藤堂編

 「え……なんか、髪の毛刺さりそう」
 「オレの髪は針じゃねえよ!!」



 斎藤編

 「どうかな? 一」
 「う……む……その、寝心地が、良い」
 「その割にはすごく苦しそうな体勢っていうか、なんで上半身浮かせてんの?」



 沖田編

 「変な事するから嫌だ!」
 「人聞きが悪いなぁ。僕はただ膝を枕にして寝るだけだよ?」
 「嘘だ! 絶対変な所に顔埋めたりするんだ!」
 「しないからさせなよ」
 「その台詞は一体どっちなんだよ!!」



 原田編

 「いや、有り難いんだが……なんか悪い気がするんだよな」
 「え? なんで悪い気がするの? ……っは、まさか左之さんも総司みたいに変な事するつもり!?」
 「しねえよ! ……ただほら、おまえの脚、折れそうだし」
 「折れそうって、左之さん、どんだけ頭重たいの?」
 「………それは嫌味じゃねえよな?」



 土方編

 「出来るか、んなもん」
 「えー? なんでー? 私寝てる間に悪戯なんかしませんよ?」
 「しそうだから嫌なんだよ。……それにそんな恰好他の連中に見られてみろ。何を言われるか」
 「大丈夫。見られたら私が誤魔化しておきますから」
 (それが一番心配なんだよ)



 どうしても、と彼女がせがむから仕方なく一度だけ寝てやった。だからこれは彼が望んでの事ではない。といっても決して迷惑というわけではない。ただ、自分が希望したのではないというのを強く言っておきたい。とまあそんな男の言い訳は置いておくとして。
 恐る恐ると頭を乗せれば、それは思ったよりも柔らかかった。女というのはこんなに柔らかかっただろうかと驚いてしまった程だ。
「どうですか?」
 人が戸惑っているのにも気付かず、暢気な声が降ってきた。はっと見上げるといつもと違う所に彼女の顔があり、これはこれで戸惑ってしまう。
 なんとなく視線を合わせ辛くて、ふいとそっぽを向いたまま、とりあえず感想を口にしてみた。
「悪くは、ねえ」
「……随分な言い様で」
 せめてもうちょっと言い方はないのかとは呆れてしまう。まあ自分なんぞの膝枕では仕方ないのかも知れないが。
 自分でももっと他に言い方があったのではないかと思った男は慌てて言葉を探した。探しながらふと、気付く。膝枕などそう何度も経験があるわけではないがこれは他と少し違うというか。と考えて思い出した。さあと意気込む彼女がどんな姿勢だったかを。
 正座だったのだ。
 道理で首が疲れると思った。
「枕が高い」
「それって私の脚が太いってこと?」
 どうやらこの鈍い女にはそれで伝わらなかったらしい。
 不満げに唇を尖らせ、どうせ太いですよなんて拗ねたようにぶつぶつ呟くにまったくと吐き捨てると、再度口を開いた。
「脚を崩せって言ってんだ。それじゃ痺れて立てなくなるだろうが」
「え? 土方さん、どれだけ寝てるつもり?」
 もう一度言おう、鈍い女だ。
 正座で膝枕は疲れるだろうからと思って言ったというのに。もう一度まったくと吐き捨て、もうそれで良いとやけくそじみた声で返答した。
「気が済むまでだ」
「え!?」
「分かったら、脚を崩せ」
 これじゃあ寝づらい。
 そう言うと今度はおずおずと言った風に脚が頭の下で動いて、やがて低くなる。
 もう一度頭を乗せ直す。今度は丁度良い高さだ。
 こいつは良い、と男は意地悪く笑いながら言った。
「極上の枕だな」
 良い夢が見られそうだと目を閉じて笑う彼には見えない。
 彼女が真っ赤な顔を逸らしてしまった事になんて。

膝枕をしてみた☆