「なるほど‥‥」
  なんとか斎藤はの下から這い出し、事の説明をし終えた頃に、漸く、漸く、二人の哀れみの目から解放された。
  ほぅ、と疲れ切った溜息を漏らす斎藤を後目に、沖田は苦笑でに向き直る。
  「らしいね。」
  そういう突飛な所、と言われ彼女は不満げに唇を尖らせた。
  「おまえのせいで、一の着物着れなかったじゃないか。」
  「ああごめんごめん。」
  申し訳の欠片もない声で言われ、はむーっと眉根を寄せた。
  「代わりにおまえが脱げ。」
  総司、と名指しされ、沖田は別段驚いた風も、嫌そうな風もなく、
  「いいよ。」
  と言って立ち上がった。
  そして緩慢な動きで帯を緩めるので、おいおいとはそれを止めた。

  「ここで脱ぐな。隣に行け。」
  「え?だって面倒くさいでしょ?」
  「面倒とかそういう問題じゃないだろ。」

  目の毒、と言えば彼はにんまりと猫のように目を細めて、笑う。

  「今更恥ずかしがる仲じゃないじゃない。
  だってもう、散々見せた――
  「黙れ変態」
  べし、とはその顔を思いっきり叩く。
  あいたとこれまた痛くもなさそうな声を上げ、仕方ないなと彼は苦笑して、隣室へと消えていった。

  「‥‥」
  何か物言いたげな斎藤の視線が向けられる。
  さっきは自分の着物を脱がそうとしていたくせに、その違いはなんだ、と言いたげだ。
  その視線を真っ向から受け、は至極当然と腰に手を当てて口を開いた。
  「ほらだって、見せつける相手を脱がしても面白くないだろ?」
  脱がすなら抵抗する人間の方が良い、とこれまたよく分からない持論に斎藤は思いきり眉根を寄せた。
  「‥‥」
  その向こうで今まで黙っていた原田が、
  「前から聞いてみたかったんだけどよ?」
  腕を組み、斎藤の前で隙なく構えるに声を掛けた。
  「‥‥総司とおまえは、どういう関係なんだ?」
  そういえば。
  先ほどのやりとりを聞いていると、ちょっとそのあたりは聞いておきたい。
  確か沖田は、
  今更恥ずかしがる仲じゃない、とか言っていたが、それは一体‥‥
  「‥‥」
  無言の斎藤の眼差しも向けられ‥‥

  「‥‥総司ー、もう着替え終わったよねー?」
  そっち行っていいー?
  とはそそくさと逃げるように部屋を後にした。



  「‥‥なんかあんまり似合わないな。」
  そういう格好は、と原田は出て来るなり言い放った。
  大きすぎる‥‥という理由を除いても、は沖田の着物は似合わない気がする。
  なんというか、
  「地味。」
  「左之さん、それ僕に喧嘩売ってるのかな?」
  にこにこと沖田は笑いながら刀の柄に手を伸ばしている。
  因みに沖田は今、襦袢の上に適当な着物を羽織っている状態である。
  「そうじゃねえよ。
  ただ、が着るには地味すぎるってやつだよ。」
  まあ言われてみれば確かに、
  が着るには地味すぎる色合いだ。
  沖田が着ている着物の色味は、少しばかり落ち着いた色合いだ。
  肌の露出も少なく‥‥まあ、控えめに言っても‥‥地味だ。
  「普通だな。」
  斎藤も率直な意見を述べる。
  「普通だよねぇ‥‥」
  沖田も自分の着物ながら、そう呟き、ふと、何か違和感を覚えて目を細めた。

  なんだろう。
  おかしい気がする。
  自分が着ているときと何かが違う。
  変だ。
  なんだろう?

  じーっと彼は上から下までその姿を見遣った後、

  「あ」

  それに気付いた。

  途端、口元に笑みが浮かんだ。

  「、着方が違うよ?」
  「え?なに?」

  言われては首を捻る。
  何か間違えただろうかと自分の服装を見るが‥‥別段おかしなところはない。
  一体なんだろうと首を捻ると、沖田はだからぁ、と呟きながら近付いてきて、

  「僕と同じ着方をするなら、こうでしょ。」

  言って、

  ぐい、
  と、
  大きく胸元を乱す。

  ふわりと、その瞬間、サラシを巻いてはいても、明らかに胸と分かる膨らみが露わになり。

  「残念、なんでサラシなんて巻いてるのさー」

  と不服げに漏らす彼を、は半眼で睨み、

  「それは仕様なのか?」

  それとも脱がせたいだけなのか、と、
  答えが出る前にその頬を一発ぶっ叩いた。



衣装交換(貳)



衣装交換第二弾。
今度は総司君と交換んしてみました。
まあ、一君同様普通に着させたら普通に面白くも
ないですが、ちょいとニュアンスが違うだけで総司
が変態になりましたね。