朝、目が覚めると何故か彼女が隣で眠っていた。
  ぎょっとしたのは一瞬で、しかし、二人ともきちんと着物を身につけており、彼女は目を閉じたまま、健やかな寝息を立て
  ていた。

  どうやら‥‥夜中にこっそりと潜り込んだらしい。

  ああ、昨夜は寒かったから。

  「‥‥」

  男はそんな事を考えながら、傍らで無防備に眠る彼女を見つめた。
  そうすると寒かったのだろうか‥‥
  「ん‥‥」
  温もりを求めて彼女が手を伸ばしてきた。
  ふわりと、芳しい花を思わせるそれが男を包み、そのまま甘えるように擦り寄られると、

  「‥‥っ」

  暖かく、柔らかな感触が男の身体に密着した。

  ふにゃんと、
  触れたら指が沈んでしまいそうなそれだった。

  以前、誰かが言っていた。

  朝は‥‥性欲が増すのだと。

  「‥‥」

  男は自身の半身に熱が集まっていくのに気付いた。
  止まれ、と思っても欲とは止まらないものだ。
  どんどんと熱は集中し、一気にそこが固くなっていく。

  斎藤は己を恥じた。
  恥じた所でいきりたったそれは収まってはくれない。
  熱を鎮めるには出してしまう他ないのだ。

  「‥‥。」

  小さく呼びかけてみた。
  が、は目を覚ます気配はない。
  起こすのも忍びなく思い、斎藤はその腕から逃れようともしてみたが、
  生憎とがっちりと掴まれていて解く事は出来なかった。

  そればかりか、引きはがそうとすればするほど抱きつく力は強くなり、更に温もりと柔らかさに雄が反応をしてしまう。

  ちり、と痛みさえ伴うほどに。

  「‥‥すまない‥‥」

  斎藤は謝った。
  瞳を伏せて、己の下肢へと手を伸ばす。
  僅かに腰を後ろへと逃がして、屹立した自身へと手を絡めると、ゆったりと上下に扱いた。
  「っ‥‥く‥‥」
  軽く扱いて真っ直ぐに勃たせると、親指の腹で雁首から亀頭にかけてをぐちぐちと擦った。
  「はっ‥‥」
  息が上がる。
  何度か敏感な先端を擦る内に、じわりと濡れた感触がして、
  ぐじゅとそれが指を動かした瞬間に音を立てる。
  くぐもった音が聞こえないか‥‥男は不安だった。
  その不安もすぐに、這い上がってくる快楽には容易く負けてしまう。

  「はっ‥‥ぁっ‥‥」

  ぐちぐちと片手で棹を擦りながら、両方の親指で亀頭を擦る。
  先走りがとろとろと溢れてきて指を、布団を濡らしていった。

  もう少し。

  もう少しで高みへと登れる。

  男が動かす手を早めようとした。

  その時、

  「一‥‥?」

  小さな呼びかけに、男はぎくりと肩を震わせた。
  同時に目を見開く。

  一瞬、ぼや、と視界がぼやけた。
  が、すぐに鮮明になっていくそこに、

  「‥‥‥‥」

  しっかりと開かれた琥珀の瞳が映り込んだ。

  彼女はこちらをじっと見つめていた。
  じっと、斎藤の瞳を覗き込んでいた。

  熱かった身体が一気に冷えていくのが分かった。

  らしくもなく、斎藤は動揺していた。

  「そ、その‥‥これは‥‥」
  布団の中で何をしているか、などには見えていない。
  だけど、何故か見透かされている気がした。
  自分が何をしていたか。
  何を思って、そんな事をしたか。
  見透かされている気がして‥‥ひどく恥ずかしかった。
  「これは‥‥そのっ‥‥」
  言葉が上手く紡げない。
  ただ恥ずかしくて視線だけ落とした。
  その、あの、と何度も言葉にならないそれを零していると、唐突に、

  ぬる、

  「っ!?」

  濡れた亀頭を撫でられた。

  自分のではない事は分かった。
  自分のはそろえて‥‥雁首の所を押さえている。
  それでは‥‥

  「‥‥‥‥?」

  彼女の?

  驚きに顔を上げれば、がとん、と男の肩口に額をぶつけてきた。
  そうしたまま、亀頭をころころと擽るように触れる。
  「ぁ‥‥」
  ひくんと男の背が震えた。
  「‥‥な、にを‥‥」
  「途中、なんでしょ?」
  斎藤の問いにが小さく答える。
  「手伝う‥‥」
  手伝う、という言葉通り、僅かに離れた彼の手の中には己の手を潜り込ませ、濡れた陰茎をしっかりと包み込んだ。
  そうして上下に扱かれると先ほど自分がしたよりもずっと、もっと、気持ちがいい気がした。

  それが好きな女の手、だからだろうか。

  「強さ‥‥こんくらいでいい?」
  が訊ねてくる。
  斎藤は思わず、
  「少し‥‥強く‥‥」
  などと強請ってしまった。
  は分かったと小さく答えて、握る力を強くする。

  きゅ、きゅっと強く扱きながら男の弱い先端部分の形をなぞるように指で撫でられて、叫びたいほどの快感が身体を支配
  した。

  あ、あ、とか細く上がる男の、感じた声にも知らず身体が熱くなってくる気がした。
  先走りが溢れるたびに、じわりと、は自身のそこが濡れてくるのを感じた。

  思わず、もじ、と内腿を摺り合わせていると、
  「ぁっ」
  大きな男の手が太股を後ろから掴み、自分の腰に絡ませる。
  「なにす‥‥」
  「一緒に」
  掠れた声で男は言い、あいた脚の隙間から手を滑り込ませて、
  「やぁっ」
  迷うことなく女の秘所へと指を穿った。
  じゅぷんと濡れた感触が節くれ立った男の指を迎え入れた。

  「あっ、あっ‥‥」
  ぐじゅ、と奥まで埋め込ませ、すぐにもう一本増やされる。
  柔らかな壁を引きずり出すような動きで指を動かされ、は甘い吐息を漏らす。
  漏らしたそれが男の肌の上を滑り、ぶるりと背が震えた。

  「‥‥手を‥‥」
  「んっ‥‥ぅんっ」

  ぐじゅとが雄を扱けば、同じだけ中をかき回される。
  亀頭を捏ねると、男も感じる場所を引っ掻いてくる。

  身体を直接繋げているわけではないが、同じ瞬間に同じ快楽を味わっている。

  なんだか不思議で‥‥
  同時にすごく‥‥興奮した。

  「ぁ、一、もうっ」
  は夢中で手を動かした。
  じゅぶじゅぶと聞こえる濡れた音はもう自分の中から聞こえるのか、それとも男のものなのか分からない。
  ただ、二人とも互いに高みまで追いつめられているのだけは震える互いの身体で分かった。

  「もう‥‥いっ‥てぇ‥‥」

  涙交じりの声で囁いて、
  は男の雄の先端に爪を立てた。
  じり、と痛みとも熱さともつかないそれが先端からびりびりと体中を走ったかと思うと、

  「っう、ぁっ――」

  手の中で雄がびくんと震え、たちまち熱い飛沫が飛びだした。

  そして同時に、は腫れあがった花芽を摘まれて、

  「ん、ァッア――」

  男の指を引きちぎるくらいにそこを締め付け、達していた。


  は。
  はぁ。


  揃って熱い吐息を漏らす。
  絶頂の余韻に浸りながら、そっと顔を上げれば、当然のように斎藤が唇を合わせてきた。
  深く、
  吐息を、
  舌を、
  唾液を絡められて、息が一瞬止まった。

  「‥‥朝っぱらから‥‥濃厚―」

  やがて唇を離せばが濡れた瞳を細めてそう茶化した。



  アツイ




  ‥‥石は投げないでくださいっ(土下座)
  なんか三剣は男性の方がやられる作品が発作的に
  書きたくなるみたいです。