ピリリリリ――

  穏やかな時間を引き裂いたのは、一本の電話だった。
  「もしもし、総司?」
  断りを入れて電話に出たの口から、悪友の名前が飛び出す。
  絶対邪魔をしに電話を入れたんだと俺は分かった。
  それを証拠にどうでもいい話で盛り上がっている。
  しかも、長い。
  別に一緒にいて何をしていたわけでもねえんだが、俺はふたりきりの時間を思いっきり邪魔をされてるみてえでむしゃく
  しゃした。
  これはガキが親に構ってもらえずに癇癪起こすのと同じかも知れねえ。
  でも、嫌なもんは、嫌だ。
  特にこいつのことは‥‥他の誰にだって譲りたくはねえんだ。


  「っ!?」
  突然、後ろから伸びてきた手に胸を掴まれちゃ誰だって驚くだろう。
  それが自分の恋人であっても、だ。
  「なっ、にをっ」
  も例に漏れず驚いたような声を上げ、だけどすぐに俺の両手が揉みしだくように動き始めて息を飲んだ。
  身体に力が入り、強ばる。
  それを解くように空いている耳に唇を寄せて耳朶を食めば、噛みしめた唇から「んっ」と戸惑いと艶を孕んだ声が漏れた。
  「ちょ、ちょっと待ってね、総司っ」
  思わずそれを漏らしてしまい、は慌てて断りを入れて保留ボタンを押すと真っ赤な顔で振り返り俺に抗議する。
  「何するんですか! いきなりっ」
  「なに‥‥って、おまえが俺を放ったらかして他の男の相手をしてるのが悪い」
  「べ、別にほったらかしてなんか‥‥」
  「ああ、構わねえぞ。総司と仲良く電話してろ。俺は俺で好きにさせてもらうから‥‥」
  俺は一方的に言うと、服の上から的確に、胸の先を摘んだ。
  「んっ!」
  きゅ、と強く摘まれての身体にまた力が入る。その時に間違って押してしまったらしい。
  保留が解除され『もしもし?』という総司の声が携帯を通して聞こえてきた。
  「あ、も、もしもしっ‥‥ごめん、総司、後で電話かけ直しても‥‥」
  今電話を切れば、恐らく切った次の瞬間に突き飛ばされるんだろう。
  そうして怒ってしばらく口も利いてくれないって所か? それは勘弁願いたいし、そもそもが悪い。
  「ひっ!?」
  そうはさせまいと横からスカートの下に手を差し込むと、下着の上から割れ目を撫で上げた。
  はびくりと身体を強ばらせ、腿を閉じた。
  閉じたところで脚の間に手を突っ込んでるわけでもねえ状況だ、なんら影響はねえ。
  「無駄な抵抗だったな」
  と空いている方の耳に注ぎながらそっと上下に動かすと、
  「ん、ふ、ぅっ」
  噛みしめた唇の隙間から甘い声がこぼれ落ちた。
  布を押し上げるように陰核が膨らみ始める。
  上下に擦って刺激を与え続ければ、指先に濡れた暖かな感触がして‥‥
  ちゅ、と啄むような音が口付けてもいねえのにそこからして、俺は薄らと笑う。
  「なんだ? 友達と電話してて濡らしちまったのか?」
  「っ」
  「やらしいな、おまえ」
  わざと意地の悪い卑猥な言葉を注げばは涙目で俺を睨み上げてきた。
  口を開けると変な声が出てしまうのか、必死に唇を噛みしめている。
  その泣きそうな顔が堪らなく俺の嗜虐心を掻き立て、更に強く腕に抱きしめながら下着の脇から指を滑り込ませて直に、
  触れた。
  「ひぁぅっ」
  『?』
  電話の向こうで訝る声が聞こえた。
  は必死で理性を繋ぎ止めながら、口を開いた。
  「な、でもっ‥‥なっ‥‥」
  何でもない、と辛うじて言えたものの、指先を膣にねじ込まれて再び「ひ」と短い悲鳴を上げる羽目になる。
  この瞬間、膝頭が離れ、力が緩む。その隙に胸を弄っていた手での脚を抱え上げると自分の片脚に引っかけて大きく
  開かせた。もう片方は俺の脚をねじ込む事で閉じれないようにして、
  「んっ、んーっ」
  ぐじゅぐじゅ、と蜜を掻き回すように指を動かす。
  今日は焦らさない。
  すぐに奥までねじ込んで、感じる場所を爪で擦った。
  きゅっと指が食いちぎられそうなほど、膣が締まった。そしてすぐに緩んでとろっと熱い蜜を零す。それをわざと、音を
  立ててぐちゃぐちゃと掻き回した。
  音が、電話の向こうに聞こえてしまうほど。
  「や、や、だ‥‥」
  がか細く訴える。
  携帯を持つ手がぶるぶると震えていた。
  その向こうで総司が何かを言ってるみてえだったが、多分もうは何を言われてるか分かってねえだろう。
  「や、くっ‥‥ぅん‥‥」
  唇を噛みしめ、快楽をどうにかやり過ごそうと喉を反らす。
  そうした所でどうにか出来るわけもなく、更に強く押し寄せる快楽の波にはぶんぶんと頭を振って嫌がる素振りを見
  せた。
  「ここは‥‥嫌がってねえぞ?」
  「やはっ」
  くち、と音を立てて指を引き抜けば引き留めるように内壁が締まる。
  引き留められもう一度中に押し戻すとの細腰が甘く震えた。
  震えるたびに俺の股間に柔らかい尻が押しつけられ、強請られている気分になる。いや、きっとこいつは強請ってんだろ
  うな。
  「そんなに擦りつけなくてもちゃぁんと挿れてやるって」
  「だ、だめ、だめっ」
  かちゃかちゃと金属音をさせながら俺のベルトが外された瞬間、は青ざめて本格的に拒絶を表した。
  冗談じゃない、とでも言いたげに俺を振り返り、やめてくれと懇願する。
  電話を切る‥‥という選択肢はねえらしく、そもそも自分が携帯を持っている事さえ、忘れてるんじゃないかと思う。
  それでも声を必死に出すまいとしているのは聞かれたらまずい状況だからと認識しているはずなのに。
  「ひ、じか‥‥っ――!?」
  ぐいともう片方の脚も自分の脚に引っかけて大きく開かせ、下着をずらす。
  どう見ても心許ない布きれと、の股との間にいきり立った性器を滑り込ませると、そのまま割れ目に沿うようにして
  上下に揺すった。
  「ぁ、ん、んーっ! んーっ!」
  にちにちという濡れた卑猥な音を立て、の襞が俺に絡みついてくる。
  たっぷりと濡らすように動かせば、当然、陰核を擦る事もあった。
  「あっ――」
  堪らずという風に漏れた声は、泣きそうな、だけど色っぽい声だった。
  腰がずん、と重たくなった。
  「だ、めっ‥‥おねがっ、挿れな‥‥」
  やがて全体に蜜を塗り付けた後、俺は軽く腰の角度を変えて、蜜口に亀頭を押し当てる。
  挿れるなと言いながら早く寄越せと入口は収斂を繰り返して俺を飲み込もうとしている。
  さて、どっちが本当なんだか‥‥まあ、どっちが本当だろうと俺には関係ねえけど、な。

  「挿れるぞ」
  「ま、って」

  の言葉は待たず、
  ぐん、
  と、強く腰を突き上げ最奥まで一気に貫いた。

  「ンんっ―――!!」

  瞬間、の口からは甲高い声が上がり、その手から見事に携帯が落ちた。

  「おい、ちゃんと、持ってろよ」
  苦笑で咎めながらぐずぐずと最奥を緩く揺すりながら、俺は携帯を拾い上げてに突きつける。
  だけどは両手で自分の口を塞ぐのが精一杯で、ぶんぶんと頭を振って嫌がってみせた。
  「それじゃ、俺が電話に出ても構わねえよな?」
  「っ、まっ!?」
  「もしもし?」
  携帯を耳に当て、俺は話しかける。
  話しかけながら腰を動かすのは止めない。
  「ひ、うっ、や、ぁっぐ!」
  突き上げらる度に、押し殺しきれない声が唇から零れ、はぼろぼろと涙を零しながらなおも制止を訴えた。
  「あー、悪いがは今取り込み中だ」
  「ひ‥‥んーっ!?」
  そのまま膝を立てて膝立ちになる。
  そうすれば自然、は上半身を支えられなくなりくたりと前のめりに倒れ込み腰だけをあげたあられもねえ格好になった。
  座位よりもこちらの方が奥まで入る。
  ぴたりと結合部を合わせると、子宮口を押し込むように動かした。
  はこうすると‥‥可愛く啼いてくれるからだ。
  「ぁ、くっ、んーっ、んんんっ!!」
  それをシーツに噛みついて押し殺されるとなんだか物足りなくて、更にぴったりと背中に張り付いてスカートの中に手を
  差し込んだ。
  指先に膨らんだ芽を捉えると、人差し指と薬指で皮を引っ張って、敏感な本体を中指でぐりぐりと嬲る。
  「あっ、だめ! だめぇっ!!」
  堪らず、の口から悲鳴のような声が上がる。
  にんまりと俺の口元には人の悪い笑みが浮かんでいる事だろう。
  「おいおい、そんな声を上げて‥‥総司にナニしてんのかバレちまうだろ?」
  「――! や、だっ、ぅ、あ、ぁあんっ!」
  「ってめ‥‥総司って名前出した瞬間、締め付けてんじゃねえよ」
  あいつの名前できゅうと切なげに膣が締まり、なんだか総司に負けた気がして悔しくて乱暴に突き上げる。
  「ひ、ぁあっ!!」
  更に上がる甲高い、声。
  ああ、これじゃあ絶対誤魔化せねえよな。
  ナニしてるのかバレバレ‥‥
  「や、ひ、じか‥‥ぁ、だめ、いっちゃ‥‥っ」
  「イクって‥‥友達の前でそんな事言っちまっていいのか?」
  「やだぁっ、や、あんっ! ぁ、あ、だめ、いゃ‥‥ちゃっ‥‥」
  びくびくっと膣が痙攣し、それが俺の陰茎を包み込み刺激する。
  堪らなく気持ちよくて俺は熱い吐息の塊を吐き出した。
  「なにおまえ‥‥他の奴が聞いてると思うと燃えるクチ?」
  「ち‥‥がっ」
  「とんだ、淫乱だな――」
  そんなやらしい娘にはこうだ、とばかりに俺は強く突き上げる。
  ひ、とその瞬間上がったのは短い悲鳴、そして、
  「んんっ――!!」
  びくんと大きく身体の外と内とが震え、は堪えきれずに達した。
  「ぐっ」
  その震えに俺も釣られたかのように、の中に全てを吐き出す。
  どろりと。
  内部から俺で満たすようにたっぷりと。


  「おい、‥‥」
  全てを出し終えて、抜いた後も、は忙しなく呼吸を繰り返すばかりで呆然としていた。
  突然の、あまりの出来事に現実逃避しているのか、それともまだ快楽の余韻に浸っているのは分からない。
  ただ俺の一言でぴくりと今まで身動き一つしなかった身体が動く。
  「総司が代わってくれってよ」
  「っ!?」
  びくっと身体が大袈裟なくらいに震える。
  そうして拒絶を示すみてえにシーツに顔を埋めてぶんぶんと顔を左右に振った。
  そりゃそうだよな。友達にあんなエロイ声を聞かれて平気ではいられねえよな。
  恥ずかしいのは分かる。
  だけど、
  俺はその恥ずかしがるの様子が、見てえ‥‥って、俺は本当に性格が悪いな。
  「
  「や、やだっ!」
  「いやだとか言うんじゃねえよ。総司だって傷付くだろうが、そんな反応されたら」
  「や、いやっ!!」
  いやだと本気で嫌がるのを、力任せに引きはがして、
  「っ!」
  仰向けにしてベッドに押しつける。
  俺は携帯を差し出した。
  「やっ――」
  本気で怯えたような顔が、とんでもなく可愛くて、つい、笑みが浮かぶ。
  は青ざめ、俺に縋るような眼差しを向けた。
  それをねじ伏せて‥‥携帯を、の耳に、宛がった。

  「っ――」

  絶望に一瞬彩られた琥珀が、ぎゅうっと閉ざされる。
  悪友から突きつけられる言葉に怯えて、が息を飲み込んだ。

  プーッ

  「‥‥‥‥‥‥え?」
  携帯から聞こえてくるのは、虚しい電子音。
  総司の声じゃねえ。
  それには呆気にとられたような顔になり、俺を見上げた。
  ひっかかったな‥‥
  「とっくの昔に電話は切れてんだよ」
  俺はにやっと口元を歪め、携帯の電源ボタンをぷちりと押して沈黙させる。
  恐らく、が落としたはずみで通話が切れてしまったんだろう。もしかしたら総司の方が切ったのかもしれねえが、少
  なくとも、俺が携帯を拾い上げた時にはもう通話は切れていた。
  「‥‥」
  「だから、おまえの可愛い声は聞かれてねえよ」
  安心しろ、と意地悪く言えば呆気にとられていたその顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。
  「ひどい! 最低っ!!」
  そうして今更のように怒濤のようにやってきた恥ずかしさやら怒りやらを、ぶつけるように枕で攻撃を仕掛けてくる。
  「私が、どんな思いだったか!!」
  「恥ずかしかったんだろ? その割にゃ随分と気持ちよさそうだったけどな」
  「ちがっ! あれは、土方さんがっ!」
  「俺のせいじゃねえだろ? ああそれとも、焦らされた方が良かったってのか?」
  「〜〜〜っ!!」
  もう、黙れ、とでも言うように、は俺の顔に枕を思い切り押しつけてくる。
  それを手で防ぎ、ついでにの両手を拘束すると暴れ回る悪戯なそれをシーツに縫い止めて真っ直ぐに見下ろした。

  「おまえが‥‥俺を放ったらかして、他の男なんか構ってるのがいけねえんだろ?」

  だからって‥‥
  そう文句を言いたげな唇を、問答無用で塞ぐ。
  さっきまでの乱暴な行為とは違って、俺の舌はまるで甘えるみてえにのそれに絡みついた。
  それがにも伝わったのか‥‥強張っていた身体から力が抜け、俺の五指に自然とそいつの指が絡みついてくる。許す
  みてえに。

  「‥‥寂しかったんですか?」

  唇を離すと濡れた瞳で意地悪く問われた。
  馬鹿野郎。俺はガキじゃねえんだぞ。
  そう内心で応えたけれど、はまるで母親みてえな慈しむような笑みを浮かべて笑っただけで、それ以上追求しなかった。

  「私は、土方さんの事が誰よりも好きですよ?」
  「そんじゃあ、次から俺と一緒にいるときは総司と電話なんかすんな」
  「急ぎの用事だったらどうするるんですか‥‥」
  「それでも駄目だ。俺が優先だ‥‥」


  僕が ちばん




  一度は掻いてみたかった電話ネタ。
  土方先生の変態っぷりが遺憾なく発揮
  されてると良いです☆
  ああでも、あれですよね‥‥鬼畜さで
  は絶対総司の方が上!!