「のあの恰好はやばいと思う」

  突然、そう言いだしたのは藤堂であった。
  わざわざ幹部連中を集めて、真剣な面もちで彼は切り出した。

  「やばい…って、平助、まさかおまえ、とうとう我慢できずにの腰に抱きついちまったのか!?」
  ぎょっとして原田が声を上げれば隣で沖田がにこりと笑みを浮かべる。邪悪な笑みを。
  「平助、良い度胸してるね。この僕を差し置いてに抱きついちゃうなんて斬られても文句は言えないよ」
  「って、なんでてめえだけは許されるみてえになってんだよ、総司!」
  聞き捨てならない台詞に土方が噛みつく。
  彼の援護射撃をしてやりたいが、それよりも重要なのは藤堂の発言であった。
  「それで、平助。なにがまずいというのだ?」
  斎藤が先を促すと、藤堂は真面目な顔で一つ頷き、
  「さっき、オレ、が立ち回る所……見てたんだけどさ」
  話を始める。

  丁度稽古をしている所にがやってきたらしい。
  少し一人で型をなぞると言うので休憩がてら見ていたのだが、彼女は相変わらず綺麗な剣筋をしていた。
  惚れ惚れしてしまう剣筋だ。それは良い。
  だがふいに、彼は気付いてしまった。
  それは以前ならば気にならない事だったのに一度気付いてしまうと気になって気になって仕方なくなってしまって、藤堂
  は稽古どころではなくなって道場から飛び出して皆を招集したわけだが、
  「もしかして、あいつ具合でも悪そうだったのか?」
  心配性な土方が声を上げた。
  そんな報告は受けていないが、彼女の事だ。具合が悪くても隠し通すに決まっている。それこそ限界の、倒れるところま
  で彼女は悟らせない。それでは困るのだ。心配という方が正しいか。
  しかし、藤堂は頭を振って違うと示した。
  「それじゃあ、誰かに苛められてたとか?」
  そんな命知らずな輩がいるとは思えないが、幹部隊士として浸透していない彼女は時折新しく入隊した隊士に喧嘩をふっ
  掛けられることがあった。勿論最終的に彼女に完膚無きまでに叩きのめされて改めるのだけど……そういえばこの間数名
  新しいのが何名か入ったのだったか。
  もし彼女を苛める人間がいたとしたら絶対に許さない。そう瞳をぎらりと光らせる彼の言葉に、これまた藤堂は頭を振る。
  「じゃあ、一体なんだよ?」
  焦れったくて原田が些か苛ついた声で訊ねれば、彼は俯いたまま告げた。
  それはさながら、

  「揺れるんだよ」

  怪談でも語るように静かに。

  「揺れる……って何が?」
  「あいつが、刀を振るうたびに、揺れるんだよ」
  「だから、何が揺れるってんだよ?」
  「わかんねえのかよ!?」
  堪えきれない、という風に畳を叩いた藤堂がその身体を震わせながら大声でこう告げた。

  「胸が、揺れるんだよ! 刀を振る度にこうゆらゆら揺れるんだよ!! それが気になって仕方ねえんだよ!! なあ、
  土方さん、あいつの衣裳やっぱり別の……」

  
ごすっ☆×3

  「一体何処見てやがるんだ! 邪念が多すぎるんだよ、てめえは!」
  「いくら若いからってそいつは許されるもんじゃねえぞ」
  「ったく……っておい、総司。てめえは何処行くつもりだ?」
  「え? ちょっと素振りをしに……」
  「見え透いた嘘吐いてんじゃねえよ。確かめに行くんだろう。させるか、そんなこと」
  「とか言いつつ、土方さんだって見たいんでしょ? の胸が揺れてるの」
  「てめえと一緒にすんな」
  「……って、おい、斎藤。大丈夫か?」
  「ゆら、ゆら……揺れる……揺れる」


  だって男の子だもん


  気になってしまうのは仕方の無い事☆
  この後結局みんな一度はちらちら見て
  しまうんですよ。