しのけて千鶴へと手を伸ばしながら、沖田は心の中で呪いの言葉を吐く。
もし、千鶴ちゃんに何かあったら、絶対にただじゃ済まさない。
――図書委員はまだ沖田の怖さを知らないのだ。
ばさばさばさばさ、どさ、べしゃ。
激しい音を立てて本が落下してくる。
固い本が、柔らかな本が、
肩や、頭を容赦なく叩く。
ちょっと冗談じゃなく痛い瞬間があったが、沖田は避けなかった。
避けてしまったら‥‥腕の中にいる少女に当たってしまうから。
だから、全身で本を受け止めた。
本気で、落ちてきた本は全部燃やしてやると心に決めた‥‥心が狭いと言うなかれ。
やがて、ぱさ、と軽い本が最後のおまけにと沖田の頭をこつんと叩く。
そして、音が止まった。
「‥‥‥‥」
ゆっくりと目を開いて沖田は上を見上げた。
先ほどまでびっしり本が詰まっていた最上段には、もう一冊も残っていない。
全てが床に落ちてしまったらしい。
これで、本が落下してくることは、ない。
「千鶴ちゃん、大丈夫?」
そこで漸く腕の力を緩めた。
見れば彼女は驚いたような顔のまま、固まってしまっている。
怪我はない。
良かったと思いつつ、ふいに左手が何かに挟まれて動かない事に気付いた。
本、だろうか?
それにしては固くない。
いや、それどころか柔らかい。
あれ、このあたりに羊皮で出来た表紙の本なんて洒落たものがあったっけ?
この学園に限ってそんなものはない。
いやでもこれなんでこんなに柔らかいんだろう?
それになんでこんなに暖かいんだろう。
本に温もりなんてあるはず、ないのに。
そんな事を考えながら自分の手の先を探すべく視線を落として‥‥
「あ‥‥」
「‥‥‥」
手首から先が、
白い、それの下に消えていた。
白くて柔らかそうで、
なんだかいいにおいがしそうな、
千鶴の、
太股の下に。
ふにゃ、
僅かに指先が動いた瞬間、返ってくる柔らかい感触。
千鶴は硬直したまま、動かない。
「あ‥‥あの、その、千鶴ちゃん?」
大丈夫?
と沖田は小首を捻って、千鶴へと視線を合わせ、
その瞬間、
「いやぁああああああああ!!」
絶叫が、長閑な空を劈いた。
こんなことくらいで悲鳴を上げられたら‥‥えっちなんてできないじゃん(沖田)
おまえはそういうことしか考えてないのか()
可愛い可愛い僕の彼女
可愛い千鶴ちゃんが書きたかったんです☆
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