その日の彼はひどく酔っていた。
  一見、顔色も変わらず呂律が回らないという事もなければ、表情もいつもと同じで‥‥酔っていないようにも見えたが、
  実際、途中から意識はなかった。

  しっかりとした足取りで部屋へと戻っていったのを誰もが見ていたが‥‥彼が向かったのは自室ではなく、その奥。
  幹部の部屋の並ぶその中、唯一の女が眠っている部屋。

  「‥‥ん?」

  襖を開けると彼女は当然の如く目を開けた。
  意識を覚醒させた彼女は、

  「なんだ、一か。」

  すぐに、溜息を漏らして眠たそうな目をしてみせる。

  「どした?」
  何か用?とは乱れた髪をゆっくりと掻き上げ、それから、ふあ、と一つ欠伸を漏らす。
  斎藤は何も言わず、後ろ手に襖を閉めた。

  「‥‥一?」

  そして、ゆっくりと布団まで近付くと、

  ばふっ

  「わっ!?」

  彼女の上に倒れ込んだ。

  強い酒のにおいに、酔いつぶれて眠るのかと思いきや、

  「え‥‥っちょ!?」
  彼はの首元に顔を埋めたまま、空いている手で身体をまさぐり始めたのだ。

  突然の狼藉に一瞬、思考は停止し、すぐに、

  「ちょ、何してっ!」

  慌てて抵抗を試みる。
  抵抗‥‥とはいっても、相手は男、こちらは女。
  力の差は歴然で、の抵抗は彼の下でもぞもぞと動くだけで終わってしまった。

  「こんの酔っ払いっ!」
  目を覚ませと思いっきり髪の毛を引っ張る。
  ぶつりと何本かが抜けたが、彼はまったく反応を示さない。
  そうこうしているうちに、

  「あっ、んんっ」

  袷を割られてしまい、無骨な手が中へと侵入してきた。
  その手は迷わずの乳房へと伸ばされ、その大きな膨らみを掌で包む。
  両手でゆったりと円を描くように揉まれ、はその気はないのに感じてしまう。

  「や、あ、っ」

  円を描きながら、時折、たぷんと中央で左右の乳房がぶつかるように跳ねさせる。
  柔らかなそれは白桃を思わせた。
  かぶりついたらそれは甘そうだと。

  「‥‥ん‥‥」
  思ったままに斎藤は行動に移し、大きく口を開いて、膨らみを唇に食んだ。

  「っひっ」
  熱い口腔に含まれ、すぐに伸びた舌先が立ちあがった胸の先端へと伸びてくる。
  「や、やだ、なめっ‥‥」
  舐めるなと言いかけた言葉は、彼のねっとりとした舌の愛撫で遮られる。
  ざらついた舌が、赤い果実を丹念に舐め上げた。
  唾液を絡ませ、時折歯を立て、吸い上げる。
  「んっ、んっ」
  まるで子供が母乳を飲むかのように果実を吸われ、は涙目になって唇を噛みしめた。
  そうしながらもう片方の乳房は絶え間なく揉まれた。

  丹念に片方の乳房を味わった後、

  「‥‥ぁうっ」
  指で弄られていたもう片方を吸われる。
  勿論空いている胸は彼の指が弄った。
  唾液で濡れた頂をきゅと摘まれ、下肢に熱が集まってくるのが分かった。

  立ちあがった頂を舌先で擽るように弄られるのが堪らなく気持ち良かったが、生憎とそれだけでは燻った熱は収まらない。

  脚の間が濡れてくるのが分かって、強い疼きには強請るように男を呼んだ。
  しかし、

  「ふ、ぅっ!」

  男は聞いていないらしく、また、指と口とを交換して‥‥乳房を責めた。



  「ん、ぁっ――
  きゅと乳首を抓られ、は軽く達する。
  ひくんと背を撓らせ、軽く痙攣を繰り返した後、じわりと浮かんだ汗が襦袢へと吸い込まれていく。
  何度目‥‥だっただろう?
  もう何も考えられなくなるほど、胸への愛撫だけで軽い頂を何度か極めた。
  軽く達するたびに、身体の中から蜜は溢れてくるというのに、一向に疼きが収まらない。
  そればかりか達するたびに疼きが酷くなり、は気がつくとしゃっくりを上げて泣きだしていた。
  苦しくておかしくなりそうだった。

  胸に食らい付く男の肩に、きつく爪を立て、何度も彼の名を呼ぶ。
  一向に酔いから覚めない男は、一心に乳房を責め立てていた。
  そんな男の脚の間‥‥彼の雄もいつの間にか形を変えている‥‥というのに、彼は入れようとしない。

  「は、じめぇ‥‥」

  常では絶対出さないような甘えた声で名を呼ぶのも何度目だろう。
  そうして腰を彼の下腹部へとすり寄せた。
  まるで、彼の脚の間にある、それが欲しいというように‥‥

  「‥‥ん‥‥」
  不意に、乳房に食らい付いていたそこから小さな声が漏れる。
  一度瞳は閉じられ、軽く痙攣して、開く。

  その瞬間、

  「っなっ!?」

  男は焦った声を上げて、がばりと身を起こした。
  その顔は真っ赤に染まっており、目は困惑し、揺れていた。
  漸く‥‥正気に戻ったらしい。
  正気に戻ったはいいが、この状況に彼は驚いた。
  無理もない。
  目を覚ましたら、自分は女を組み敷き、なおかつ彼女の乳房に食らい付いていたのだ。

  「助平」
  とか
  「馬鹿」
  とか色々言ってやりたい言葉があったはずだ。

  だが、は身を起こすと、

  「んっ」
  「っ!?」
  驚きに口を開いた男へと噛みつくように口づけ、今度は自分が彼を押し倒してしまう。
  どさ、と後ろに倒された瞬間、男は動揺のあまり後頭部を打った。
  くぐもった声が唇に吸い込まれるが、そんな事を構っている余裕はなかった。

  「っ‥‥!?」

  彼女は斎藤の上に、馬乗りになると、彼の着物とその下を手早く乱して、彼の雄を取りいだした。
  「ま、待てっ!」
  狼狽える彼を放って、は一度きゅっとそれの根本を掴み、向きを変えて勃たせる。
  そうして息を一つ吐くと、

  「は‥‥ァッ‥‥」

  熱く熟れたそこへと押し当て、ゆっくりと腰をおろしはじめた。

  「っ‥‥」
  その様子はひどく扇情的だった。
  喉を晒し、男の腹に手を着いて‥‥太い楔を飲み込む様は、いやらしく‥‥だけど美しい。
  「あっ、はぁ‥‥」
  熱く脈動する胎内に迎え入れられ、斎藤は戸惑いながらも危うく達してしまいそうになる。
  下腹に力を入れ、女の柔らかな太股に爪を立てた。
  「‥‥」
  掠れた声で呼ぶのを求められていると知った女は目を眇め、ずくんと最奥まで楔をねじ込んだ。
  「ひっ――
  この瞬間、漸く与えられた強い快楽には背を撓らせて上り詰めた。
  同様にきつく締め付けられた斎藤も低くくぐもった声を上げ、

  「ぐ‥‥ぁっ――

  びくんと身体を震わせて白濁を吐き出す。
  熱い飛沫を身体の奥に受け、は軽く余韻を味わうようにひくひくと身体を震わせた。

  やがて、繋がった所からとろりと男の精が零れ、それが斎藤の太股を伝い落ちた時、はちらっと揶揄するような視線
  を向ける。

  「っ」
  斎藤は慌てて視線を背けた。

  これではあまりに早すぎた。
  いや実際は、早いどころじゃなく散々焦らされた後の交わりで‥‥漸く、といったところだが、先ほど正気に戻った彼に
  とっては突然の挿入と、早急な射精、である。
  情けないやら恥ずかしいやらで、目が合わせられない。

  「はじめ。」
  そんな彼をは甘ったるい声で呼ぶ。
  かと思ったら、顔をこちらへと近づけてきた。
  「はじめ。」
  髪から覗く真っ赤な耳に優しく呼ぶ声を注いで、
  「ん」
  「っつ」
  耳殻を噛む。
  びりと走る痺れは、即座に下肢へと到達し、咥えこんだ雄がむくりと中で固くなるのをは感じた。
  「また、大きくなった」
  助平とからかうように、挑発するようには言う。
  「やめ‥‥」
  止めろといえば、彼女は執拗に責めた。
  いつもとは逆の立場で、耳朶を強く噛まれ、耳孔に舌を差し込まれる。
  ぞくりと走る快感に、果てたばかりだというのに一気に雄は硬度を取り戻した。
  そして、男の理性は同時に、
  「んっ!」
  崩れる。
  「ぁっ」
  瞳に激しい情欲を灯した男は、顔をへと向けると、その手を伸ばして女を引き寄せた。
  「んんっ!」
  そして、唇を奪い、熱い舌を絡ませ、強く吸い上げる。
  そうしながら下から掬い上げるように豊かな胸を掴んでかりかりと頂を爪の先で弄ると、今度はの裡がきゅっと締
  まった。
  「ぁっ」
  柔らかく動いた瞬間にどろりと吐き出したものが零れ、思わずが腰を浮かすと、逃すまいと男は下から腰を突き上げた。
  「やっ、うっ」
  離れようとする唇も捕らえ、上体を起こして深く口づけながら腰を突き上げる。
  それに必死に応えるかのように、は男の逞しい背へと手を回して、自身も緩く腰を揺らしながら、舌を絡ませる。
  「っ‥‥」
  は、と熱い吐息がこぼれ落ちる。
  呼びかけながら強く女の中を擦り上げれば、甲高い悲鳴が唇から漏れた。
  「‥‥」
  「や、これ‥‥すごく‥‥」
  目を細め、は気持ちいいと囁いた。
  「ああ‥‥」
  俺もだと男は余裕のない様子で応え、更に腰の動きを早める。
  やがて濡れた音が激しくなり、互いの動きが忙しなくなっていき、

  「ん、ッア――

  細い身体を抱き潰すようにして、二度目の絶頂を迎えた。


  に酔え




  酒関連で書きたいと思ったが、まさか裏とは(笑)