屯所へ帰る道すがら。
俺は見慣れた飴色を見つけた。
お天道様の下では美しい金色にさえ色を変えるそれを。
俺の右腕である‥‥副長助勤、その人だ。
今は、町娘の格好をしていたが、その色を間違えることはない。
そういえば古高の店に出入りさせていたな。
「‥‥?」
ふいに、俺は違和感を覚えた。
いつもはぴんと真っ直ぐに伸びたそいつの背中が‥‥少し丸まっていた。
おまけにその足取りは重たく、
ふらふらと覚束ない。
なんだ?
俺は双眸を細め、すたすたとそいつの背後に迫った。
いつもと様子が違うのがすぐに分かった。
普段なら足音を消していても振り返って俺に気付く。
そいつは気配に聡い。
だが、振り返りもしなければ、そのままふらふらと板塀に凭れ掛かって‥‥動かなくなった。
まさか、こいつ、具合が悪いのを隠して任務に当たってたんじゃねえだろうな。
「おい。」
俺は不機嫌そうな声を上げ、そいつの肩をぽん、と叩いた。
瞬間、
「っ――!」
の身体は大袈裟なくらいにびくっと震え‥‥
「‥‥お、おいっ!?」
ずるずるとその場にへたり込んでしまう。
俺は慌てて手を伸ばして、そいつの身体を支えた。
萌葱の着物を通して伝わるのは‥‥尋常じゃない熱だった。
やっぱりこいつ、熱があったんだな。
見抜けなかった自分に対しての苛立ちを舌打ちで表して、ぐったりとしているそいつの顔を覗き込んだ。
「おまえ、こんな状態になるまでなんで言わなかったんだ!」
この大馬鹿野郎が、と、俺は怒鳴り掛けて、
「‥‥っ!?」
言葉を飲み込んだ。
覗き込んだそいつの顔は‥‥俺が想像していたとおり、赤かった。
その目も、熱のせいで潤んでいた。
だが、熱があるのとは明らかに違う‥‥その濡れて、色づいた瞳が俺を見上げていた。
普段なら絶対に見せねえような‥‥甘ったるくて、婀娜っぽい色。
そう、
欲情した、女の色だ。
男の欲を‥‥煽る、色‥‥だ。
ぞくりとその瞬間に肌が粟立ち、熱が一気に下肢に集まっていく。
「おま、え‥‥なんて顔してんだ‥‥」
唇から漏れたのは掠れた声だった。
は唇を戦慄かせ、ごめんなさいと弱々しい声を漏らす。
「‥‥油断、しました‥‥」
油断したとそいつは言った。
そうして、苦しそうに眉を寄せて熱い吐息を漏らすと、言葉の続きを紡いだ。
「古高の所で‥‥薬を‥‥」
「薬?
って‥‥まさか‥‥」
俺の問いにそいつはこくんと頷く。
「‥‥媚薬‥‥だと思う。」
人の性欲を増す薬など‥‥俺は見たことがねえ。
イモリの丸焼きやら、なんだかの睾丸だかがそれにあたるって聞いたことはあるが‥‥実際、それを飲んだからと言って体温が上昇して、かっかするくらいだ。
薬を飲んで相手を好きになった、だの、興奮して勃っちまっただの‥‥って話は聞いたことがねえ。
ましてや、
飲んだからと言って、
身体全部が敏感になっちまうなんてこと‥‥
あるはずがねえって、思ってた。
「‥‥つっ‥‥」
そいつの今の状況を見るまでは。
はひくっと喉を震わせて、身体のあちこちに走る震えやら疼きやらをやり過ごし、
すっかり濡れて、焦点さえ定まらない目を俺に向けた。
「‥‥だい、じょうぶです。」
おそらく、
俺が心配そうな顔でもしてたんだろう。
そいつは力無く笑って、言った。
「大人しくしてたら‥‥治るから‥‥」
だから、
心配しないでと、そいつは言った。
俺はぐっと喉を鳴らした。
その薬がどんなものなのかは俺には分からない。
でも、
「そんなもん収まるわけがねえだろうが‥‥」
そんなもので収まらないのは知っている。
一度生まれてしまった熱は‥‥吐き出してしまわない限り、収まらねえ。
そういうもんだ。
「ひじ‥‥ひゃっ!?」
問答無用でそいつを抱え上げると、俺はくるっと踵を返した。
屯所とは逆の方向へと。
「どこ‥‥に‥‥」
「いいから黙ってろ。」
腕の中の熱は‥‥気がつくと火傷しそうなほどの熱さを湛えていた。
向かった先は、町の外れ。
人通りのまばらな通りを抜けてやってきたのは一軒の宿屋だった。
外観こそは他の店とは変わらねえが、
そこは普通の宿とは違う。
そう、
連れ込み宿だった。
「ひじかた‥‥さ‥‥」
驚いて目を丸くする主に「茶はいらねえから誰も近づけるな」と言って、宛われた部屋に向かう。
狭い部屋の中には薄っぺらい布団が一式。
その上にどさっと下ろされたは赤い顔のまま、緩く首を振った。
「だめ‥‥」
「駄目、じゃねえよ。」
俺は先ほどから苦しいと思っていた自分の袷を緩めながら横たわる身体に覆い被さる。
「疼いて、仕方ねえんだろ?」
「ぁっ!」
そっと着物の上から身体の稜線をなぞれば、それだけでは切なげに目を細めて身体を歓喜に震わせる。
それがいいのだと身体は訴えるのに、は駄目だと緩く頭を振った。
「だめ‥‥こんなのっ‥‥」
駄目と頑なに拒むそいつの帯を解き、さらりと着物を滑らせた。
汗でしっとりと濡れた襦袢が滑り、胸の先端を掠めた瞬間、
「ぁあっ――!」
びくっと身体を震わせはまた、軽く果てた。
その艶めかしさといったら、どうだ。
俺はごくっと生唾を飲み込み、ひくひくと余韻に打ち震えるそいつを見つめていた。
ひどく‥‥興奮した。
やがては、俺の目の前で達してしまった事に気付いて、顔をくしゃっと歪め、
「ご、ごめ‥‥なさっ‥‥」
と謝った。
そんな姿を見せたのは恥だとでも思ってるんだろう。
「いい、謝るな。」
俺は掠れて余裕のない声で言った。
「いいから。」
恥じる必要も、俺に遠慮する必要もねえ。
「‥‥何も考えず、ただ気持ちよくなっとけ‥‥」
その言葉に、琥珀は諦めたように閉ざされた。
「あ‥‥ぁあ‥‥ぁっ‥‥」
空気を震わせるのは信じられないほど、甘い、女の声。
普段のそいつからは想像できないような甘く、色づいた声がひっきりなしに赤い唇から上がった。
汗ばむ肌を指で、指先で、舌で、一つ一つ確かめるように触れながらそいつの熱を解放してやる。
たわわに実った乳房を揺らして、尖りを軽く摘んでやっただけで、そいつは弓なりに背を撓らせて果てた。
それでもまだまだ足りないようで、両の乳首を交互に舐めて、噛んでやると立て続けに軽い絶頂を迎えて、泣き声みたいな声を漏らす。
「や、そこ‥‥もう、さわんな‥‥でっ‥‥」
ひ、と涙を零しながらはそこに触れるなと言う。
乳首だけを弄られると、じんじんと疼いて堪らないらしい。
「でも、ここ‥‥気持ちいいだろ?」
言ってかりと赤く尖った乳首に緩く歯を当てると、目を見開いて悲鳴みたいな声を上げた。
そしてすぐに、泣き顔みたいなそれになってぶんっと頭を振ると、
「や、そこ‥‥や、なのっ」
こいつらしくもない舌足らずな喋りでそんな事を言われた。
可愛くて仕方ねえ。
俺は苦笑交じりに分かったよと呟くと、手を滑らせる。
「じゃあ、こっちに触ってやろうか?」
「ひっ!」
唯一そいつが身につけている下帯の中に手を潜らせる。
その中はまるで堰を切ったみてえに、びしょびしょに濡れていた。
下帯はぐっしょりと濡れ、敷布にまで蜜を垂らしている。
「や‥‥そこはぁ‥‥」
「こっちを弄くられるほうが‥‥感じるだろ。」
下帯を脱がせて、濡れた蜜を絡ませながら蜜口へと指の先をあてる。
「っ!」
びくっと途端身体は震え、きゅっと入口が収縮した。
一瞬、拒絶するみたいに閉ざされたそこはすぐに、とろけたように柔らかくなり、俺の指を求めるようにひくひくと戦慄いた。
「‥‥」
誘われるままに指を突き入れる。
つぷと、指先に僅かな圧迫。
そうして、
「ふ‥‥ぁ‥‥あ‥‥」
生き物のように蠢く肉壁に迎えられた。
「熱‥‥」
そいつの胎内は、火傷しそうなくらいに熱い。
これが人の体内かと思うくらいに、熱くて、
それから、
「やわらか‥‥」
溶けてしまったかのように、
柔らかい。
「や、やぁ‥‥」
蠕動する動きに逆らわずに指を進めると、の身体がまたびくっと震えた。
爪の先が感じる場所を掠めたようで、きゅうっと内部が引き締まり、指をきつく締め上げたかと思うと、
――とろ‥‥
と指先に内部から染み出した蜜が絡んだ。
また、
達したらしい。
達した後だというのに、その熱は収まるどころか、更に高まっていくようで‥‥
胎内は震えるみたいに激しくうねり、更なる快楽を求めて俺の指に食らい付いた。
「ひじ‥‥かた‥‥さ‥‥」
強請るように俺の名を呼び、そいつはもどかしく腰をくねらせる。
求められている事に少なからず喜びを感じながら、俺は指を更に奥まった所へと差し込んだ。
「んっ‥‥あぁんっ‥‥」
「ここ、いいのか?」
上擦った問いかけにそいつはこくっと頷いた。
そして更に、
「も、っと‥‥」
と甘く強請る。
望まれるままにそこを、当たる面積が多くなるように指を鈎状に曲げて擦るとびくびくっと身体を震わせた。
弓なりに背を撓らせながら、
「い‥‥ぃいっ」
そいつはそう言って涙を零した。
熱が一気に、
そこに集中して、
「っ」
俺は奥歯をぎりっと噛みしめた。
とんでもねえ上司だと俺は自分を嗤いたい気分だ。
そいつの苦しみを取り去ってやりたいが為にこういう事をしてるってのに‥‥
なのにそいつのあられもない格好を見て、
ひどく興奮している。
俺の一物は頭を擡げ、今にも暴れ出しそうなくらいに張りつめていた。
ぐちゃぐちゃと蜜を掻き回しながら、
その指の代わりに俺のもんで壊してやりてえ、
こいつの中を滅茶苦茶にして、
精を注ぎたい、
なんて、凶暴な感情さえ浮かんだ。
びくびくと震える肉は、きっと俺を今まで感じたことのねえ快楽へと誘ってくれるんだろう。
でも、
「‥‥駄目、だ。」
んなことは出来ねえ。
あくまで俺は、こいつの為に‥‥
「ん、ぁ、アアアッ!!」
一際高い嬌声が上がり、そいつは爪先までぴんっと力を入れて‥‥果てた。
そしてぐったりと布団に四肢を放り投げ、虚ろな眼差しで虚空を見つめている。
とろっと溢れた蜜は俺の手首まで濡らした。
「‥‥は‥‥ぁ‥‥」
噎せ返るような女のにおいに俺の息も上がっていた。
ゆっくりと指を引き抜いて、せめて、それだけでも味わいたくて、俺は濡れた指をべろっと舐った。
それが、そいつの味。
甘くて‥‥少し酸っぱい気がした。
「土方‥‥さん‥‥」
掠れた声が俺を呼ぶ。
さっきよりしっかりした音になっていた。
おそらく、薬が徐々に抜け始めたんだろう。
もう大丈夫そうだなと俺は苦笑して、なんだと顔を覗き込む。
は琥珀のそれを一度閉じ、そうして、俺へと向けると、
「‥‥土方さんのが‥‥欲しい。」
そう言った。
一瞬、
俺は何を言われたのか分からなくて、
「‥‥なに?」
怪訝そうに眉を寄せて問い返した。
俺が欲しいって‥‥それはどういう‥‥
問い返すとは気怠そうにその足を動かした。
ゆっくりと膝を立てる様に思わず目を奪われ、
「あ、おいっ!!」
その指先が俺の身体に触れる。
裸足のそれが触れたのは俺の袴の上の、
「っ」
勃ち上がった、そいつの上。
布越しに感じる熱と固さにはそうっと恥ずかしそうに目元を染める。
そのくせ、にやっと意地悪く笑うもんだから、色っぽくて仕方がねえ。
「‥‥おっきくなってます。」
そう言いながら、足の裏でぐいっと押す。
じわっと先から何かが漏れた気がした。
そのまま一気に吐き出したい気分になったが‥‥俺は唇を噛みしめて堪えた。
「さっきから、当たってるの、気付いてた。」
やわと足の指で形を確かめるように動かされ、嫌な汗が一気に出る。
「‥‥こんなに、大きくなってるのに‥‥我慢するつもりだったの?」
琥珀の瞳が細められ、悪戯っぽい笑みが浮かぶ。
濡れて女の欲が灯ったそれは、ひどく、色っぽくて、まるで誘われてるみたいだった。
「俺が‥‥するつもりで来たわけじゃねえ。」
あくまで、おまえの、と言うと、はくすっと小さく笑いを漏らした。
「じゃあ‥‥言い訳にすると良いです。」
ぐっと胸ぐらを掴まれ、思ったよりも強い力で引き寄せられる。
そうすると互いの距離は無くなり、琥珀の瞳が一気に近付いた。
は欲情した瞳で、言った。
「私の薬を抜くために‥‥抱いて。」
柔らかな唇が俺の唇に押しつけられ、それと同時にそいつの腰が強請るように、俺の下肢に押しつけられた。
舌を絡め、唾液を交わらせながら俺は慌てたような手つきで袴の紐を解く。
その間には袷を乱し、その隙間から手を忍ばせて着物を滑らせた。
汗で濡れた襦袢が重たげな音を立てて落ちていく。
袴をぐしゃぐしゃに踏みつけ、俺は下帯を解いた。
その下では、もうこれ以上待てねえとばかりに膨らんだ一物が待っている。
「‥‥‥‥」
少し離した隙間で名前を呼ぶと、そいつは聞くなと言うみたいに俺の唇に噛みついた。
「いいから、早く‥‥」
頂戴、と、上目遣いに見上げられ、俺の理性の糸は呆気なく‥‥切れた。
「ぁん!」
脚を割り開くとその間、
散々俺の指で濡らした蜜口に熱を宛った。
ぬちゅと濡れた淫靡な音に煽られるように、
「ぁ‥‥ぁあ‥‥」
切っ先を、ねじ込んだ。
「ん‥‥あ、ぁっ――」
迎え入れるその胎内の熱さと、柔らかさと、それに相反した締め付けに、俺の口から感じきった女みてぇな声が漏れた。
「ひじか‥‥さぁっ‥‥」
「なんだよ、これ‥‥」
俺は、は、と震えた吐息を漏らして我慢できずに最奥まで一気にねじ込む。
ずくんっと奥まで乱暴に押し込むとはひっと息を詰めさせ、俺の背中に爪を立てた。
同時にきゅうんと内部がきつく引き締まり、俺はうっかり果てそうになる。
「あっ、くっ――!」
奥歯を噛みしめてこみ上げるそれを堪える。
一方のは、
「あ‥‥ふぁ‥‥」
とろんと蕩けたような顔になり、その力を失う。
どうやら、さっきの瞬間また軽く達したらしい。
「‥‥っと‥‥」
力を失ってそのままどさっと落ちてしまいそうな背中を支え、達した瞬間のそいつの顔を覗き込む。
蕩けた甘ったるい表情で俺を見上げ、恥ずかしそうに瞳を伏せたと思うと、
「‥‥っ」
気怠げに腕を俺の首に回して、甘えるように擦り寄ってきた。
「土方さんの‥‥中でびくびくいってる‥‥」
濡れた声を耳に注ぐみたいに零す。
くすぐったさとは違うそれに、俺の背はぶるっと震えた。
お返しに俺もそいつの耳に唇を寄せた。
「おまえの中も、びくびく震えてる。」
分かるか?
とゆるりと腰を回すと、
「ひゃぁ、んっ‥‥」
甘い声が空気を震わせた。
同時に咥えこんだ内部がきゅっと俺を締め上げ、更に奥へと誘うようにぐにゃぐにゃと動いた。
「すげぇ、熱い。」
熱くて、気持ちがいい。
そう浮かされたように囁くと、は私もと、震えた声で紡いだ。
「気持ち、よくって‥‥おかしく‥‥」
「なっちまえ――」
ずる、と腰を引く。
瞬間、はびくっと身体を震わせて、俺の背中に回した手に力を込める。
ちりと皮膚をその固い爪が裂いた。
それだけだってのに、強い波が俺の身体を飲み込んで、そのまま押し流そうとする。
「わ、っりぃ‥‥加減‥‥」
できねえ。
柔らかい内部を破るみてえに突き上げる。
「ひじか‥‥さっ‥‥ひじ‥‥ん、ぁあっ‥‥」
乱暴な挿入にも限らず、そいつはまるで求めるみたいに俺を呼んだ。
何度も、
何度も、
俺だけを呼んで、
更に、俺を、煽る。
「悪い、なか、出す、ぞっ‥‥」
このまま外で出すのが惜しくて。
この中で、絶頂を迎えたくて。
奥の深い所を犯しながら自分でも余裕のねえ声を漏らしながらを抱き潰すと、まるで離れるなというみたいにそいつの背に回った手に力が込められた。
「だ、してっ‥‥中でっ‥‥ひじかたさ‥‥の、あついのっ‥‥」
ちょうだい、という声が俺の鼓膜を擽った。
その瞬間、ぞくっと一際強い震えが俺の身体を襲い、
ぶつっと糸が切れたのは、
唐突だった。
勢いよく精を吐き出すのと同時に‥‥俺の声から呻くような声が漏れて、消えた。
「大丈夫か?」
星が瞬く夜空の下、俺は何度もに問いかけた。
問いかけられるたびにそいつは顔をくしゃっと顰め、
「き、聞かないで‥‥」
と答える。
その歩き方は若干おかしい。
曰く、あまり足に力が入らない‥‥らしい。
「‥‥悪い、無理‥‥」
「言うな。」
目元を赤く染めて睨まれた。
恥ずかしい、らしい。
あれから結局、まるでお互いに箍が切れたみたいに何度も求めた。
薬の効果はとっくの昔に切れていたというのに、そんなこと最初からどうでもよかったみたいに、俺たちは何度も身体を繋げ、互いに快楽を貪った。
散々喘がされたの声は掠れて、妙に色っぽい‥‥なんて言ったら、また睨まれそうだ。
「別に土方さんが悪い事じゃないですから。」
それからは苦笑を浮かべ、俺から視線を逸らしつつそう零した。
「私がへまをして、土方さんがなんとかしてくれた‥‥それだけです。」
「‥‥けどな‥‥」
最初はの為だったかもしれねえけど、最後は結局自分の欲望のままにを抱いたわけで‥‥
彼女のためにした、と言われるとなんとも複雑な心境というか、若干の自己嫌悪に陥るというか。
「っ」
唐突にがぎくっと肩を強ばらせ、立ち止まる。
何事かと顔を覗き込むと、見るなと言わんばかりに視線が逸らされた。
「どこか痛むのか?」
「ちが‥‥」
「まさか、まだ薬が残って‥‥」
「の、残ってんのはそれじゃないっ」
じゃあなんだよと更に問いかけると、そいつはそっぽを向いたまま後悔してもしらないですからねと前置きして、言った。
「出て、きたんです。」
「なにが?」
「‥‥土方さん‥‥中に出したやつ‥‥」
「‥‥‥あ‥‥」
‥‥‥‥嫌な、沈黙が落ちた。
俺が出したやつってのはつまり、あれだ。
さっき散々、の中に放った俺の精。
一応掻きだしてみたんだが‥‥その間のの暴れようといったら手が着けられなかったが‥‥
まだ残っていたらしい。
まあ、掻き出す度にそいつがいい声で啼くからまたその気になっちまって‥‥また身体を繋いで‥‥また‥‥ああ、俺は馬鹿かもしれねえな。
「‥‥‥悪い。」
「だ、だから謝らないでって‥‥うわっ!?」
違う、と俺は言ってそいつの身体をひょいと横抱きに抱えた。
突然の事には慌てて俺の首に齧り付く。
そうして俺に抱き上げられていると気付くと、
「ひ、土方さん!下ろしてくださいっ!」
と暴れる。
俺は構わずすたすたと歩き出した。
勿論、そいつを抱き上げたままで。
「土方さんってば!!」
「いいから、大人しくしてろ。」
「出来るわけないでしょ!?こんな姿他の連中に見られたら‥‥」
「見られたらなんだってんだよ。
今のおまえは女の恰好してるんだから問題はねえよ。」
「そう言う意味じゃっ‥‥」
「部下の面倒を上司が見るのは当たり前の事だ!」
「いやいや、部下と上司なら尚更迷惑掛けちゃ駄目でしょ!」
「ああ言えばこう言いやがって!可愛げのねえ!」
「そんなの分かり切ったこと‥‥」
いいから、と俺はぎろっと睨み付けながら怒鳴った。
「惚れた女の面倒を見る事くらいさせろってんだよ!」
強い語調で言うと、は目をまん丸く開いてぴたりと動きを止めた。
琥珀が大きく開かれて、今にもこぼれ落ちちまいそうで‥‥なんだよ、そんなに驚くことねえだろうがと内心で呟くと、は次の瞬間、ぼっとまるで火が灯ったかのように顔を真っ赤に染めて、俯いた。
そうして、小さく、抵抗のつもりかこう、呟く。
「は‥‥恥ずかしい人だ‥‥」
うるせぇ、それは自分がよく分かってる。
あまいくすり
媚薬ネタ。
一度書いてみたかった。
でも本当の事をいうと、もっとエロスに
書きたかった!!
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